こころ(夏目漱石)のあらすじ・解説・感想。読書感想文はKについて

夏目漱石の長編小説であり、代表作の一つ。『彼岸過迄』『行人』に続く、後期3部作の最後の作品である。

新潮文庫版は、2016年時点で発行部数718万部を記録しており、作品として「日本で一番に売れている」本である。

こころ(夏目漱石)の作品情報

タイトル
こころ
著者
夏目漱石
形式
小説
ジャンル
純文学
執筆国
日本
版元
岩波書店
初出
朝日新聞、1914年4月20日~8月11日
刊行情報
下記

こころ(夏目漱石)のあらすじ(ネタバレなし)

あなたはそのたった一人になれますか。

親友を裏切って恋人を得た。しかし、親友は自殺した。増殖する罪悪感、そして焦燥……。知識人の孤独な内面を抉る近代文学を代表する名作。

鎌倉の海岸で、学生だった私は一人の男性と出会った。不思議な魅力を持つその人は、“先生”と呼んで慕う私になかなか心を開いてくれず、謎のような言葉で惑わせる。やがてある日、私のもとに分厚い手紙が届いたとき、先生はもはやこの世の人ではなかった。遺された手紙から明らかになる先生の人生の悲劇――それは親友とともに一人の女性に恋をしたときから始まったのだった。

こころ(夏目漱石)の目次

  • 上 先生と私
  • 中 両親と私
  • 下 先生と遺書

作者

夏目 漱石 なつめ・そうせき(1867年2月9日 – 1916年12月9日)

小説家、英文学者。江戸の牛込馬場下横町(東京都新宿区喜久井町)生まれ。帝国大学(東京大学)英文科卒業後、愛媛県尋常中学校教師(松山)、第五高等学校教授(熊本)などを歴任し、イギリスへ留学。帰国したのち、東京帝国大学講師の傍ら、『吾輩は猫である』を雑誌『ホトトギス』に発表しデビュー。小説が話題になると講師の職を辞して朝日新聞社に入社し、『虞美人草』『三四郎』『こころ』などを連載した。現代にいたるまで読み継がれており、後世への影響も絶大である。

こころ(夏目漱石)の刊行情報

『こころ』岩波文庫

『夏目漱石全集 8』ちくま文庫、1988年

『こころ』集英社文庫、1991年

『こころ 坊っちゃん』文春文庫、1996年3月

おすすめ『こころ』新潮文庫、2004年3月

映画版関連動画

映画『こころ』1955年、日活。監督:市川崑。配役/野淵先生:森雅之、奥さん(お嬢さん):新珠三千代、梶(K):三橋達也、未亡人:田村秋子、日置(私):安井昌二、女中・粂:奈良岡朋子

画像提供:日活

映画『こころ』近代映画協会、1973年。監督:新藤兼人。配役/K(先生):松橋登、S(K):辻萬長、I子(お嬢さん):杏梨、M夫人(未亡人):乙羽信子、Sの父:殿山泰司

画像提供:近代映画協会

映画『蒼箏曲』BANANA FISH、2012年。監督:天野裕充。配役/静:勝村美香(若い頃:高田里穂)、先生:尾関陸、K:夛留見啓助。

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漫画版

佐々木亮『夏目漱石作品集・壱「こゝろ」』集英社ヤングジャンプコミックス、1994年


『まんがで読破 こころ』バラエティ・アートワークス

榎本ナリコ『こころ』ビッグコミックススペシャル

吉崎凪『こころ』マーガレットコミックス

目黒三吉『こころ オブ・ザ・デッド〜スーパー漱石大戦〜』アース・スターエンターテイメント

こころ(夏目漱石)の登場人物


上、中の語り手。学生。夏休みに鎌倉由比ヶ浜に海水浴に行った際に先生と出会う。

先生
仕事に就かず、東京に妻とひっそり暮らしている。海水浴の際に出会った「私」に自分の生き様を明かす。

先生の妻
名前は「静」。自分の家に下宿しに来ていた学生時代の先生と結婚する。

K
「下」に登場。先生と同じ大学に通っている学生。実家の意向に反して医者を目指さなかったため、仕送りを止められ経済的に困窮する。先生の提案で同じ下宿で暮らすようになる。

こころ(夏目漱石)のあらすじ(ネタバレあり)

こころのストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

上 先生と私

時代は明治末期。夏休みに鎌倉由比ヶ浜に海水浴に来ていた「私」は、同じく来ていた「先生」と出会う。

意気投合した2人は交流を始め、私は東京に帰ったあとも先生の家に出入りするようになる。先生は働いておらず、奥さんと静かに暮らしていた。

そんな先生は毎月、雑司ヶ谷にある友達の墓に墓参りしていた。先生は私に何度も謎めいた、そして教訓めいたことを言うため、私は不思議に思っていた。

私は、父の病気の経過がよくないという手紙を受け取り、冬休み前に帰省する。私は先生の過去に疑問を持っており、正月すぎに東京に戻ると、先生に過去を打ち明けるように迫る。

そう言う私に対して、先生は来るべきときに過去を話すことを約束した。大学を卒業した私は、先生の家でご飯をごちそうになると帰省した。

中 両親と私

重い腎臓病を患っていた私の父親の病状は日に日に悪くなり、私が帰京する日は延びていった。

父の健康状態の悪化を耳にした親戚も集まってきており、父の病状は命にかかわるほど悪化していた。

そんなところへ、先生から分厚い手紙が届く。手紙が先生の遺書だと気づいた私は、東京行きの汽車に飛び乗った。

下 先生と遺書

下ではとても長い先生の手紙の内容が明かされる。手紙は先生の学生時代の出来事を綴ったものだった。

先生は若くして両親を亡くし、親類縁者とは遺産相続でもめたため縁を切っていた。大学進学に合わせて上京し、東京で大学生活を送るため「奥さん」と「お嬢さん」の家に下宿する。

そんな中、先生は友人の「K」が家族との不和で悩んでいるのを知る。Kの家族は彼が医者になることを望んでいたが、Kはその意に反して医者を目指すことはしなかった。そのためKを不満に思った故郷の家族は彼の仕送りを差し止めていた。

先生は、Kが経済的に困窮していることを知り、彼を自分の下宿に誘う。

こころ(夏目漱石)の結末・ラスト(ネタバレ)

同じ下宿に住むようになったKは下宿先のお嬢さんと仲良くなっていく。しかし、これはお嬢さんの策略ともいえる行為だった。

お嬢さんはKのことよりも、先生の気に留まるようにKと仲の良い振りをしていたのである。先生もKもお嬢さんの本心を知ることはなかった。

Kはお嬢さんに惹かれていくが、先生もお嬢さんの策略通りに恋するようになっていた。2人ともお互いの気持ちはそれとなく察していたが、先に自分の気持ちを明かしたのはKだった。

Kは先生に向かって「お嬢さんの事が好きだから応援してくれないか」と話し出したのである。先生は「自分もお嬢さんが好きだ」と、その発言を遮ることができなかった。

先生はKにお嬢さんを奪われることを怖れ、奥さんに自分の気持ちを伝え、結婚することを了承させてしまったのだ。Kは祝福の言葉を口にするものの、数日後には自殺してしまった。

お嬢さんはその理由がわからないようだったが、先生には見当がついていた。それ以来、先生は苦悩を抱えながら結婚生活を送っており、罪悪感に悩まされる日々を過ごしていた。

そんな中、明治天皇が崩御した。先生はその報を聞くと殉死という形で自分の人生を終わらせることを決意する。手紙はそんな先生の決意で締められていた。

こころ(夏目漱石)の感想・解説・評価

先生・K・お嬢さんの三角関係の悲劇を描いた名作

本書は文豪と呼ばれる漱石の代表作である。シリーズ作品でもない新潮文庫の1冊だけで718万部というベストセラーだ。さらに高校の教科書に収録されたため読んだことのある方も多いだろう。

『三四郎』『それから』など、漱石が好んだ三角関係というテーマは本作でも「先生・K・お嬢さん」として登場する。物語の本筋でもあり、前半部分は「私」が「先生」に本筋を語らせるために費やされていると言っていいくらいだ。

とにかく長い先生の手紙では(研究者が再現したところ懐に入らないほど分厚くなるらしい)、先生の過去に起こった悲劇が明かされる。

「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」が象徴的なワードとして登場するエピソードはひたすらに悲劇であり、先生の心に癒されることのない傷を残した。

読書感想文ではKの”こころ”について書いてみるのがおすすめ

Kがどうして自殺したのかについてはっきりとしたことは分からない。どれだけエピソードや書き残したものがあったとしても人の心の中は決して分からないものだ。

Kは人生に絶望したのか、先生に不満を示したかったのか、それともお嬢さんとの間に何かがあったのか…Kの死が波紋を残すのは先生の心の中だけではない。読者の心にも引っかかりを残すのである。読書感想文ではKについて書いてみるのもいいだろう。

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こころ(夏目漱石)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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