少女には向かない職業(桜庭一樹)のあらすじ(ネタバレなし)・感想

中学2年生の1年間で、あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した。これは、ふたりの少女の、血の噴き出すような闘いの記録。痛切なストーリーが胸を抉る衝撃作。

少女には向かない職業の作品情報

タイトル
少女には向かない職業
著者
桜庭一樹
形式
小説
ジャンル
ミステリ
サスペンス
執筆国
日本
版元
東京創元社
初出
不明
刊行情報
創元推理文庫

少女には向かない職業のあらすじ(ネタバレなし)

あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した…あたしはもうだめ。ぜんぜんだめ。少女の魂は殺人に向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。だけどあの夏はたまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけだったから。これは、ふたりの少女の凄絶な“闘い”の記録。『赤朽葉家の伝説』の俊英が、過酷な運命に翻弄される少女の姿を鮮烈に描いて話題を呼んだ傑作。

作者

桜庭 一樹 さくらば・かずき(1971年7月26日 – )

小説家。島根県生まれ、鳥取県米子市出身。1999年「夜空に、満点の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2008年に『私の男』で直木賞を受賞。代表作に『GOSICK -ゴシック-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『赤朽葉家の伝説』などがある。

少女には向かない職業の刊行情報

  • 『少女には向かない職業』東京創元社ミステリ・フロンティア、2005年9月
  • 『少女には向かない職業』創元推理文庫、2007年12月

少女には向かない職業の登場人物

大西 葵(おおにし あおい)
13歳。中学2年生。クラスでは明るく友達も多いが、その反面家庭での悩みや苦しみを、誰にも打ち明けられず抱え込んでいる。ひょんなことから静香と会話をするようになり、やがて冗談半分に、2人で義父を殺す計画を立てる。

宮乃下 静香(みやのした しずか)
葵と同じクラスの図書委員。おかっぱの黒髪、メタルフレームの眼鏡と目立たない格好。読書が趣味で、リュックサックには本を数冊入れて持ち歩いている。

田中 颯太(たなか そうた)
葵の唯一の男友達であり、幼馴染。ゲームが好き。家庭の事情が葵と似ているため、葵のことをよく気にかけている。

宮乃下 浩一郎(みやのした こういちろう)
静香の従兄。静香を祖父の遺産目当てのために利用しており、それに気付いた静香が葵に彼を一緒に殺してほしいと持ちかける。

少女には向かない職業の感想・解説・評価

少女の不安定さと息苦しさ

中学2年生の1年間で、あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した。

本作はそんな一文で始まります。主人公のこの少女は13歳でありながら人を二人も殺したというのです。一人目の犠牲者は少女の父親です。主人公は家庭にトラブルを抱えており、ミステリアスなクラスメートと協力してトラブルの元である父親を手にかけます。その協力の代償として2つ目の殺人にかかわることになるのです。

その少女の父親は無職であり、アルコール中毒で酒を手放さないなど身勝手な行動が目立つ人物です。母親は、親であるより女であることを優先しており、主人公は母からは重荷に思われています。主人公はそのような崩壊寸前の家庭で育ってきました。

そして、主人公は殺人を恐れ、恐怖に戦きながらも、友人の協力を得て結果的に父親を殺すことになります。

壮絶なストーリーですが、文章のライトな雰囲気も合わさってそれほどシリアスな印象は受けません。

家庭にトラブルはあるが、友人たちには知られたくない。しかし、閉塞感と希望の見えない現状に多くの不満を覚えている。そのような思春期特有の感情は誰でも持ちうるものです。本作のもっとも優れている点はその心理描写がとても自然なこと。10代前半の登場人物たちの心境を見事に描いています。

壮絶なストーリーの主人公は普通の女の子です。周囲にSOSを上手く発信することができないだけなのです。そんな彼女たちが一歩を踏み外してしまう。その行動には共感することができなくても、彼女たちの心理には深く共感できると思います。

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少女には向かない職業の評判・口コミ・レビュー

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