海獣の子供(五十嵐大介)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

海獣の子供(五十嵐大介)の作品情報

タイトル
海獣の子供
著者
五十嵐大介
形式
漫画
ジャンル
冒険
ファンタジー
執筆国
日本
版元
小学館
初出
月刊IKKI、2006年2月号~2011年11月号
刊行情報
IKKI COMIX、全5巻
受賞歴
第38回日本漫画家協会賞優秀賞
第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞
第12回手塚治虫文化賞候補

海獣の子供(五十嵐大介)のあらすじ(ネタバレなし)

名手・五十嵐大介の初となる長編作品。自然世界への畏敬を下地に“14歳の少女”と“ジュゴンに育てられた二人の兄弟”とのひと夏の出逢いを、圧倒的な画力とミステリアスなストーリー展開によってエンターテインメントへと昇華させた名作。

アニメ版関連動画

アニメーション映画『海獣の子供』2019年6月7日

作者

五十嵐大介(1969年4月2日 – )

漫画家。埼玉県熊谷市出身。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。1993年に『月刊アフタヌーン』にてデビュー。高い画力と繊細な描写で自然世界を描く。2004年『魔女』により文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を、2009年『海獣の子供』により第38回日本漫画家協会賞優秀賞、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。
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海獣の子供(五十嵐大介)の刊行情報

  • 『海獣の子供』IKKI COMIX、全5巻

海獣の子供(五十嵐大介)の登場人物

安海琉花
主人公。うまく気持ちを言葉にできず、学校でトラブルを抱えている。母と2人暮らし。


琉花が夜の東京湾で出会った不思議な少年。泳ぎがとてもうまく、魚たちと交感する能力がある。


海の双子の「兄」。海とは異なる白い肌を持ち、乾燥に極端に弱く陸にずっといることを苦手としている。

ジム・キューザック
水族館に勤務している海洋学者。若いころ、空によく似た「海の子供」を自分の過失で死なせてしまったことが原因で、彼らの謎を調査している。

海獣の子供(五十嵐大介)の感想・評価

壮大な妊娠と出産の物語

2巻でアングラードは初登場した際、インドネシアの影絵劇を語る。そして空にはこうも話すのだ。

“宇宙支配神が大海に精液をこぼすと巨大な羅刹になった”
(引用者中略)
それで…思いついたんだ。「宇宙支配神の精液」って隕石の事なんじゃないか…

『海獣の子供』2巻より

五十嵐大介の美麗な絵で展開される『海獣の子供』はストーリーの全貌をはっきりと台詞で説明してくれるわけではない。1巻でジムが「流花は…思っている事の半分でも、伝えられたためしがあるかい?」と話をしているが、いかにも本作の主題を伝えているように感じられる。本作は言語では完全に表現しえないことを伝えようとしている試みだとも受け取れるのだ。

本作はとてつもなく大きな世界観を持った作品だ。人間の生死、宇宙、そして海と膨大なスケールを抱えている。

そんな作品の中で隕石を託された流花は、ジムが「産み親」と歌う大海に旅立っていく。本作において隕石が「宇宙支配神の精液」の事ならば、流花が隕石を運ぶことは「精子と卵子の出会い」を意味する行為に他ならない。

そう考えると、作中に空や海のような「海の子供」の死の描写が複数回出てくることも頷ける。卵子が待つ場所まで最初にたどり着いた1匹のほかの何億匹は死にゆく定めなのだ。

5巻で流花は海と一緒に海中を泳ぎ回り「まるで…宇宙だ…」という感想を抱く。その後「夏休みの始めに出会った人たちは秋風の吹く頃にはみんないなくなっていた。」わけだが、流花は母・加奈子と一緒に海に再会したのではないか。5巻のデデの会話を聞くとそう思わされる。

美麗な絵で展開されるストーリー

先ほど、ジムの「流花は…思っている事の半分でも、伝えられたためしがあるかい?」という言葉を紹介したが、まさしく本作は「絵」で展開されるストーリーだ。

1巻では会話劇でストーリーが進行するが、物語が動いてくると台詞は姿を消し、海中の描写に多くのページが割かれることになる。そこで描かれるのは多くの生物や魚が生きている海だ。その海は“五十嵐大介ワールド”とでも呼ぶしかないような美麗で壮大なものである。

合わせて読みたい本

リトル・フォレスト

魔女

魔女をテーマとした連作集。表題作ではトルコを舞台に、かつての想いを成就しようとする魔女の姿が描かれます。作中でストーリーや関係性を詳細に説明してくれるわけではないため、読者の想像に委ねられている部分も多いです。

独特の筆致で描かれる、未開の大自然、家々が果てしなく連なる街並み、呪術の描写が圧倒的でその迫力に飲まれてしまいます。
もっと読む【書評】魔女(五十嵐大介)のあらすじ(ネタバレなし)と感想

海獣の子供(五十嵐大介)の評判・口コミ・レビュー

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