中村文則初心者におすすめの小説とおすすめしない小説

突然ですが…

みなさんにはお気に入りの小説家はいますか?名前を見て本を買ったりするする小説家です。

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僕は何人かいます!村上春樹、大江健三郎、西加奈子…そして中村文則です

中村文則の小説の特長は「」そして、「人間の心理」です。心理描写の数々で人間の抱える闇を小説として表現していきます。

最初に読んだのは『銃』で、そこから順番に読んでいきました。中村さんはあとがきに「○番目の小説になります」と書いてくれていて、順番に読んでいきやすいんですよね。

それではおすすめです!逆に最初にこれを読むのはどうだろう…と思う本も挙げていきます。

中村文則おすすめ小説

昨日、私は拳銃を拾った。これ程美しいものを、他に知らない-。ある夜、死体の傍らに落ちていた拳銃。それを偶然手にした私は、次第にその”死と直結した機械”に魅せられていく。救いのない孤独と緊張。膨らみを続ける残酷な妄想。そしてその先には、驚愕の結末が待っていた…。非日常の闇へと嵌まり込んだ青年の心の軌跡を、確かな筆力で描く。若き芥川賞作家、堂々のデビュー作。

『銃』は新潮新人賞を受賞した中村文則のデビュー作です。河出文庫には短編の「火」も一緒に収められています。

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銃を拾った青年の危なっかしい心理状況を描いた小説です

この小説の良いところはその主人公の青年の心理描写ですね。「私は~と思った」という文章が並ぶ小説なのですが、危なっかしい心理状態の描写にとても引き込まれます

中村さんはフリーターの追い詰められた精神状態の中でこの小説を書いたとインタビューで答えていますが、その状態が反映されたのかもしれないですね。

昨年映画化もされています。中村さんも納得の出来でした。

遮光

愛する者を失った「私」は、他人が知れば驚愕するような、ある物を持ち歩いている。しかし、それは狂気なのか-新世代作家の鋭利な意識が陰影濃く描き上げた喪失と愛の物語。芥川賞候補作。

続いては2作目の『遮光』です。こちらは純文学若手三賞のうちのひとつ、野間文芸新人賞を受賞しました。(ちなみに上の『銃』と一緒に芥川賞の候補に入りましたが、残念ながら落選となってしまいました)

『遮光』の主人公は恋人の死を周囲に隠し、その指を持ち歩きます。

こう書くとただのやばいやつですが、妙な説得力があって、それほど抵抗感を持たずに読み進めることができます。

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僕は中村文則の小説で『遮光』が一番好きです

なにかを持ち歩くというテーマは同じですが、徹底的に孤独だった『銃』とは違い、『遮光』には他の人間との交流も描かれます。きっとこの小説は、嘘をついていくことでようやく世界とのバランスをとれる人間を描いたのだと思っています。

毎日がつらくて打ちのめされている方は、この小説から活力を貰えるのではないかと思います。

何もかも憂鬱な夜に

施設で育った刑務官の「僕」は、夫婦を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井はまだ語らない何かを隠している-。どこか自分に似た山井と接する中で、「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、大切な恩師とのやりとり、自分の中の混沌が描き出される。芥川賞作家が重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った長編小説。

実は僕はそうでもなかったのですが、この『何もかも憂鬱な夜に』を読んだ人の多くから「救われた」という声を聞いたことがあります。

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精神的にアップダウンが激しい人は引きずり込まれてしまうかもしれません

主人公の刑務官の「僕」は死刑囚となるであろう未決囚を担当しています。

そんな未決囚との交流の中から、「生」や「死」、自分とは何者なのかということを掘り下げていきます。

子どものころに辛い経験をした方、一度でもそのようなことを考えたことのある方におすすめです。響かない人には「ふーん」で素通りされてしまうかもしれませんが、響く人は涙を我慢しながら読み進めることになると思います。

掏摸〈スリ〉

『掏摸〈スリ〉』はその名の通り、天才スリ師を主人公にした小説です。大江健三郎が一人で選考を担当していた「大江健三郎賞」を受賞。副賞として海外にも紹介されました。

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中村文則の小説で”一番読みやすい”小説だと思います。”おすすめしやすい”小説でもあるかも

8作目ということもあり、中村さんの筆致がだいぶ安定してきたような気がします。この後の小説はミステリの手法を取り入れたこともあり、少しややこしい面もありますが、この小説はストレートにまとまっています。

そのうえで中村文則作品の共通テーマである『悪』も健在。”悪の象徴”ともいえる木崎という男により、主人公は窮地に陥ります。

中村文則の特長や「らしさ」が良く出た作品で、悩んだらまずこれ!だと思います。

反対に、中村文則初心者におすすめしない小説

中村文則の小説はどれもおすすめです。中村さんが手を抜いたり、片手間に小説を書いたりしないからですね。

別にどの小説から読んだって自由だとは思うのですが、ここでは僕が初めて読むにはおすすめしない作品を紹介します。

王国

表紙を見ると分かるのですが、『王国』はおすすめに入れた『掏摸〈スリ〉』の続編…というか姉妹編です。

中村さんは「独立した小説になっているので、『王国』を読んだからといって『掏摸〈スリ〉』を読む必要はない」ということを書いているんですが、やはり『掏摸〈スリ〉』→『王国』の順番で読んだ方がいいんじゃないかなと思います。

理由はそれだけです。中村さんはOKと言っているので気にしなくてもいいかとは思います。

世界の果て、A、惑いの森〜50ストーリーズ

『世界の果て』と『A』は短篇集、『惑いの森〜50ストーリーズ』はショートショート集です。

なんで短篇集が最初に読むのにおすすめしないかというと、「ちょっと変わっているから」なんです。

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中村さん本人が「こういうものを書くのかと驚かれたかもしれませんが」と書いています

つまりちょっと長編と趣向が違うんですよね。奇妙な感じの話が多い気がします。カフカとか、安部公房とか、星新一とかそういう「奇妙な感じ」です

最初に読むと「奇妙な感じ」がわかりませんし、ピンと来なくて他の作品に手を出さないのはもったいないなと思うので、おすすめはしません。

でも、もちろん短編が好きだというファンもいっぱいいます。ひとそれぞれではあるんですけどね…

おわり

以上中村文則を読んだことのないという方におすすめの小説と、おすすめしない小説でした。

この記事を書いたのは初のエッセイ本『自由思考』が発売されたことがきっかけです。

中村さんは決して明るい方ではないみたいですけど、「(性格が)暗いことで人に迷惑をかけないようにしている」というようなことを言っていたり、発言がおもしろい方です。

雑誌やテレビのインタビューは目にしてるんですが、エッセイはそんなに読んだことがないので早速買って読んでみたいです。

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