読んだことのない人向けに、十二国記シリーズ(小野不由美)のあらすじを紹介!読む順番のおすすめも

十二国記は、神仙や妖魔の存在する中国風の異世界を舞台にしたファンタジー小説シリーズ。

十二国記シリーズ(小野不由美)の作品情報

タイトル
十二国記シリーズ
著者
小野不由美
形式
小説
ジャンル
ファンタジー
ホラー
執筆国
日本
版元
講談社
初出
書き下ろし
刊行情報
講談社文庫→新潮文庫

十二国記シリーズ(小野不由美)のあらすじ(ネタバレなし)

我々の棲む世界と、地図上にない異世界〈十二国〉とを舞台に繰り広げられる、壮大なファンタジー。
二つの世界は、「蝕」と呼ばれる現象によってのみ、行き来することができる。〈十二国〉では、天意を受けた霊獣である麒麟が王を見出し、「誓約」を交わして玉座に据える。選ばれし王が国を治め、麒麟がそれを輔佐する。しかし、〈道〉を誤れば、その命は失われる。気候、慣習、政治体制などが異なるそれぞれの国を舞台に、懸命に生きる市井の民、政変に翻弄される王、理想に燃える官史などが、丹念に綴られている壮大な物語である。

新潮社公式サイトより

十二国記シリーズ作品一覧(小野不由美)

  • 0 魔性の子
  • 1 月の影 影の海 上下
  • 2 風の海 迷宮の岸
  • 3 東の海神 西の滄海
  • 4 風の万里 黎明の空 上下
  • 5 丕緒の鳥
  • 6 図南の翼
  • 7 華胥の幽夢
  • 8 黄昏の岸 暁の天
  • 白銀の墟 玄の月 第一巻~第四巻

作者

小野 不由美 おの・ふゆみ(1960年12月24日 – )

小説家。大分県中津市生まれ。大谷大学文学部仏教学科に入学し、京都大学推理小説研究会に所属する。在学中に部員仲間の綾辻行人と学生結婚。卒業後は大学院に進学するも、学資が尽き自主退学。目標がなくなったなかで、編集者から小説家になることを誘われ、1988年『バースデイ・イブは眠れない』でデビュー。代表作に十二国記シリーズがある。

十二国記シリーズ(小野不由美)の刊行情報

  • 講談社X文庫―ホワイトハート版、1992年~2001年
  • 講談社文庫版、2000年~2001年
  • おすすめ新潮文庫(完全版)、2012年~刊行中

十二国記シリーズ(小野不由美)の登場人物

広瀬(ひろせ)
『魔性の子』主人公。高里のクラスにやってきた教育実習生。同校の卒業生でもある。当時から人との関わりを嫌っており、化学準備室に入り浸っていた。

中嶋陽子(なかじま ようこ)
『月の影 影の海』主人公。女子高生。謎の男、ケイキとともに海に映る月の光をくぐりぬけ、地図にない国──巧国に辿り着く。

十二国記シリーズ(小野不由美)のあらすじを簡単に紹介します!

魔性の子

どこにも、僕のいる場所はない──教育実習のため母校に戻った広瀬は、高里という生徒が気に掛かる。周囲に馴染まぬ姿が過ぎし日の自分に重なった。彼を虐(いじ)めた者が不慮の事故に遭うため、「高里は祟(たた)る」と恐れられていたが、彼を取り巻く謎は、“神隠し”を体験したことに関わっているのか。広瀬が庇おうとするなか、更なる惨劇が……。心に潜む暗部が繙(ひもと)かれる、「十二国記」戦慄の序章。

異世界が現実世界の人間社会に干渉したときの恐怖を、現実世界側からの視点で描くホラー色の濃い物語です。この異世界が、のちに『十二国記』シリーズの世界として書かれることになりました。

本作の舞台は現実世界であり、十二国記の舞台である異世界の様子は描かれません。ある意味では外伝的作品ですし、十二国記の世界観が初めて登場した記念碑的作品ともいえます。

登場人物のひとり高里はのちのシリーズに再登場します。

月の影 影の海

「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。シリーズ本編となる衝撃の第一作。

作者・小野不由美は『魔性の子』を執筆するにあたって、異世界の設定・地図・年表など世界観を練り上げていました。それらは『魔性の子』では明かされることはありませんでしたが、その設定が生かされ、ファンタジー小説が執筆されることになります。それが、のちに十二国記シリーズになる小説群なのです。

『月の影 影の海』はシリーズ第1作。女子高生の陽子のもとに、ケイキと名乗る男が謎の現れ、突然跪くのです。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去られてしまいます。

そして前作では謎のままだった十二国記の世界での物語がスタートします。男とはぐれ一人さまよう陽子は、出会う者に裏切られ、異形の獣には襲われるなど冒険を余儀なくされます。

なぜここへ来ることになったのか、自分は戦わねばならないのか。陽子は疑問を抱きながら、元の世界へ帰還すべく旅を続けていきます。そして雁国という国の王と会うことになった陽子に真相が語られていくことに。

風の海 迷宮の岸

幼(いとけな)き麒麟に迫り来る決断の時──神獣である麒麟が王を選び玉座に据える十二国。その一つ戴国(たいこく)麒麟の泰麒(たいき)は、天地を揺るがす〈蝕(しょく)〉で蓬莱(ほうらい)に流され、人の子として育った。十年の時を経て故国(くに)へと戻されるも、役割を理解できぬ麒麟の葛藤が始まる。我こそはと名乗りを挙げる者たちを前に、この国の命運を担うべき「王」を選ぶことはできるのだろうか。

前作の陽子から舞台は移り、2作目の主人公は「麒麟」。麒麟といっても、あの首の長いキリンではありません。本作で麒麟とは、本性は獣ながら人と獣の二つの姿を持つ最高位の神獣、のことです。王気を頼りに自らの主を探し、王を選ぶという役割を持っています。

本作では、そんな麒麟の立場や大変さ、心境といったものが描かれます。1作目の『月の影 影の海』ではなく『魔性の子』の続編になります。「王選び」などシリーズの世界観を知ることができる一冊です。

東の海神 西の滄海

国が欲しいか。ならば一国をやる。延王(えんおう)尚隆(しょうりゅう)と延麒(えんき)六太(ろくた)が誓約を交わし、雁国に新王が即位して二十年。先王の圧政で荒廃した国は平穏を取り戻しつつある。そんな折、尚隆の政策に異を唱える者が、六太を拉致し謀反を起こす。望みは国家の平和か玉座の簒奪(さんだつ)か──二人の男の理想は、はたしてどちらが民を安寧(やすらぎ)に導くのか。そして、血の穢(けが)れを忌み嫌う麒麟を巻き込んだ争乱の行方は。

十二国の中でも屈指の国力を持つとされる雁州国。その雁州国の礎をつくった、延王尚隆と延麒六太を描いていきます。

王とは何か、国とは何か。ただ平和を願って政治を行うだけでは豊かな国にはならないという難しさを表現した作品だと思います。十二国記の世界での王の姿を見ることになります。

風の万里 黎明の空

人は、自分の悲しみのために涙する。陽子は、慶国の玉座に就きながらも役割を果たせず、女王ゆえ信頼を得られぬ己に苦悩していた。祥瓊(しょうけい)は、芳国(ほうこく)国王である父が簒奪者(さんだつしゃ)に殺され、平穏な暮らしを失くし哭(な)いていた。そして鈴は、蓬莱(ほうらい)から辿り着いた才国(さいこく)で、苦行を強いられ泣いていた。それぞれの苦難(くるしみ)を負う少女たちは、葛藤と嫉妬と羨望を抱きながらも幸福(しあわせ)を信じて歩き出すのだが──。

今作の主人公は、第1作の主人公・陽子。女子高生だった陽子もすっかり十二国記の世界の住人になっています。今作の舞台は第1作から1年後となります。

十二国記シリーズ、読む順番のおすすめは?

作品の時系列はこんな感じ

シリーズですが、1作目の後に2作目、その後に3作目といったように順番にストーリーが展開されていくわけではありません。様々な時代や国家を行ったり来たりしながら物語が展開されていきます。

『東の海神 西の滄海』…約500年前
「漂舶」…約400年前
『図南の翼』…約90年前
「華胥」…約12年前
『風の海 迷宮の岸』…約5年前
「冬栄」…「風の海 迷宮の岸」の直後
「風信」
『月の影 影の海』…ストーリー開始
『丕緒の鳥』…「月の影 影の海」の直後
「書簡』
『風の万里 黎明の空』…約1年後
「乗月」…「風の万里 黎明の空」の直後
「帰山」
「落照の獄」
『黄昏の岸 曉の天』…約2年後
『白銀の墟 玄の月』…「黄昏の岸 曉の天」の直後

読む順番のおすすめは新潮文庫の数字順

十二国記シリーズは様々な時代・国家を舞台にした物語です。時代も前後しますし、登場する国家も様々。時系列を調べてその順番に読んでもいいですし、乱暴に言えばどこから読んでも楽しめる作品だと思います。

その中でもおすすめは「新潮文庫の数字順」です。以前は講談社から発行されていた十二国記ですが、現在は新潮文庫から刊行中。完全版としてまとめられる際に、わかりやすいようにと数字が付けられました。

0から1、2…と順番通りに読んでいくのがおすすめです。どうしてもすぐに十二国記の世界に触れてみたいという方は、1作目の『月の影 影の海』から読み、その後は0、2、3‥‥と読んでいきましょう。

十二国記シリーズ(小野不由美)の感想・解説・評価

いわば”中国風ファンタジー”

“ファンタジー”と言われてどのような物語を想像しますか?

『ハリーポッター』?『指輪物語』?十二国記はそういったヨーロッパを舞台にした物語とは少し違う、いわば”中国風ファンタジー”とでもいうべきシリーズです。

政治制度は古代中国風ですし、登場する国名や人名も中国風です。その世界を舞台に、様々な年代・国家・人物の様子が描かれていきます。といっても中国を舞台にした大河小説ではありません。たとえば、卵から人が生まれますし、人の言葉を話す獣も登場します。

本作の大きな魅力は複雑に構築された世界観と成長する登場人物の姿を見られることでしょう。本当の友との出会い、人の心の醜さと美しさ、出会いと裏切り…ファンタジーが苦手な人にもおすすめできる作品です。ファンタジーといっても剣や魔法を武器にドラゴンや魔王と戦う小説ばかりではないのです。

この記事を書いた人
右手

平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望。高校時代からブログを始め、一時中断後、読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログを再開。普段は本を読みつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、囲碁、株式投資、マジック:ザ・ギャザリングも好きです。
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