蝶々の纏足(山田詠美)のあらすじ・感想

蝶々の纏足の作品情報

タイトル
蝶々の纏足
著者
山田詠美
形式
小説
ジャンル
恋愛
青春
執筆国
日本
版元
河出書房新社
初出
文藝、1986年文藝賞特別号
刊行情報
新潮文庫
受賞歴
第96回芥川賞候補

蝶々の纏足のあらすじ(ネタバレなし)

私の心を束縛し、私の自由を許さない美しき親友のえり子。彼女の支配から逃れるため、私は麦生を愛し、彼の肉体を知ることで、少女期からの飛翔を遂げる「蝶々の纏足」。教室という牢獄の中で、生贄となり苛めをうける転校生の少女。少女は自分を辱めた同級生を、心の中でひとりずつ処刑し葬っていく「風葬の教室」。少女が女へと変身してゆく思春期の感性をリリカルに描いた3編を収録。

蝶々の纏足の目次

  • 蝶々の纏足
  • 風葬の教室
  • こぎつねこん

作者

山田 詠美(1959年2月8日 – )

小説家、漫画家。東京都板橋区出身。明治大学文学部日本文学科中退。漫研OBのいしかわじゅんががきっかけで、『漫画エロジェニカ』にて山田双葉名義で漫画家としてデビュー。1985年には『ベッドタイムアイズ』で文藝賞を受賞しデビュー、芥川賞の候補となる。1987年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞を受賞。

蝶々の纏足の刊行情報

  • 『蝶々の纏足』河出書房新社、1987年1月
  • 蝶々の纏足』河出文庫、1987年8月
  • 『蝶々の纏足・風葬の教室』新潮文庫、1997年3月

蝶々の纏足の登場人物

瞳美(私)
主人公。五歳のときに引っ越し、同い年のえり子と出会う。

えり子
一見我が儘で高飛車なようにも見える、強烈な支配欲を持つ少女。

蝶々の纏足の感想・解説・評価

この先の内容はネタバレを含んでいます。閲覧には注意してください。

二人の少女の内面を描いた青春小説

十六にして、私、人生を知り尽くした。そんな筈、ないけど、とにかくそう思いこんだ。

この小説、そんな文で始まります。

主人公の瞳美(私)は、五歳のときに引っ越します。そこで、同い年のえり子と出会います。彼女は、一見我が儘というか高飛車な風にも見える、そして強烈な支配欲を持つ少女だったのです。支配欲という言葉は不適当かも知れません。とにかく周りのものをすべて自分の引き立て役にしているように、瞳美は思います。

瞳美はいくら幼いとはいっても、そんなえり子に好感を持つはずもなく、小学校に通い始めるころから彼女のことを醒めた目で見るようになります。

確かに、えり子の言葉にはなかなか厳しいものが多いです。えり子はわざわざ仲の良さを確かめるような発言をしたりします。思春期の多感な時期にストレートな言葉を向けられると、反発を覚えることもあるでしょう。

その後、二人は同じ高校に進学します。えり子が瞳美と仲良くしたいと思ったため(悪く言うとそばに置いておきたいと思ったから)の選択なのでしょう。

そこで、瞳美はえり子よりも先に彼をつくります。これは瞳美が絶対しようとこだわっていた点でした。えり子は「抜け駆けはしないで」といったようなことを伝えるのですが、これに反抗的な瞳美は聞き入れず、えり子を失望させ、そして二人の仲は静かにしかし決定的に決別するのでした。

蛇と小鳥、どっちがどっち?

二人が家の前を流れる小川のほとりで遊んでいるとき、蛇の死骸が流れてきました。小鳥を飲み込もうとして、失敗したらしく、蛇の腹は膨らみそして割け、嘴と羽が覗いています。それを見て、瞳美はこう呟きます

「大き過ぎるものを呑み込もうとするからよ」

これは、瞳美はえり子の引き立て役、側に置いておくだけの存在としては不適切で、二人は仲違いしてしまった、と読むのでしょうか。

しかし、ときに残酷な一面を見せつつも、瞳美を庇うような素振りも見せていたえり子。彼女を「蛇」に喩えるのかという疑問も浮かびます。このシーンは、瞳美が離れていく中で、えり子の淋しさを描いていると読むのかも知れません。

最後のシーン、二人の仲の良さを示しているものだとも読めるのではないでしょうか。

合わせて読みたい本

ぼくは勉強ができない

「なんで勉強しなきゃならないんだよ」と考える”ませた”秀美君を主人公とする青春小説です。
ぼくは勉強ができない(山田詠美)のあらすじ(ネタバレなし)・感想。読書感想文におすすめ!

蝶々の纏足の評判・口コミ・レビュー

タイトルとURLをコピーしました