【書評】瓜子姫の夜・シンデレラの朝(諸星大二郎)のあらすじ(ネタバレなし)感想

タイトル
瓜子姫の夜・シンデレラの朝
著者
諸星大二郎
形式
漫画
ジャンル
メルヘン
執筆国
日本
版元
朝日新聞出版
受賞歴
第64回芸術選奨文部科学大臣賞

古今東西の童話や民話を諸星流にアレンジした、魅惑的なブラック・メルヘン!!

『瓜子姫とアマンジャク』、
『シンデレラの沓』、
『見るなの座敷』、
『悪魔の煤けた相棒』、
『竹青』の5編を収録。

諸星ファンにとっては絶対見逃せない一冊です。

本作は日本民話から「瓜子姫とアマンジャク」「見るなの座敷」、西洋から「シンデレラの沓」「悪魔の煤けた相棒」、そして中国から「竹青」の5編を集めた短編集だ。

作者ならではの作品集だが、どうしても長編に比べると少しあっさりとした印象を受ける。もちろん長編作品が大長編作品だからなのだが。長編の中でも全力をかけて描かれている「西遊妖猿伝」のような圧倒的な没入感はない。しかしその中でも「瓜子姫とアマンジャク」の文学性と「竹青」の物語性が印象に残った。

「瓜子姫とアマンジャク」は託宣を行う巫女と山奥のもののけや精霊たちの話だ。神たちの言葉を人間たちに届ける巫女は、成長したことによって神から言葉を受けとることができなくなっている。彼女はもののけたちの言葉を聞き、託宣を続けていくが、巫女にまつわる悲劇的な宿命に縛られ続けている。

巫女はラスト、そんな宿命や生活から逃れるように当てのない行動に出る。台詞がなく、一人きりになった彼女の表情を描いているラストページはとても文学的だ。この後巫女はどうなるのか?目的を果たすことはできるのか?彼女の表情はその答えを示しているような気がしてならない。

それと反対に「竹青」はその物語性が強調される。中国で魚容という名の貧書生が科挙に落第し、カラスになるという物語だ。太宰の小説だったか、漢文の時間に聊斎志異を読んだのかもう覚えてはいないけれど、僕はこの話を以前に読んだことがあった。しかしそれらモデルの話に、この諸星大二郎版とも言うべき漫画作品ほどのドラマ性も緊張感もない。

物語は竹青という女性との出会いから始まる。その竹青が遭遇した事件の話を聞いた魚容は事件の真相を探り始める。そんな話が舞台を変えながら、あるいはカラスと人間に変身しながら語られる。「竹青」の物語はだれることなく進行していき、見事なクライマックスを迎えるのだ。

どこかがちょっとずれたような可笑しい話と本気の民話テイストの作品の両方が楽しめる。諸星大二郎ならではの優れた短編集だった。

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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