狂気の山脈にて(H・P・ラヴクラフト、田辺剛)のあらすじ(ネタバレあり)・解説・感想

ヒマラヤすら圧する未知の大山脈が連なる南極大陸。その禁断の地を舞台に、著者独自の科学志向を結実させた超大作「狂気の山脈にて」

狂気の山脈にての作品情報

タイトル
狂気の山脈にて
著者
H・P・ラヴクラフト
形式
小説
ジャンル
SF
執筆国
アメリカ
版元
アーカム・ハウス出版社
執筆年
1931年2月-3月
初出
アスタウンディング・ストーリーズ、1936年2-4月号
刊行情報
創元推理文庫
翻訳者
大滝啓裕

狂気の山脈にてのあらすじ・概要

ラヴクラフト最大にして最高の名作!

ホラー小説界の巨星ラヴクラフト、その「コスミック・ホラー」のすべてが込められた生涯最大にして最恐の名作「狂気の山脈にて」。
ハリウッド・メジャーが何度も映画化を望みながら、実現することができていない世紀の傑作を、「魔犬」「異世界の色彩」「闇に這う者」と、ラヴクラフト描きとして最高の評価を受ける絵師が、待望のコミカライズ!

第21回文化庁メディア芸術祭【審査委員会推薦作品】選出!

狂気の山脈にての目次

全12章

作者

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890年8月20日 – 1937年3月15日)

アメリカ合衆国の小説家。怪奇小説・幻想小説の先駆者。生前は無名だったが、死後に広く知られるようになり、一連の小説が「クトゥルフ神話」として体系化された。ラヴクラフトの創造した神話体系は世に広まり、後世の作家へ大きな影響を与えた。

田辺 剛(1975年 – )

漫画家。2001年『砂吉』にて、アフタヌーン四季賞準入選。アントン・チェーホフやハワード・フィリップス・ラヴクラフト、三遊亭円朝の作品を原作として、漫画化している。

狂気の山脈にての刊行情報

大瀧啓裕訳『ラヴクラフト全集 4』東京創元社:創元推理文庫

田辺剛『狂気の山脈にて』エンターブレイン・ビームコミックス、全4巻

狂気の山脈にての登場人物

ウィリアム・ダイアー
南極に向かった探検隊の責任者で、地質学科の教授。本作は、帰還した彼が以後の南極進出を思い止まらせるために書いた手記という体裁をとっている。

レイク
探検隊の一員で、生物学科の教授。生命の誕生と進化に関する仮説を立てていた。古い粘板岩に残された模様に注目し、分隊を率いて調査に向かう。

フランク・H・ピーバディ
探検隊の一員で、工学科の教授。今回の探検で使用される画期的なドリルを考案した。

アトウッド
探検隊の一員で、物理学科の教授。隕石学者でもある。

ダンフォース
助手の一人で、大学院生。聡明な若者。「ネクロノミコン」を最後まで読み通した数少ない人間の一人である。

ゲドニー
助手の一人で、大学院生。レイクの分隊に加わる。

狂気の山脈にてのあらすじ(ネタバレあり)

狂気の山脈にてのストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

狂気の山脈にてのあらすじ【起】

この小説は、南極への重要かつ大々的に報道されている科学探検を阻止しようと、地質学者のウィリアム・ダイアー書いた手記という体裁を持っている。

その手記の中でダイアーは、彼がどのようにして大学の調査隊を南極探検に連れて行き、そこで古代の遺跡と危険な秘密を、ヒマラヤよりも高い山脈を越えて発見したかについて記している。

探検隊の目的は地下の岩石や土砂を採取することであった。そのうち、レイク教授が率いるチームが古生物の化石を発見する。生物学者であるレイク教授は古い粘板岩上の奇妙な縞模様の方に注目。地層の年代と矛盾する、高度に進化した生物の痕跡だと考えていた。レイクは計画の変更を強硬に主張し、分隊を率いて地層が伸びる方角に向かった。

狂気の山脈にてのあらすじ【承】

やがて分隊からの無線通信で、未知の巨大山脈に到達し、その地下洞窟から奇怪な化石を発掘したことが報告された。それは独自の進化を遂げた大型の生物で、動物と植物の両方の特徴を備えているように思われた。その姿は「ネクロノミコン」に記された神話上の「古のもの」を連想させた。

化石は続けて数体発見され、しかも元の性質が失われていなかった。レイクはそのうちの一体を解剖したが、体組織の強靭さ、脳と神経系の発達などにさらに驚かされることになった。生物学の常識を覆す発見に隊は興奮に包まれ、ダイア―もレイクの判断が正しかったことを認めた。

しかし翌朝、決められた時刻になっても分隊からの無線連絡はなかった。強風のため、通信が困難になっているようであったが、本隊のキャンプ地で風が収まった後も、分隊への呼びかけに応答はなかった。ダイア―は最悪の事態を想定し、捜索に向かうことを決意した。

ダイアーが調査に向かうと、レイクのキャンプは荒らされており、隊員と同行していた犬の死体が発見された。だが、分隊のうち、ゲドニーという大学院生と一頭の犬の姿が見えなかった。

狂気の山脈にてのあらすじ【転】

ダイアーと、ダンフォースという名の大学院生は、飛行機に乗り込み、高い山脈を越えようとしていた。そして山脈を越えたとき、2人は人間の建築物とは異質なものを目にする。

それは広大な廃墟となった都市のような石の建物群だった。それらの壁には無数の穴が開いており、2人は調査のためその内部へと足を踏み入れた。

建物群の中には至る所に彫刻が施されていた。それらは技術的にも高度な物であり、先進的な文明の存在を感じさせるものだった。

2人はその彫刻から、人類史以前の地球の歴史を学んでいく。月が形成された直後に、「旧支配者」が最初に地球にやってきて、奴隷となる「ショゴス」を作り出し、その助けを借りて都市を建設したという。

そのうち宇宙からは「クルウルウの末裔」が襲来。地球の支配をめぐって「旧支配者」と激しい争いを繰り広げた。「旧支配者」は追い詰められるが、和平を行い領土を分け合った。

そんな中「ショゴス」は徐々に進化を始め、「旧支配者」の命令に従わなくなってくる。伝説の生物ミ=ゴが地球を襲来したり、氷河期が訪れたりと様々な歴史があった。

建物の探索を再開し、奥へと進むと、レイクのキャンプにあった備品を発見する。さらにその場には標本にされたゲドニーと犬の姿もあるのだった。

狂気の山脈にての結末・ラスト(ネタバレ)

さらに奥に進むと、頭部がない状態で亡くなっている旧支配者に出くわす。分隊のキャンプを襲撃した後、自分たちの住処に戻ってきていたのだ。旧支配者は化石として眠りについていたが、レイクたちによってむりやり目覚めさせられたのだ。

奥から霧が流れ込んできたのを見て、ダイアーとダンフォース恐れを感じて逃げ出す。「テケリ・リ!テケリ・リ!」という声とともにやってきたのはショゴスだった。

何とか逃げ切ることに成功し、慌てて飛行機に乗り込むが、ダンフォースは後ろに何かを見て正気を失ってしまう。

ダイア―は、そんな眠り込んでいる者たちを起こして、侵略を開始させないようにと警告する。「人類の平和と安寧のためには、地球の暗く死滅した片隅と底知れぬ深淵の一部をそっとしておかねばならぬ。

狂気の山脈にての感想・解説・評価

ラヴクラフト宇宙観の総決算

短編が多いラヴクラフトの小説の中では『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』に並ぶ長編作品として知られている。南極大陸の黒い超巨大な山脈である「狂気山脈」が初登場。以後、『未知なるカダスを夢に求めて』などの作品に登場している。

本作には、古のもの(旧支配者)、ショゴス、クルウルウの末裔、ミ=ゴなどが登場し、人類史以前の世界観が描かれるなど、壮大な構想の作品となっている。そのため翻訳を担当した大瀧啓裕は「ラヴクラフト宇宙観の総決算」と本作を評している。

友人たちの尽力で生前に日の目を見た代表作

ラヴクラフトは子どものころから南極に関心を持っていた。当時、南極は未踏破であり、未知の大陸として興味は薄れなかったようである。今日では彼の代表作の一つとして考えられているが、一度原稿掲載を拒否されるなど世に出るまでには時間がかかった。

執筆から5年後、雑誌『アスタウンディング・ストーリーズ』に原稿が採用されたが、このとき原稿を送ったのはラヴクラフトではなく友人だった。これはラヴクラフトは、一度拒絶された原稿を他誌に提出することを嫌っており、彼の体調を心配した友人たちがストックした原稿を発表しようと考えたからだった。実際、この翌年にラヴクラフトは亡くなっている。

合わせて読みたい本

狂気の山脈にての評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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