クトゥルフ:宇宙からの色・異次元の色彩(H・P・ラヴクラフト、田辺剛)のあらすじ(ネタバレあり)・解説・感想

ボストンの測量士が主人公で物語は、彼の一人称視点で描かれる。アーカムを舞台に宇宙から飛来した奇妙な隕石に端を発する奇怪な事件を目撃者の農夫から聞いて再構成した形のSF短編小説。

異次元の色彩の作品情報

タイトル
異次元の色彩
著者
H・P・ラヴクラフト
形式
小説
ジャンル
SF
執筆国
アメリカ
版元
アーカム・ハウス出版社
執筆年
1927年3月
初出
アメージング・ストーリーズ、1927年9月号
刊行情報
下記
翻訳者
大滝啓裕

異次元の色彩のあらすじ・概要

ラヴクラフトの最高傑作、驚愕のコミカライズ。

“それ”は、隕石とともに、その村にやってきた…。そして、想像を絶する恐怖の幕が上がる。
ホラー小説の巨星ラヴクラフトが「もっとも満足のいく作品」と自ら語った最高傑作に、
『魔犬』で大きな話題を呼んだ気鋭の絵師が挑む。
クトゥルフ神話の最深部、香気と戦慄が横溢する圧倒的な“煉獄”に、酔え、震えろ。

異次元の色彩の目次

※漫画版

  • 序章
  • 第1章 隕石
  • 第2章 ある色彩
  • 第3章 奇妙な日々
  • 第4章 なにか
  • 第5章 井戸の中で
  • 最終章 焼野

作者

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890年8月20日 – 1937年3月15日)

アメリカ合衆国の小説家。怪奇小説・幻想小説の先駆者。生前は無名だったが、死後に広く知られるようになり、一連の小説が「クトゥルフ神話」として体系化された。ラヴクラフトの創造した神話体系は世に広まり、後世の作家へ大きな影響を与えた。

田辺 剛(1975年 – )

漫画家。2001年『砂吉』にて、アフタヌーン四季賞準入選。アントン・チェーホフやハワード・フィリップス・ラヴクラフト、三遊亭円朝の作品を原作として、漫画化している。

異次元の色彩の刊行情報

大滝啓裕訳『ラヴクラフト全集4』「宇宙からの色」、創元推理文庫

田辺剛『異次元の色彩』エンターブレイン・ビームコミックス、2015年10月8日

異次元の色彩の登場人物

主人公
ボストンの測量士。彼がアミ・ピアースという老人の話を聞く形で話は進む。

アミ・ピアース
街を離れひっそりと住む老人。主人公に「奇妙な日々(ストレンジ・デイズ)」について語る。

ネイハム・ガードナー
アミ・ピアースの友人。彼の家の近くに隕石が落下したところから物語が始まる。

異次元の色彩のあらすじ(ネタバレあり)

異次元の色彩のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

異次元の色彩のあらすじ【起】

とあるボストンの匿名の測量士が「焼野」と呼ばれる、人目につかない場所の秘密を解き明かそうとするところから物語は始まる。彼は町民から何の情報も得ることができなかったため、街から離れて暮らしているアミ・ピアースという名前の老人の元を訪れる。ピアースは、かつて呪われた土地に住んでいたネイハム・ガードナーの友人だった。ピアースは、全ての元凶は1882年6月にガードナーの土地に隕石が衝突したことだったと語るのだった。

異次元の色彩のあらすじ【承】

その隕石を調べるためにミスカトニック大学の3人の教授たちが現場に来て調査を行うが、不思議な性質を持つその隕石の正体を掴むことができない。隕石は縮む、熱を発し続けている、柔らかい、消滅してしまうなどの性質で研究者を悩ませ続けていた。隕石は落雷によって破壊され、ビーカーに保管されていた実験室の標本は消滅してしまった。

次の季節には、ガードナーの作物は異常に大きく、豊富に育っていた。それらは独特の苦みを有しており、とても食べられないものだった。ガードナーは、隕石が土壌を汚染したと確信するようになる。翌年には周辺の植物や動物にも問題が広がり、異常な変形が認められるようになる。農家の周りの植物は「暗闇でわずかに光る」ようになると、ガードナーの妻は発狂してしまう。カードナーは妻を屋根裏部屋に閉じ込めてしまう。周囲の人たちはその変化を怖れて近寄らなくなり、ピアースは彼と接する唯一の存在となる。

異次元の色彩のあらすじ【転】

ガードナー夫人が発狂したころには、周辺の草木は腐食し灰色の粉になり、飲用水である井戸水も汚染されていた。ガードナーの息子の一人、ゼナスも気が狂い、ガードナーは彼を妻とは別の部屋に閉じ込めた。家畜は灰色になり死んでしまい、作物と同じようにその肉は味がなく食べられない。ゼナスは屋根裏部屋で亡くなり、もう一人の息子は汚染された井戸から水を汲んでいる間に姿を消した。

ガードナーから何の連絡もなかった2週間後、ピアースは農場を訪れ、屋根裏部屋でこの物語の名の由来となった恐怖を目撃する。ピアースはナビーが既に死んでいるのを発見し、そこで奇妙な色彩の蒸気のようなものに遭遇する。そして身体が灰色に変じて崩れかけたネイハムは死の寸前、自分の見たもの知ったものをアミに伝える。光る何かが井戸の中におり、それが家族に取り憑いて命を吸っていたというのだ。

異次元の色彩の結末・ラスト(ネタバレ)

ピアースはその日のうちに農場に戻り、警察官や検視官、獣医を含む官吏が遺体を調べることになった。井戸の底では子どもたちの骨が見つかったほか、いくつかの生き物の骨も引き上げられた。家の中で調査を行っている中、井戸から光が溢れ始める。男たちは家から逃げ出し、「色彩」が大地を照らし、空へと飛んでいく。「色彩」が去った後、ピアスはその一部が付いていけず井戸に戻ろうとするのを目撃する。宇宙人の一部が地球上にまだ存在しているという知識は、彼の精神状態を乱すのに充分だった。翌日、何人かの男たちが戻ってきたとき、彼らが見たのは死んだ馬と広大な灰色の塵だけだった。近隣の住人たちは、その地域から離れるように逃げていったという。

異次元の色彩の感想・解説・評価

謎の生命体・色彩の恐怖を綴る長編作品

ラヴクラフトの作品は短編が多いが、本作は珍しく長編作品として執筆された。

現代の日本では、隕石により変化がもたらさせたというストーリーから放射能汚染のようなものを想像するかもしれない。しかし、周囲の自然に対して起こった影響は隕石の内側にいた謎の生命体・色彩によるものだった。

ガードナーの一家は、隕石の被害が進行していっても家を離れることなくその土地に住み続ける。一家を襲うのは理不尽としか言いようのない悲劇だ。植物や動物はその姿を変形させていくが、人間はまず精神が狂ってしまうのである。

美麗な絵による見事な漫画化作品

ラヴクラフトの文章表現は、必ずしも具体的に書いてるわけではない。その中で異常に成長する植物や、謎の生命体・色彩を見事に表現することに成功している。

合わせて読みたい本

異次元の色彩の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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