ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)・解説・感想

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)の作品情報

タイトル
ネートチカ・ネズワーノワ
著者
ドストエフスキー
形式
小説
ジャンル
家族
執筆国
ロシア
版元
不明
執筆年
不明
初出
祖国雑記、1849年1月号、2月号、5月号
刊行情報
ドストエフスキー全集2、新潮社
翻訳者
水野忠夫

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)のあらすじ・概要

母親に「ネートチカ・ネズワーノワ(=名前のない子)」という意味の愛称を付けられたアンナ。ネートチカの父親は彼女が2歳の時に亡くなり、母親はその後イェフィーモフという風変わりな音楽家と再婚する。ネートチカのこの継父に対する幼少期の痛ましいともいえる愛慕の情は、それに続く侯爵令嬢カーチャへの甘いうっとりとするような愛慕の情との対比を際だたせる役割を果たしている。そうした両極端ともいえる境涯を経てネートチカは、さらにカーチャの義姉に当たるアレクサンドラ・ミハイロヴナの家に引き取られ、そこで経済的・社会的には恵まれた家庭に見えるアレクサンドラ家の痛ましいともいえる夫婦の暗闘に触れることになる。

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)の目次

作者

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821年11月11日 – 1881年2月9日)

ロシアの小説家。思想家。レフ・トルストイ、イワン・ツルゲーネフと並び、19世紀後半のロシア小説を代表する文豪である。代表作に『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』などがある。

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)の刊行情報

米川正夫訳『ドストエーフスキイ全集4』「ネートチカ・ネズヴァーノヴァ」河出書房新社、1970年

小沼文彦訳『ドストエフスキー小説全集2』「ニェートチカ・ニェズヴァーノヴァ」筑摩書房、1976年

水野忠夫訳『ドストエフスキー全集2』「ネートチカ・ネズワーノワ」新潮社、1979年

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)の登場人物

ネートチカ・ネズワーノワ
物語の主人公。本名はアンナ

イェゴール・ペトローヴィッチ・イェフィーモフ
ネートチカ・ネズワーノワの継父。貧乏楽士。

ネートチカ・ネズワーノワの母
名前は分からない。夫と死別した後、イェフィーモフと再婚する。

カーチャ
H公爵の娘。ネートチカと同じ年頃。

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)

ネートチカ・ネズワーノワのストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)のあらすじ【起】

ネートチカ・ネズワーノワは、2歳の時に父が亡くなり、その後母が再婚したのはイェフィーモフという音楽家だった。このイェフィーモフは、ネートチカの母親が遺産として受け取った千ルーブリの金を当て込んで彼女と結婚したのであったが、結局その金もまたたくうちに使い果たして、家族は貧乏にあえいでいた。

しかし、イェフィーモフはこつこつ働くどころか自分は音楽の天才だと称して自尊心ばかりが強く、オーケストラの楽士たちともすぐにトラブルを起こして、ろくな仕事にもつかず結局妻の細腕にすがりついているというありさまだった。イェフィーモフはもともとある地主のオーケストラのクラリネット奏者だったが、ある時からイタリア人の指揮者と仲良くなり、しばらく親しくしていたが、突然その指揮者が亡くなり、彼にバイオリンを遺してくれた。そのうえ彼はその指揮者からバイオリンを教わったらしく、いつの間にかバイオリンの腕前は驚くほどのものになっていたのである。

やがて、彼は自分の力を世間に示すにはペテルブルグに出るしかないと思い、やっとのことでペテルブルグに出て、そこでバイオリニストのBという男と知り合う。Bはまじめで、ひたむきに自分の目標に向かって進んでいくタイプであったが、イェフィーモフの方はすでに若さを失い、目標すらも見失ってしまっているのであった。ただ、自分は音楽の天才であるというむなしい幻想、自己満足に溺れているに過ぎなかった。やがてイェフィーモフは飲酒に耽るようになり、バイオリンもしばらく手にすることもなく、次第に落ちぶれていった。そのうえBとも喧嘩して、彼に紹介されて入ったオーケストラも追い出されてしまったのである。ちょうど結婚して2年半の頃で、ネートチカは4歳半だった。それから長い間イェフィーモフは、職にもつかず妻に頼って細々と暮らしをしていた。

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)のあらすじ【承】

ネートチカの物心がついたのは10歳の頃であった。ネートチカは家では母に怒鳴られ、虐げられている継父のことが可哀想な受難者のように思え、いつしか継父のことを愛おしく思うようになっていた。彼女は自分の家の悲劇をすべて母のせいだとすら考えたのである。継父を喜ばせるためならなんだって彼女はするつもりだった。ある時Sというバイオリニストの演奏会の切符を手に入れるため、母親の給料の25ルーブリから15ルーブリをくすねて継父に渡そうとしたことすらあった。結局それは失敗したのだが、継父はBのとりなしもあって音楽好きの公爵から演奏会の招待状を受け取りその演奏会へ行くことができた。

しかし、その演奏会へ行ったことによって結局継父イェフィーモフは破局へと導かれていったのであった。継父が演奏会から帰ってきたその夜に母は亡くなった。イェフィーモフは妻の霊前でバイオリンを弾くと、彼女を置いたまま娘とともに家をあとにした。しかし、娘は途中で母のところに戻ろうとするが、イェフィーモフはそのまま戻って来なかった。彼は天才Sの演奏を聴いて自分の身の程を思い知らされ、永遠に息の根を止められてしまったのである。母の死によって、もはや己を縛るものは何もなくなった彼は自由となり、自分で自分を裁こうとしたのであった。

ネートチカは、継父の後ろ姿を追いかけながら、失神して倒れた。気がついた時には柔らかいベッドの上であった。ネートチカが倒れたのは音楽好きの公爵邸の前で、貧乏楽士イェフィーモフの娘であることを知った公爵はその偶然の不思議さに心を打たれ、その娘を自分の子供達と一緒に育てようと考えたのである。継父イェフィーモフは結局あの直後に発狂し、病院に送られ2日後に亡くなったことをネートチカは知らされた。

しばらくしてネートチカは元気を取り戻し、モスクワからやってきた公爵の娘カーチャと生活を共にすることになる。ネートチカは、初めて会った瞬間からカーチャのうっとりするような美しさに心を奪われてしまった。はじめのうちカーチャはネートチカに戸惑っていたが、やがてネートチカの思いを受け止め、2人はお互いを好きになっていった。しかし、2人のあまりの親密ぶりを心配した公爵は、やがて2人を遠ざけることにした。カーチャは再びモスクワの公爵家へ移され、2人は別れることになったのである。

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)のあらすじ【転】

ネートチカは、その後公爵夫人の先夫との間に生まれた娘アレクサンドラ・ミハイロヴナの家に引き取られることになる。アレクサンドラ・ミハイロヴナは財産もあり立派な官等のピョートル・アレクサンドロヴィッチという男と結婚していたが、その生活はどこか修道女のような沈んだものであった。彼女と夫の関係もなにかぎくしゃくしたものが感じられた。ネートチカは、この家の養女となりここで8年間過ごすことになる。

アレクサンドラ・ミハイロヴナは、やがて夫との間に2人の子を儲けるが、彼女は自分の子供とネートチカを差別したりすることはまったくなく、娘として存分に愛してくれたのである。ネートチカは、その家でしっかりとした教育を授けられるが、やがて彼女はこの家の図書室から密かに本を持ち出して本の世界にどっぷりと浸かり、空想と幻想の世界に思い切り羽ばたいていった。しかし、偶然本の間に挟まれた手紙、それはアレクサンドラ・ミハイロヴナに宛てたある男性からの手紙だったが、それを読んだことでこの夫婦の間のただならぬ秘密を知ることになる。その手紙は、アレクサンドラ・ミハイロヴナへ向けた最後の別れの手紙だった。アレクサンドラ・ミハイロヴナはすでに結婚していたが、ある男と道ならぬ恋に陥り、それがたちまちのうちに世間の噂となり、アレクサンドラ・ミハイロヴナに向けて激しい非難が浴びせられた。しかし夫はそれを知った上で男に手を引かせ、アレクサンドラ・ミハイロヴナの名誉を守ろうとしたらしい。文面からその男がアレクサンドラ・ミハイロヴナの窮地を救うために自ら身を引くことが書かれていた。ネートチカはこの重大な秘密を知って激しく動揺した。そして運悪く図書室でまたその手紙を読んでいるところをピョートル・アレクサンドロヴィッチに見つかってしまい、彼はネートチカからその手紙を引ったくって一瞬手紙に目を通した。ネートチカは必死で彼にしがみついて、何とか手紙を取り戻した。

ネートチカ・ネズワーノワ(ドストエフスキー)の結末・ラスト(ネタバレ)

しかし手紙をめぐる2人の争いはアレクサンドラ・ミハイロヴナのいる場所に引きずり出された。アレクサンドラ・ミハイロヴナの前でピョートル・アレクサンドロヴィッチはネートチカに手紙について詰め寄る。ネートチカは手紙のことが自分にも、さらには夫にも知られることになればアレクサンドラ・ミハイロヴナは破滅してしまうに違いないと必死で手紙のことを隠そうとする。それに対してピョートル・アレクサンドロヴィッチは手紙のことを執拗に追及してくる。しかし、途中からピョートル・アレクサンドロヴィッチがこの手紙をネートチカの恋人からものと勘違いしているらしいことに気づく。そこで、ネートチカは夫に合わせるように、手紙は自分の恋人からの恋文であると嘘の自白をする。

その結果なんとか秘密が暴かれることは避けられたのであるが、そこでの激しいやりとりによってもはや3人の関係は修復できないものとなっていた。ネートチカは、その直後ピョートル・アレクサンドロヴィッチのところへ行き手紙を渡し、それがネートチカへの恋文ではなくアレクサンドラ・ミハイロヴナ宛ての手紙であることを伝える。夫の虚栄心と嫉妬に狂ったエゴイズムによりアレクサンドラ・ミハイロヴナがどれほど苦しんでいたか、それを夫に分からせるとともに自分はすっかりそれを見抜いていることを伝えるための行動だった。

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この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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