伯父様の夢(ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)・解説・感想

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)の作品情報

タイトル
伯父様の夢
著者
フョードル・ドストエフスキー
形式
小説
ジャンル
ユーモア小説
執筆国
ロシア
版元
不明
初出
ロシアの言葉、1859年3月号
刊行情報
不明
翻訳者
工藤幸雄

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)のあらすじ・概要

地方都市の社交界で、おそろしくあけすけな「貴婦人」たちが、これまたおそろしくポンコツな侯爵を相手に欲にまみれた策謀を繰り広げるという一種のドタバタ喜劇である。

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)の目次

1〜15章

作者

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821年11月11日 – 1881年2月9日)

ロシアの小説家。思想家。レフ・トルストイ、イワン・ツルゲーネフと並び、19世紀後半のロシア小説を代表する文豪である。代表作に『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』などがある。

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)の刊行情報

小沼文彦訳『ドストエフスキー全集3』「おじさんの夢」筑摩書房、1962年

米川正夫訳『ドストエーフスキイ全集5』「伯父様の夢」河出書房新社、1970年

工藤幸雄訳『ドストエフスキー全集3』「伯父様の夢」新潮社、1979年

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)の登場人物

マーリヤ・アレクサンドロヴナ
モルダーソフ市の貴婦人。ジーナの母親。

ジナイーダ・アファナーシイェヴナ
23歳になる美人のマーリヤ・アレクサンドロヴナの娘。

アファナーシィ・マトヴェーイッチ
マーリヤ・アレクサンドロヴナの夫。

K侯爵
遺産を相続して大地主となった老侯爵。一見若そうに見えるが、体は老いている。

パーヴェル・アレクサンドロヴィッチ・モズグリャコフ
ジナイーダ・アファナーシイェヴナの求婚者。K侯爵の自称甥。

ナスターシャ・ペトローヴナ・ジャーブロヴァ
マーリヤ・アレクサンドロヴナに同居している親戚筋の未亡人。

アンナ・ニコラーイェヴナ・アンチーボヴァ
検事夫人。マーリヤ・アレクサンドロヴナの天敵。

ナターリア・ドミートリイェヴナ・パスクージナ
検事夫人の親友。大女。

ソフィア・ペトローヴナ・ファルピーヒナ
大佐夫人。50歳前後の噂好きの女。

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)

伯父様の夢のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)のあらすじ【起】

マーリヤ・アレクサンドロヴナ・モスカリョーヴァはモルダーソフ市の第一の貴婦人であることは誰も認めるところである。それは彼女が、誰よりも情報通であったことと、抜きんでた政治力をもっていたからである。彼女は夫が退職したのを機に夫を郊外に遠ざけ、今はジナイーダ・アファナーシイェヴナという絶世の美人で23歳になる一人娘と市内に暮らしていた。娘は、二年ほど前に小学校教師の青年と恋愛関係に落ち、彼女が書いたという恋文が人から人に渡ったという噂がまことしやかに流されるという事件が起こったが、母親のマーリヤ・アレクサンドロヴナはそれをまもなくあとかたもなくもみ消した。

そこで、彼女はそろそろ娘を適当な相手と結婚させなければと考えていたところ、若いスマートな貴族青年であるパーヴェル・アレクサンドロヴィッチ・モズグリャコフという求婚者が現れたのである。しかし、それから5か月も経つのに娘との結婚話はなかなか進まず母親がやきもきしているところに、K侯爵がモルダーソフにやってきてマーリヤ・アレクサンドロヴナの家に寄ることになったのである。K侯爵は大地主の名門貴族であり、かつては街でもその名を轟かせたことがあるが、一時は親戚の者たちから狂人扱いされ、今やある中年女に監視されながら自分の領地で世捨て人のように暮らしていたのだが、たまたまその監視女が屋敷を留守にしたため、その留守を見計らって屋敷を抜け出したのであった。そして知り合いの司祭を訪ねる途中に馬車の事故に遭い、そこに侯爵の遠い親戚だというモズグリャコフがたまたま出くわして「伯父様」を助け出し、とりあえずマーリヤ・アレクサンドロヴナの家に連れてきたのである。

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)のあらすじ【承】

そして、マーリヤ・アレクサンドロヴナはK侯爵の訪問が大きなチャンス到来だとひらめいたのだ。彼女は、うだつのあがらないモズグリャコフよりも侯爵の方がはるかに娘の結婚には有利だという判断がはたらいたのである。ジーナの魅力で侯爵をたぶらかすのはいとも簡単に思えた。しかし、母親は娘がまだあの青年のことを忘れられないでいることを知っていた。娘がそんな話に簡単に乗るとは思えなかったが、あの侯爵なら1, 2年も経たずに亡くなるから、そのあとではあなたが誰と再婚しようとあなたの自由なのだ、という母親の誘いにまんまと乗せられて、結局彼女は母親の提案に従うことにしたのである。うまい具合にモズグリャコフが出かけてくれたので、母親と娘が自宅のサロンで侯爵に熱い接待を繰り広げると、侯爵はジーナの美貌に心奪われ、その歌声に我を忘れ、お嬢さんを愛している、この場ですぐにでも式を挙げたいと言い出したのだ。

しかし、モズグリャコフは実はその様子を隣の物置部屋の鍵穴から見ていた。出てきたモズグリャコフはジーナを非難するが、ジーナは平然と突っぱねた。母親はそれを見て、モズグリャコフをうまく丸め込むことに成功する。つまり、侯爵が亡くなったあとで、ジーナが再婚する相手としてはあなたしかいない、というわけだ。モズグリャコフも、母親の言葉にすがるしかないので、一旦は引き下がったが、しかし、彼はそのあと冷静になって考えた結果、あの母親の言うことは信用できないと思い直し、そこで一計を案じたのである。2階で休んでいる侯爵の部屋にそっと忍び込み、娘に結婚の申し込みをしたと浮かれ気分でいる侯爵に、彼は、伯父さんまた夢を見たんですね、そんなの夢に決まっています、結婚なんて言い出したらまた親戚の者たちに精神病院に入れられてしまいますから、どんなことがあっても夢を見たことにしないとダメですよと言い、侯爵もそれを聞いてかつての悪夢を思い出し、夢を見たことにしようと心に決めるのである。そして侯爵来訪の噂話を聞いて集まってきた社交界の婦人連を前に、マーリヤ・アレクサンドロヴナは、侯爵がさきほど娘に結婚の申し込みをした、と発表するのだが、侯爵はどうやらあれは夢だったようだ、と言い出し、マーリヤ・アレクサンドロヴナと激しい押し問答になる。周りの婦人連もいささかあきれ顔になったその時、ジーナが、突然侯爵に向かって、実は私たちはあなたを騙したのです、侯爵という位に目がくらんで、あなたをたぶらかそうとしたのです、と言ったのだ。

その正直な捨て身の告白は侯爵を感動させたばかりでなく、モズグリャコフをも動かしてしまった。モズグリャコフは、実は侯爵に夢の話を吹き込んだのは自分である、と告白したのである。侯爵は、頭が混乱して、それではもう一度さっきのサロンでの出来事を順を追って思い出してみようと、あれこれ思い出しているうちに、そこに来ている婦人連の話も飛び出し、その話に婦人連の一人がマーリヤ・アレクサンドロヴナに怒り出し、それについて侯爵が言った一言から今度は侯爵にも婦人連の怒りの矛先が向けられ、その場は修羅場と化したのである。侯爵はモズグリャコフに連れられ、なんとかその場を逃げ出した。

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)のあらすじ【転】

この一件によりマーリヤ・アレクサンドロヴナの名は地に落ちたが、さらに追い打ちをかける出来事が起こる。ジーナが、翌日なんとあの噂の青年の危篤の知らせを受けて、青年の元に駆けつけたのである。1年半ぶりに二人は再会を果たすが、その2日後に青年は亡くなった。一方、侯爵も宿屋へ身を落ち着けるとその夜のうちに発病して危篤に陥り、それから3日目に亡くなった。モルダーソフの人たちは、哀れな侯爵を死に至らしめたマーリヤ・アレクサンドロヴナ家の者たちを激しく非難した。侯爵の葬式を出したのは、たまたまそこを訪れた侯爵の本当の甥にあたる人物で、自称甥のモズグリャコフは姿をくらましてしまった。マーリヤ・アレクサンドロヴナ一家もほどなくモルダーソフを離れ、一家の郊外と市内の領地は売りに出された。

伯父様の夢(フョードル・ドストエフスキー)の結末・ラスト(ネタバレ)

 それから3年の月日が経ち、モズグリャコフはある学術探検隊に志願して辺境の地の学術調査に加わることになった。はるか遠隔の地で探検隊の一行はそこの総督の家の舞踏会に招待された。なんと驚いたことに若い美人の総督夫人はあのジーナだったのだ。しかし、彼女はモズグリャコフにまったく気づかないようであった。母親のマーリヤ・アレクサンドロヴナも健在だった。参会者の話では総督夫人は名門出の令嬢で、また母親は最上流クラスの出の方だと評判らしい。モズグリャコフはなんだかやりきれない気持ちで、そこを後にしたが、翌日仕事で郊外に出ると、すっかり気持ちも持ち直していた。

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この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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