変身(フランツ・カフカ)のあらすじ結末(ネタバレあり)・解釈・考察・感想

カフカの代表作であり実存主義文学の一つとして知られる。また、アルベール・カミュの「ペスト」とともに代表的な不条理文学である。

変身(フランツ・カフカ)の作品情報

タイトル
変身
著者
フランツ・カフカ
形式
小説
ジャンル
不条理文学
執筆国
チェコ(オーストリア=ハンガリー帝国)
版元
クルト・ヴォルフ社(ライプツィヒ)
執筆年
1912年11月
初出
月刊誌『ディ・ヴァイセン・ブレッター』1915年10月号
刊行情報
クルト・ヴォルフ社、1915年12月
翻訳者
下記

変身(フランツ・カフカ)のあらすじ・概要

朝、目をさますと巨大な虫に変っている自分を発見した男―― グレーゴル・ザムザ。第一次大戦後のドイツの精神的危機を投影した世紀の傑作。

ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。

変身(フランツ・カフカ)の目次

作者

フランツ・カフカ(1883年7月3日 – 1924年6月3日)

小説家。プラハ出身。役人として働きながら、どこかユーモラスで浮ついたような孤独感と不安の横溢する、夢の世界を想起させるような独特の小説作品を執筆した。生前はわずかに注目されたのみだったが、没後に刊行された作品により世界的名声を得る。現在ではジェイムズ・ジョイス、マルセル・プルーストと並び20世紀の文学を代表する作家と見なされている。
もっと読むフランツ・カフカのおすすめ作品はどれなのか?全作品一覧レビュー

変身(フランツ・カフカ)の刊行情報

  • おすすめ高橋義孝訳『変身』新潮文庫、1952年
  • 中井正文訳『変身』角川文庫、1952年
  • 山下肇訳『変身・断食芸人』岩波文庫、1958年、改版2004年
  • おすすめ池内紀訳『変身 カフカ・コレクション』白水Uブックス、2006年
  • 丘沢静也訳『変身、掟の前で 他2編』光文社古典新訳文庫、2007年
  • 浅井健二郎訳『カフカ・セレクションIII』ちくま文庫、2008年
  • 多和田葉子訳『ポケットマスターピース01 カフカ』集英社文庫ヘリテージシリーズ、2015年

映画版関連動画

ヤン・ニェメツ監督 『変身』 1975年(テレビ映画)
キャロライン・リーフ監督 『ザムザ氏の変身』 1977年(アニメーション)
ジム・ゴダード監督 『変身』 1987年(テレビ映画)
ワレーリイ・フォーキン監督 『変身』 2002年

変身(フランツ・カフカ)の登場人物

グレーゴル・ザムザ
布地の販売員。ある朝、目が覚めると虫に変身してしまっていた。

グレーテ
妹。虫に変身してしまった兄の事を気にかける。

変身(フランツ・カフカ)のあらすじ(ネタバレあり)

変身(フランツ・カフカ)のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

第一部

布地の販売員をしている青年グレーゴル・ザムザは、ある朝自室のベッドで目覚めると、自分が巨大な毒虫になってしまっていることに気が付く。

突然のことに戸惑いながらも、彼はもう少し眠ってみようと試みるが、しかし体を眠るためのちょうどよい姿勢にすることができない。仰向けの姿勢のまま、グレゴールは今の仕事に対する様々な不満に思いを募らせる。出張旅行ばかりで気苦労が多く、顧客も年中変わるからまともな人付き合いもできない。

朝が早いのも不満の種であり、「この早起きという奴は人間を薄馬鹿にしてしまう。人間はたっぷり眠らなければ成らない」と、グレゴールは思う。しかし両親には商売の失敗によって多額の借金があり、それを返すまでは辞めるわけにはいかないのだった。

そうしてふと時計を見ると、出張旅行のための出発時間をとっくに過ぎている。心配する家族からドア越しに声がかけられる中、何とか体を動かして寝台から這い出ようとし、そうこうするうちにグレゴールの様子を見に店の支配人がやってくる。

怠慢を非難する支配人に対して、グレゴールは部屋の中から弁解するが、どうやらこちらの言葉がまったく通じないらしい。グレゴールは部屋のドアまで這いずり、苦労して鍵を開けて家族たちの前に姿を現すと、彼らはたちまちパニックに陥る。

母親は床の上にへたり込み、父は泣き出し、支配人は声を立てて逃げ出す。支配人に追いすがろうとするグレゴールだったが、しかしステッキを持った父によって傷つけられ、自室に追い立てられてしまう。

第二部

その日以来、グレゴールは自分の部屋に閉じこもってひっそりと生活することになった。彼の世話をするのは妹のグレーテで、彼女はグレゴールの姿を嫌悪しつつ食べ物を差し入れ、また部屋の掃除をした。グレゴールの食べ物に対する嗜好はまったく変わってしまっており、いまでは新鮮な食べ物を口にする気にはなれず、腐りかけた野菜やチーズに食欲が湧くのだった。

グレゴールは日中は窓から外を眺めて過ごし、眠る時には寝椅子の下に体を入り込ませ、また妹が入ってくるときにも気を使ってそこに身を隠した。ドア越しに聞こえてきた会話によると、一家にはわずかながらも倹約による貯えがあり、唯一の働き手を失った今でも1、2年は生活していくことができるようだった。

そのうちグレゴールは部屋の壁や天井を這い回る習慣を身に付け、これに気が付いたグレーテは、這い回るのに邪魔になる家具類を彼の部屋からどけてやろうと考える。グレーテは母親と協力して家具類を運び出しはじめ、グレゴールも当初は気を使って身を潜めているが、しかし彼女たちの会話を聞いてふと、自分が人間だった頃の痕跡を取り除いてしまってもよいものかという思いを抱く。

グレゴールが自分の意思を伝えようと、壁際にかかっていた雑誌の切り抜きにへばりつくと、その姿を見た母親は気を失ってしまう。ちょうどその頃、新しく勤めに就いていた父親が帰宅する。事態を悪く見た彼はグレゴールにリンゴを投げつけ、それによって彼は深い傷を負い、満足に動けなくなってしまう。

第三部

父親の投げたリンゴはグレゴールの背にめり込んだままとなり、彼はその傷に1ヶ月もの間苦しめられた。その間に一家は切り詰めた生活をし、母も妹も勤め口を見つけて働いていた。妹はもうグレゴールの世話を熱心にしなくなっていた。

女中にも暇が出され、代わりに年老いた大女が手伝いに雇われた。彼女は偶然目にしたグレゴールをまったく怖がらず、しばしば彼をからかいに来た。また家の一部屋が3人の紳士に貸し出され、このためグレゴールの部屋は邪魔な家具を置いておく物置と化してしまっていた。

ある日、居間にいた紳士の一人がグレーテが弾くヴァイオリンの音を聞きつけ、気まぐれからこちらに来て演奏するように言う。グレーテは言われたとおりに紳士の前で演奏を始めるが、紳士たちはすぐに興冷めしタバコをふかしはじめる。

一方グレゴールは彼女の演奏に感動し、自室から這い出てきてしまう。グレゴールの姿に気づいた父親は慌てて紳士たちを彼らの部屋に戻らせようとするが、この無礼に紳士たちは怒り、即刻この家を引き払い、またこれまでの下宿代も払わないと宣言する。

変身の結末・ラスト(ネタバレ)

失望する家族たちの中で、グレーテはもうグレゴールを見捨てるべきだと言い出し、父もそれに同意する。やせ衰えたグレゴールは家族の姿を目にしながら部屋に戻り、家族への愛情を思い返しながらそのまま息絶える。

翌日、グレゴールは手伝い女によってすっかり片付けられる。休養の必要を感じた家族はめいめいの勤め口に欠勤届を出し、3人そろって散策に出る。話をしてみると、どうやら互いの仕事はなかなか恵まれていて、将来の希望も持てるらしい。それに娘のグレーテは長い間の苦労にも関わらず、いつの間にか美しく成長していた。両親は、そろそろ娘の婿を探してやらなければと考える。

変身(フランツ・カフカ)の感想・解釈・考察

世界文学史に残る衝撃作

本作はある男が朝起きたら虫になってしまっていたという衝撃的なシーンから始まる。人間が虫になってしまうという「ありえない」ストーリーは淡々と進んでいく。

人間が虫になってしまうという設定自体はそれ以前の小説にもあったが、それはファンタジーや児童文学であり、大人が読む文学作品としては認められていなかった。もっと正確に言えば、誰もそんな設定が許されるとは考えていなかったのだ。

しかしカフカの死後、作品の評価が定まっていく中で、こういった不条理・非現実的な作風は認められていく。そしてその影響を受けた作家が登場するようになった。

当初は異端・衝撃作だと思われていた作風は次第に文学の一ジャンルになることになる。とくにカフカが執筆に使用していたドイツ語圏では圧倒的な影響力を持つようになった。

ジョイス・プルーストによってある種の行き詰まり、一種の閉塞感に陥っていた文学は新たな一面を見せることになった。その意味でカフカは20世紀文学を代表する作家に位置付けられている。

現代にも通じるテーマ

しかし、そんな作品の根底に広がっているのは、「現実」というテーマだ。「現実」とは、自分の外見や性格を決めるのは自分ではなく、周囲・社会であるということなのかもしれない。「人は見た目が9割」という本が話題になったが、まさに「人は見た目が10割」の世界と言える。

ザムザは虫になってしまった後も人間の意識を持っていたが、家族からも虫と見なされた結果、行動が変化し、最終的には無残にも死んでしまった。太宰治は「人間失格」にて主人公・大庭葉蔵が人間に失格したのは「他人から狂人と見なされたから」ということを描いている。

僕たちは行動や発言、服装などに社会的な影響を強く受けている。進学や就職に関しても、「レールから外れないように」という強迫観念はとても強い。そんなとき、僕たちの「自分らしさ」はかなり他者から作られたものだ。

この状況はかなり皮肉的だといえる。カフカはそんな不条理を書きたかったのではないだろうか。

ザムザが変身した「虫」とはなにか?

作中でグレゴール・ザムザが変身するものは「虫」と訳される。ドイツ語の原文はUngezieferとなっているが、これは鳥や小動物なども含む有害生物全般を意味する単語である。作中の記述からはどのような種類の生物かは不明であり、後年の読者・研究者の間では様々な姿が想定されている。ウラジミール・ナボコフは大きく膨らんだ胴を持った甲虫だろうとしている。

『変身』の初版につけられた表紙絵について、カフカは手紙で「昆虫そのものを描いてはいけない」「遠くからでも姿を見せてはいけない」と注文をつけていた。

日本語翻訳では長らく「虫」「甲虫」と訳されてきたが、作家・多和田葉子はタイトルを「変身(へんしん)」から「変身(かわりみ)」としたうえで、「ウンゲツィーファー(生け贄にできないほど汚れた(けがれた)動物或いは虫)」と表記した。

これらを総合して解釈すると、カフカが変身させたものは「昆虫」ではなく、「人が見たときに嫌悪感を感じさせる生き物」とも言える。特定の種類の昆虫ではなく、抽象的な存在でもありそうだ。

合わせて読みたい本

カフカとの対話

カフカは作家志望の少年グスタフ・ヤノーホと知り合い、彼との交流の中で文学論を語ったりしています。

カフカから大きな影響を受けたヤノーホはカフカの死後『カフカとの対話』を書きました。カフカはやや聖人的に書かれているものの、カフカの身近な姿を伝える貴重な一冊になっています。

エレンディラ

後世の作家たちに絶大な影響を与えたカフカ。世界各国にカフカの影響を公言している作家がいます。

コロンビアのノーベル賞作家・ガルシア=マルケスもその一人。とくに初期の短編にはカフカのような不条理文学もあります。

入門なら文庫化されているエレンディラが安価で読みやすいと思います。

異邦人

カフカの小説が世界的な名声を獲得したのは、カミュやサルトルといった実存主義の作家たちによる評価が大きな役割を果たしました。

実存主義文学はなかなか難しいものも多く、とっつきにくい作品も多々あります。読みやすいのはカミュの『異邦人』。文庫化されていて安価で薄い。手に取りやすいと思います。

変身(フランツ・カフカ)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
右手

平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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