初恋(ツルゲーネフ)のあらすじ(ネタバレあり)・感想

16歳のウラジミールは、年上の令嬢ジナイーダと出会うが、彼女には恋い焦がれる男性がいた。作者ツルゲーネフが「いちばん愛していた」と語る青春小説。

初恋(ツルゲーネフ)の作品情報

タイトル
初恋
著者
ツルゲーネフ
形式
小説
ジャンル
恋愛
執筆国
ロシア
版元
不明
初出
雑誌『読書文庫』、1860年
刊行情報
下記
翻訳者
下記

初恋(ツルゲーネフ)のあらすじ(ネタバレなし)

16歳のウラジミールは、別荘で零落した公爵家の年上の令嬢ジナイーダと出会い、初めての恋に気も狂わんばかりの日々を過ごす。だが、ある夜、彼女のもとへ忍んで行く男を目撃、正体を知って驚愕する。

青春の途上で遭遇した少年の不思議な“はつ恋”の物語は、作者自身の一生を支配した血統上の呪いに裏づけられて、不気味な美しさを醸し出している。恋愛小説の古典に数えられる珠玉の名作。

初恋(ツルゲーネフ)の目次

作者

イワン・セルゲーエヴィチ・ツルゲーネフ(1818年11月9日 – 1883年9月3日)

小説家。フョードル・ドストエフスキー、レフ・トルストイと並んで、19世紀ロシア文学を代表する文豪である。代表作に『初恋』『父と子』などがある。

初恋(ツルゲーネフ)の刊行情報

神西清訳『はつ恋』新潮文庫、1952年
米川正夫訳『初恋』岩波文庫、1960年
おすすめ沼野恭子訳『初恋』光文社古典新訳文庫、2006年

映画版

『初恋(ファースト・ラブ)』1970年
マクシミリアン・シェル監督
『LOVER’S PRAYER―はつ恋』2000年
リヴァージ・アンセルモ監督
『はつ恋』1975年
小谷承靖監督、仁科明子主演
初恋 夏の記憶』2009年
野伏翔監督、多岐川華子主演

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初恋(ツルゲーネフ)の登場人物

ウラジーミル・ペトローヴィチ
本作の主人公。回想の中では「わたし」として登場する。

ジナイーダ・アレクサンドロウナ
本作のヒロイン。ウラジーミルの初恋の相手。

ピョートル・ヴァシーリニチ
主人公の父。

ザセーキナ公爵夫人
ジナイーダの母。

ヴォニファーチ
ジナイーダの家の召使。

初恋(ツルゲーネフ)のあらすじ(ネタバレあり)

初恋のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

初恋(ツルゲーネフ)のあらすじ【起】

舞台は1833年夏。16歳の少年・ウラジーミルは、モスクワ市内、ネスクヌーイ湖のほとりの別荘で両親とともに住んでいた。ある日ウラジミールは、隣に引っ越してきた年上の美しい女性・ジナイーダに淡い恋心を抱く。

だが、ジナイーダにはまるで女王のように振る舞うところがあり、彼女に惚れる何人もの「崇拝者」達を自身の家に集めては、いいようにあしらっては楽しんでいた。

ウラジーミルは彼女の家に行ってその振舞いを知るが、むしろ彼女への恋心はつのるばかりだった。彼女のことを思うあまりその晩は眠れず、ぼんやりと窓から雷を眺めながらジナイーダのことを思い描いていた。そしてウラジーミルは恋心を自覚するに至った。

ジナイーダへの想いが募る主人公だったが、一方のジナイーダはと言えば、主人公の気持ちに気づきながら、主人公を弄ぶだけだった。彼女にとっては主人公は彼女に群がる多くの男達の一人にすぎなかったのだ。

「自分が見下さなければならないような男には興味が無いの。私が興味があるのは、むしろ自分を服従させる人だけ」

初恋(ツルゲーネフ)のあらすじ【承】

だが、そんな状況はある日を境に一転する。その日、明らかに様子がおかしいジナイーダを見て、ウラジミールは彼女が誰かと恋に落ちたことを直感する。

ウラジミールは疑心暗鬼にさいなまれ、彼女の周りに集まる崇拝者達を見てはジナイーダの恋の相手ではないかと疑うようになった。一方のジナイーダも自身の恋に苦しんでいた。恋に落ちた彼女の態度は、なぜか主人公に対して不安定なものだった。

ある瞬間には主人公を思いつめたような青ざめた顔で見つめて突き放したかと思えば、次の瞬間には急にやさしくなった。別の瞬間には、これまで弄んだ事を突如謝まり、これからは恋人ではなく家族か何かのように付き合いたいのだと言い出す。

ウラジミールには彼女の態度がよく理解できなかった。なぜだか分からないが、ジナイーダにとっては彼と接するのがつらくてたまらない様子だった。

ある日、彼女の恋の相手の断片的な情報を掴んだウラジミールは、その正体を知るべく、嵐の晩に彼女の家のそばの茂みで待ち伏せする。その手にはナイフが握られていた。そして件の男が通りかかる。その男の顔を見てウラジミールは愕然とすることになる。その男は主人公の父だったのだ。

それからしばらくして、ウラジミール一家は、モスクワから引き越さねばならなくなった。崇拝者の一人がウラジミールの父親の不倫を触れ回ったため、世間体が悪くなったのだ。

引っ越す直前、ジナイーダはウラジミールに「今まで苛めた事もあったけど、恨まないでね」と話しかける。その言葉に対し、ウラジミールは一生の愛を宣言するのだった。

初恋(ツルゲーネフ)のあらすじ【転】

こうして別の町へと引っ越した主人公だったが、ある日のこと、乗馬に出かけたはずの父がジナイーダと密会しているのを目撃してしまう。父のことを忘れられなかったジナイーダが、ここまで追いかけてきたのだった。

彼女と何かを口論していた父は、明らかに苛立った感じだった。突然、父が手に持っていた乗馬用の鞭で彼女の手を打つ。そして彼女が何も言わず去っていく。物陰から一連のやり取りを見たウラジミールは、これが恋なのだと思い知る。ジナイーダは、鞭で打たれたのに怒り出すどころか、無言で立ち去っていったのだ。

それからしばらくして、父が亡くなった。亡くなる直前には「女の愛を恐れよ」と言い残していた。亡くなる前、父は泣きながら母に懇願し、ジナイーダにいくらかのお金を送らせていた。

初恋(ツルゲーネフ)の結末・ラスト(ネタバレ)

それから数年後、ウラジミールは「崇拝者」の一人と偶然再会し、ジナイーダの近況を知る。彼女はすでに誰かと結婚して、近くに来ているのだという。

久しぶりに彼女に会いに行こうと思うウラジミールだったが、忙しい毎日を送るうちに、ついつい先延ばしにしてしまう。そしてウラジミールがついに会いに行くと、ジナイーダが数日前に急死したことを知らされる。永遠に会えなくなってしまったことに、ウラジミールは痛いほどの悲しみを覚える。

ジナイーダの死のすぐ後、強い衝動に従って、同じアパートに住む貧しい老婆の死に立ち会った。「主よ、許してください」そう呟く彼女は、死の瞬間、苦しみからも恐怖からも開放されたようだった。ウラジミールは老婆の臨終を見て、ジナイーダのためにも、父のためにも、そして自分自身のためにも祈りたくなるのだった。

初恋(ツルゲーネフ)の感想・解説・評価

あまりにも苦い16歳の初恋

初恋というのはとりわけ特別なものとして、人の記憶に留まり続けるだろう。それが、片想いで終わらず、一時でも相思相愛になれれば当然のことだろう。

本作の主人公ウラジミールは滞在中の別荘の隣に引っ越してきた令嬢ジナイーダに恋心を抱くようになり、ことある事に彼女の家に行っては彼女に会おうとする。しかし、彼女は到底おしとやかなどという言葉は似合わない人物なのである。若年にして数人の男性、しかも同年代だけでなく、年上の男性も侍らせてしまう、高飛車というか、少しばかり気の強い女性だったのだ。

しかし、ある時ウラジミールはジナイーダに恋人が出来たと気が付く。恋人がどんな人物なのかを確かめようと庭に隠れ、その人物の顔を見ようとする。何者かが近づいて来て顔を盗み見たら、なんと父親!そのショックは想像するにあまりある。

誰にも支配されないとウソぶいていた少女が、主人公に他人行儀で高雅な父親に身も心も囚われ、初めて支配されてしまう。そんな現実を直視した主人公の強さには感服させられる。それと同時にこのとても残酷な展開に哀しみを覚えられずにはいられない。誰にも支配されないと言った強気で奔放な少女が、恋の前ではウラジミールの傲慢な父親に屈服し鞭で打たれてしまい、無言で立ち去る。そして主人公はこれが愛だと認めるのだ。

悲しいのは何もそれだけではない。この小説がウラジミールによって語られる「追憶」であることもそうである。つまりは思い出や記憶の彼方にあるものであり、現在進行系ではないと著者は最初から言っていたのである。

つまり「初恋」という題は、ウラジミール→ジナイーダであると同時に、ジナイーダ→ウラジミールの父親であるかもしれないということに気がつく。もうやるせない。

合わせて読みたい本

若きウェルテルの悩み

ドイツの小説家・ゲーテ自身の恋の体験を作品化した書簡体小説。

許婚者のいる美貌の女性ロッテに恋をしたウェルテルは、遂げられぬ恋であることを知って苦悩する。

多くの人が経験するような青春時代の記憶を描いた普及の作品。

初恋(ツルゲーネフ)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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