主人公・野島とその親友・大宮における友情と恋愛の対立が展開される青春小説。
友情(武者小路実篤)の作品情報
- タイトル
- 友情
- 著者
- 武者小路実篤
- 形式
- 小説
- ジャンル
- 恋愛
青春 - 執筆国
- 日本
- 版元
- 以文社、1920年
- 初出
- 大阪毎日新聞、1919年
- 刊行情報
- 新潮文庫
友情(武者小路実篤)のあらすじ(ネタバレなし)
主人公・野島とその親友・大宮の友情と恋愛。青春時代のあらゆる魂の問題がこの2つのテーマをめぐって展開されるこの作品は、武者小路実篤の数多い作品の中でも、とりわけ多くの若い読者に愛読されてきた。身につまされる思いで読み進んだ経験のある読者も多いであろう永遠の青春小説。
作者
武者小路 実篤 むしゃのこうじ・さねあつ(1885年5月12日 – 1976年4月9日)
小説家、詩人。東京府東京市麹町区(東京都千代田区)生まれ。東京帝国大学哲学科社会学専修中退。学生時代は、学習院の同級生だった志賀直哉や木下利玄らと「十四日会」で創作活動を行った。1910年には志賀直哉、有島武郎、有島生馬らと文学雑誌『白樺』を創刊。後年には、芸術院会員に選出され、文化勲章を受章している。代表作に『友情』『お目出たき人』『愛と死』など。
友情(武者小路実篤)の刊行情報
- 『友情』新潮文庫、1947年
- 『友情』岩波文庫、2003年
友情(武者小路実篤)の登場人物
野島
本作の主人公。23歳の脚本家。仲田の妹・杉子に恋している。親友の大宮に大変深い友情を感じている。
大宮
野島の一番の親友。26歳の脚本家。密かに杉子に心を寄せるが、野島との友情を思い葛藤する。
杉子
仲田の妹。16歳。野島を生理的に嫌っており、大宮に思いを寄せる。
仲田
杉子の兄。法科に通う学生。野島の友達で、無遠慮にものが言える相手。まだ若い妹の結婚に反対しており、妹への結婚の申し込みに辟易している。
友情(武者小路実篤)の感想・解説・評価
友情と恋愛のどちらを選ぶかを迫られた主人公
この小説のテーマは、単純かつ永遠のテーマです。
それは「友情と恋愛のどちらを選ぶのか?」ということ。
親友同士である、野島と大宮は同じ人を好きになってしまいます。しかも大宮が杉子を好きになった理由は、親友である野島から彼女の魅力を語られたからなのでした。気になる人がいるんだと相談されたことをきっかけに、その相手のことを好きになってしまったら相手にはなかなか言えないですよね。本作でも、大宮は杉子を好きになったということを野島に打ち明けることができません。
その意味で『友情』はベタベタな恋愛小説ではありません。若い男女が出会って、お互いに好きになり愛を深めていく…という作品ではないんですね。読みやすい文章で語られるのは、野島・大宮・杉子の三角関係です。
おすすめポイントとしては、三角関係とはいえドロドロはしていないということでしょう。昼ドラみたいな感じじゃありません。ロマンチックな描写やシーンがとても多く、思わず微笑んだり、野島や大宮を応援したくなったりします。書かれたのはだいぶ昔の作品ですが、いつの時代も人を想う気持ちは変わりません。
読書感想文はラストについて
最後に、杉子は大宮に惚れて、彼について外国へ旅立ってしまいます。『友情』は野島の一人称視線でストーリーが展開するため、読者はショックを受けることになると思います。
読書感想文を書くとしたら、この結末について論じるのがいいでしょう。野島に共感し、大宮を「友情を軽視している人」だと断じてしまうのも読みとしてはアリです。
また、恋愛を重視し、野島をふがいない人だと考えて、大宮と杉子のその後について考えてみるのもいいでしょう。
作品を読み終わってから、結末の悲しさや寂しさについて考えると、この小説のタイトルが『友情』だということに思い至ります。だって『恋愛』でもなく、『青春』でもなく『友情』なんです。好きな人は親友を選んだけれども、その小説のタイトルが『友情』ってなんだかいいじゃないですか。昔の恋愛のことを引きずるわけでもなく、前を向いているような気になります。
でも、これは僕の感想です。「友情」と「恋愛」は永遠のテーマ。読書感想文を書くときに一度考えてみてもいいと思います。
合わせて読みたい本
三四郎
九州の田舎から東京へと出てきた小川三四郎が、都会の様々な人との交流から得るさまざまな経験、恋愛模様を描かれていた青春小説。
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もっと読む三四郎(夏目漱石)のあらすじ(ネタバレあり)・感想
友情(武者小路実篤)の評判・口コミ・レビュー
武者小路実篤『友情』読了。
— 尾崎すずほ (@ozaki_suzuho) 2019年12月7日
主人公である野島が想いを寄せる杉子への信仰や崇拝にも近いような理想化に顔を引きつらせていたが、後半になり杉子から見た野島への感情が一気に語られる場面が面白い。
「友情」武者小路実篤 読了
— 双子moon読書と創作 (@moon61226676) 2018年11月26日
~あの人は他人(ひと)を憎むと云うことは出来ない人だよ
そう云うのは人を愛することも出来ないと云う意味かい~
上篇は野島の独白で物語は進む、友情より愛情が色濃く恋は盲目とはまさにこのこと。
下篇は友情と恋愛の狭間に苦悩する大宮と愛情一本の杉子のラブレター。 pic.twitter.com/87TVP3yIaQ
武者小路実篤「友情」読了 約3時間
— 杏子 (@kyok_CD) 2020年2月2日
『傷ついても僕は僕だ。いつかは更に力強く起き上がるだろう』
主人公に上篇で感情移入させられたから下篇読み進めるの苦しかった(主人公が失恋するターン)
野島かっこいいよ😢
次は『世間知らず』読みます pic.twitter.com/LbFstzX92A
武者小路実篤/友情 #読了
— マキロンは本を読むよ (@disinfect_maki) 2019年8月16日
もてない男を書かせたらこの小説家は一級だ、とどこかで読みました。
上篇後半の3人の言動を見ていると共感性羞恥というか恥の記憶というか、色々なものに呑まれたような…つら…
とはいいつつ、多分近いうちに再読するだろうと思った一冊でした。ごちそうさまです。
#読了
— あおね (@AonekoJP) 2019年10月19日
『友情』武者小路実篤
友人の妹に恋する青年が主人公なのですが、相手の一挙手一投足ですぐに気分が浮き沈みする様子など、飾り気のない等身大の人間を描いており、共感しました。有名な作品なので結末は知っていたのですが、やはり最後は胸が苦しくなります。 pic.twitter.com/IMgntEPf9D