カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)・解説・感想

『罪と罰』と並ぶドストエフスキーの最高傑作とされ、『白痴』、『悪霊』、『未成年』と併せ後期五大作品と呼ばれる。

カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)の作品情報

タイトル
カラマーゾフの兄弟
著者
フョードル・ドストエフスキー
形式
小説
ジャンル
思想小説
宗教小説
推理小説
裁判小説
家庭小説
恋愛小説
執筆国
ロシア
版元
不明
執筆年
不明
初出
ロシア報知、1879年1月号-12月号、1880年1月号-11月号
刊行情報
下記
翻訳者
下記

カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)のあらすじ・概要

物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そして、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ。これらの人物の交錯が作り出す愛憎の地獄図絵の中に、神と人間という根本問題を据え置いた世界文学屈指の名作。

カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)の目次

作者

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821年11月11日 – 1881年2月9日)

ロシアの小説家。思想家。レフ・トルストイ、イワン・ツルゲーネフと並び、19世紀後半のロシア小説を代表する文豪である。代表作に『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』などがある。

カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)の刊行情報

おすすめ原卓也訳『カラマーゾフの兄弟 上中下』新潮文庫

亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟 1-5』光文社古典新訳文庫

米川正夫訳『カラマーゾフの兄弟 1-4』岩波文庫

漫画版

カラマーゾフの兄弟 ─まんがで読破

妖艶な美女を奪い合い、長男ドミトリーと淫蕩な父親フョードルが激しくいがみ合う。家族のことに無関心な次男イワンと心を痛める三男アレクセイ。親子の確執は激しさを増し、悲劇は起こる。信仰や死、国家と教会、貧困、父子・兄弟関係など深遠なテーマを含む人間ドラマ。現代の予言者ドストエフスキー生涯最後の作品を漫画化!

カラマーゾフの兄弟 (まんが学術文庫)

奔放かつ強欲極まりない男フョードル・カラマーゾフが殺された。一家の当主を失い始まる、残されたものたちの”毒蛇同士の殺し合い”に例えられる争い。“神の存在”、“認められること、許されること”の意味とは? そうして犯人は誰か? ドストエフスキーの集大成にして、最高傑作の一つ『カラマーゾフの兄弟』を圧倒的画力で描ききったまんが作品。ここに完成!

カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)の登場人物

フョードル・パーヴロウィチ・カラマーゾフ
カラマーゾフ家の家長。強欲で好色な成り上がりの地主。前妻のアデライーダ・イワーノヴナ・ミウーソワとの間に長男のドミートリイを、後妻のソフィヤ・イワーノヴナとの間に次男のイヴァンと三男のアレクセイをもうけた。ソフィヤには先立たれ、今は独身である。直情的かつ暴力的なドミートリイを恐れているものの、本当に怖いのはイヴァンだと言う。

ドミートリイ・フョードロウィチ・カラマーゾフ(ミーチャ、ミーチカ)
フョードルの長男。28歳。フョードルと前妻の子。退役軍人。放埒で堕落した生活から抜けきれない、直情型の人物。しかし野生的な魅力があり女性に結構好意を寄せられてもいる。

イヴァン・フョードロウィチ・カラマーゾフ(ワーニャ、ワーネチカ)
フョードルの次男。24歳。フョードルと後妻の子。理科大を出たインテリで、合理主義・無神論を標榜しているが、自分を完全に信じ込むまでは至っていない。

アレクセイ・フョードロウィチ・カラマーゾフ(アリョーシャ、リューシェチカ)
主人公。フョードルの三男。中学校を中退して修道院に身を預けた修道僧であり、純情で真面目な美青年。神の愛によって肉親を和解させようとする。ゾシマ長老の命で、彼の死後は還俗する。

スメルジャコフ
カラマーゾフ家の使用人。「神がいなければ、全てが許される」というイヴァン独特の無神論に心酔している。父親はフョードルだと町の人々は思っており、フョードル自身も積極的に否定していない。

カチェリーナ・イワーノヴナ(カーチャ、カチェーニカ)
ドミートリイの元上司の令嬢。ドミートリイの婚約者。かつてドミートリイに助けられたことがある。長身で優れた容姿をもつとともに高慢で自尊心が非常に高い。イヴァンの求愛を受け、ホフラコワ夫人には、ドミートリイよりイヴァンを愛しているのだと指摘される。

アグラフェーナ・アレクサンドロヴナ(グルーシェンカ)
妖艶な美貌を持つ奔放な女性。ドミートリイとフョードルのどちらともが夢中になっているが、どっちつかずの態度を崩さない。

ゾシマ
アレクセイの修道院の長老。余命幾許もない。元軍人。現在はスヒマ僧(ロシア正教における高位の修道士)で聖人君子とされ、修道院には彼のご利益にあやかろうとする人でいつもあふれている。

カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)

カラマーゾフの兄弟のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

カラマーゾフの兄弟 第1部のストーリーを紹介!

強欲かつ好色な成り上がり地主フョードル・カラマーゾフは、直情的な長男のドミートリイとそりが合わず、遺産相続や、グルーシェンカという女性を巡ってトラブルになっていた。

ある日、三男の修道僧アレクセイの師・高僧ゾシマの仲介で、ばらばらに育ったカラマーゾフの兄弟3人が一堂に会すこととなった。しかし、顔を合わせたものの、フョードルとドミートリイはすぐに大喧嘩を始めてしまう。

ドミートリイは、父がグルーシェンカと関係を持つようなら父を殺すと言い放った。実際にフョードルを殴ったことがあったが、そんな彼にはカチェリーナという婚約者がいるのだった。

ドミートリイは、カチェリーナに対し、君を真剣に愛している次男のイヴァンのほうがふさわしいとの伝言を、アレクセイに頼む。アレクセイがそれを伝えにカチェリーナの元に行くと、そこにはグルーシェンカが来ていた。

グルーシェンカはカチェリーナに、ドミートリイとは結婚しないと言っておきながらドミートリイの伝言を聞く、とカチェリーナをあざ笑ったため、女性二人も対立することになる。

カラマーゾフの兄弟 第2部のストーリーを紹介!

カチェリーナはイヴァンと接近しつつあったが、ドミートリイをまだ愛しているのかもしれなかった。そのためか、酒場でドミートリイに乱暴をされたスネギリョフという男が、そのことで訴えないように見舞金を送ることをアレクセイに頼む。

スネギリョフの息子イリューシャは、父親を侮辱したドミートリイを憎んでいた。そのため、級友たちとの喧嘩を止めようとしたアレクセイに石をぶつけた。

スネギリョフもこれをもらったら息子に向ける顔がないと見舞金を踏みつけにする。 ゾシマ長老の容態も悪化し、不吉な予兆を感じるアレクセイは、今度はイヴァンから無神論の持説を聞かされる。イヴァンは、虐げられている子供たちのために神は何かしているか?、と問うのだった。

続く「大審問官」という創作物語は、イエスを思わせる人物が、異端審問官から「おまえこそ異端だ」と火刑にされかけるというもの。

この話から、アレクセイはイヴァンの神経を心配する。実際、イヴァンは、フョードルの私生児と噂されているカラマーゾフ家の料理人スメルジャコフの「フョードルが再婚したら財産は後妻に行くからフョードルは殺されていい」という囁きを肯定する気持ちがあり、動揺していたのだった。

そんな夜、スメルジャコフがてんかんの発作で倒れる。ドミートリイ来襲に備えるフョードルは、監視役を失った不安に陥っていた。

カラマーゾフの兄弟 第3部のストーリーを紹介!

高僧ゾシマは、ドミートリイにかつての自分の人生の落伍した経験を語った後に亡くなってしまう。

だが、その死体の激しい腐臭のため、還俗したアレクセイも神への疑念を抱きだす。 ドミートリイはカチェリーナと縁を切るため、カチェリーナに返す金を工面しようと奔走するも徒労に終わってしまった。そのため、父の金を盗もうとカラマーゾフ家に忍び込む。

しかし使用人のグリゴーリに見つかり逃走。次にはグルーシェンカが昔の愛人と会っていると知って、その現場へ急行する。

そこで恋敵を追い払い、グルーシェンカからついに愛の告白を受けるが、その直後、警察に逮捕される。容疑は父フョードル殺し。人々の証言はドミートリイに不利なものばかりであった。

カラマーゾフの兄弟 第4部のストーリーを紹介!

病床に臥す少年イリューシャを、アレクセイの尽力で仲直りした級友たちが見舞いに来る。イリューシャもその父スネギリョフも素直に歓迎する。

ただアレクセイは、イヴァンの無神論にも似た考えを口にするリーダー格の少年コーリャの将来が心配になるのだった。

犯人をドミートリイとするイヴァンは、スメルジャコフだと見るアレクセイと絶交することになる。だが、不安になってスメルジャコフを問いつめた。スメルジャコフは犯行を自白するが、殺人を許可したのはイヴァンだと言う。怒ったイヴァンは明日の裁判で真実を言えと詰め寄るが、その直後、自室には悪魔が現れた。我に返ったイヴァンに、アレクセイがスメルジャコフの自殺を告げた。

ついにドミートリイの裁判の日がやってきた。関係者が次々と証言していく中、裁判はドミートリイに有利に傾いていった。

だが、最後にイヴァンが事件当日盗まれた金を示して、犯人はスメルジャコフであり、それをそそのかしたのは自分であると声を挙げる。しかし、これに割り込んだのはカチェリーナだった。父を殺すと書いたドミートリイの手紙を示して、ドミートリイが犯人だと主張し始めたのだ。

カラマーゾフの兄弟(フョードル・ドストエフスキー)の結末・ラスト(ネタバレ)

名弁護士の心のこもった長い最終弁論は法廷内を感動させたものの、ドミートリイには有罪、シベリア流刑懲役20年の判決が言い渡される。

判決が出た後の登場人物の様子をつづって本編は終わりを迎える。病床に臥したイヴァンは自分にもしものことがあったら、カチェリーナがドミートリイの脱獄を助けてほしいと言い残す。少年イリューシャの葬式では、コーリャは、ドミートリイのように何かのために犠牲になって生きたい、と尊敬するアレクセイに語る。

カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)の感想・解説・評価

後世に絶大な影響を与えた世界文学の金字塔

強欲で女好きな父・フョードル・カラマーゾフ、直情型の長男・ドミートリィ、大学出の秀才ふうな次男・イワン、純情で真面目な三男・アレクセイ、フョードルの私生児だと噂されているスメルジャコフ。『カラマーゾフの兄弟』はそのタイトルの通り、家族を中心にした物語です。

小説では長男ドミートリィが財産と娼婦をめぐり、父フョードルと醜悪な争いを繰り広げ事件が勃発。なんとか事態を収拾させようと三男アレクセイが奔走したり、次男のイワンは冷静だったりと、カラマーゾフ家の様子を描いていきます。

長大な物語の中では、思想が語られ、恋愛にふけり、ミステリーが明かされ、悲劇が起き、笑いもあれば、裁判も行われます。様々な要素が含まれた作品ですが、ドストエフスキーの力技で精密に汲み上げられています。

『カラマーゾフの兄弟』は読むのが大変な作品です。ボリューム自体もかなりありますし、作中で語られるキリスト教の思想には多くの日本人が馴染みのないものでしょう。ドストエフスキーの小説特有の長台詞も健在ですし、ロシア文学特集の人物名の多さも読者を混乱させます。例えば三男には、名前のアレクセイ、名字のカラマーゾフ、愛称のアリョーシャとリューシェチカがあり、場面場面で呼ばれ方が違います。(光文社古典新訳文庫では統一されています)

それでもなんとか食らいつきながら読み進めていくと、人物関係や各登場人物の考え方が見えてきて、単なる小難しい小説ではないことがわかります。ドストエフスキー作品の魅力は人間味あふれるキャラクターだと思うのです。ぜひ一度は挑戦してみてほしい作品です。

『カラマーゾフの兄弟』の後に日本の小説を読むと、きっとその影響を感じると思います。そのくらい後世の作家に大きな影響を与えた作品でもあります。

合わせて読みたい本

罪と罰

同じくドストエフスキーの代表作。優秀ながら貧乏な学生・ラスコーリニコフが金貸しの老婆を殺害し、その罪に悩まされる話です。

個人的には『カラマーゾフの兄弟』よりも読みやすく、ラストには大きな衝撃を受ける作品だと思います。
>>罪と罰(ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)・解説・感想

カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
右手

平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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