99999 ナインズ(デイヴィッド・ベニオフ)のあらすじ(ネタバレなし)・感想

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走行距離計の数字が回転する瞬間を楽しみに待つドラマーと、そんな彼を捨ててゼロがいくつも並ぶ契約書にサインする女性歌手の哀楽を描く傑作短編。

99999 ナインズ(デイヴィッド・ベニオフ)の作品情報

タイトル
99999 ナインズ
著者
デイヴィッド・ベニオフ
形式
小説
ジャンル
ヒューマンドラマ
執筆国
アメリカ
版元
ヴァイキングプレス
初出
不明
刊行情報
新潮文庫、2006年5月1日
翻訳者
田口俊樹

99999 ナインズ(デイヴィッド・ベニオフ)のあらすじ(ネタバレなし)

99999 ナインズ(デイヴィッド・ベニオフ)の目次

  • 99999(ナインズ)
  • 悪魔がオレホヴォにやってくる
  • 獣化妄想
  • 幸せの裸足の少女
  • 分・解
  • ノーの庭
  • ネヴァーシンク貯水池
  • 幸運の排泄物

作者

デイヴィッド・ベニオフ(1970年9月25日 – )

作家、脚本家。アメリカ合衆国・ニューヨーク生まれ。ダートマス大学を卒業後、アイルランドに留学して、ダブリン大学の大学院でイギリス文学、アイルランド文学を専攻。邦訳に『25時』『99999(ナインズ)』がある。映画の脚本家としても著名で、自作『25時』の映画版やブラッド・ピット主演「トロイ」を手がけた

99999 ナインズ(デイヴィッド・ベニオフ)の刊行情報

99999 ナインズ(デイヴィッド・ベニオフ)の登場人物

タバシュニク
主人公。レコード会社のスカウト。

モリー・ミンクス
バンド・テインツのボーカル。「才能がある」と、タバシュニクにスカウトされる。サッドジョーのガールフレンド。

サッドジョー
バンド・テインツのドラム。テインツを結成する。

99999 ナインズ(デイヴィッド・ベニオフ)の感想・評価

ぼんやりとしたあきらめ

表題作「99999(ナインズ)」で描かれるのは同じバンドに所属する男のドラマーと、女性ボーカルの話だ。主人公・タバシュニクはボーカル・モリ―になにかを感じ、彼女をスカウトする。しかしタバシュニクが必要とするのはバンドメンバー全員ではなく、ボーカルだけなのだ…

これだけ書くといかにもありそうな話だと思わせられる。スカウトの目に留まったメンバーが1人だけデビューでき、それ以外のメンバーはお払い箱となる。アメリカで書かれた小説だが、日本でも同様のケースはきっとあるだろう。

本作の中でもっとも優れたラストシーンでは、モリ―に拒絶されたサッドジョーが諦めたように車に乗り込み走り去る。その名の通り「Sad Joe(悲しいジョー)」になってしまうのだ。そんな”ぼんやりとしたあきらめ”が見事に作品全体を覆っている。

読者は主人公・タバシュニクの視点で物語を読んでいくが、そんな彼は「現実を受け入れている人物」に他ならない。「親の負担を考え歯の矯正を断る(アメリカでは矯正器具が日本のランドセルのように子どもの象徴になるほど一般化している)」「バンドの一部のメンバーをスカウトしても元のさやに戻ることは一度もなかった」など、ドライとも言われかねない一面を持っている。

だが、このような感情はきっと多くの人が抱いたことがあるだろう。仕事で大企業に負けたとき、部活動で強豪校に負けたとき、自分の目標とする場所に合格できなかったとき…

そんなとき僕らは敗北感というより、あきらめに似た虚しさを覚える。デイヴィッド・ベニオフが描いたのは成功する女性と、ボーカル&ガールフレンドを奪われた男性ではなかった。そんな”ぼんやりとしたあきらめ”を抱く人々の姿だったのだ。そしてこの短篇集に収められた作品にはどれもその雰囲気を抱えている。

合わせて読みたい本

卵をめぐる祖父の戦争

「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」作家のデイヴィッドは、祖父レフの戦時中の体験を取材していた。ナチス包囲下のレニングラードに暮らしていた十七歳のレフは、軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された。饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索を始めることになるが、飢餓のさなか、一体どこに卵が?逆境に抗って逞しく生きる若者達の友情と冒険を描く、傑作長篇。

99999 ナインズ(デイヴィッド・ベニオフ)の評判・口コミ・レビュー

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