楡の木陰の欲望(ユージン・オニール)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

十九世紀半ばのニュー・イングランド。ある農家の上におおいかぶさっている不吉な楡の木の下で、偏狭な老父を中心に、先妻の息子と淫蕩な後妻とが展開する愛欲絵巻はさながらトルストイの『闇の力』を思わせるほどの傑作で、従来のアメリカ戯曲には見られない深刻さを持つ作品に仕上がっている。

楡の木陰の欲望(ユージン・オニール)の作品情報

タイトル
楡の木陰の欲望
著者
ユージン・オニール
形式
戯曲
ジャンル
悲劇
執筆国
アメリカ
版元
不明
執筆年
不明
初出
初演、1924年
刊行情報
岩波文庫、1951年
翻訳者
井上宗次

楡の木陰の欲望(ユージン・オニール)のあらすじ(ネタバレなし)

作者

ユージン・グラッドストーン・オニール(1888年10月16日 – 1953年11月27日)

アイルランド系アメリカ人。劇作家。アメリカの近代演劇を築いた劇作家として知られる。1936年、ノーベル文学賞受賞。
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楡の木陰の欲望(ユージン・オニール)の刊行情報

  • 和田利政、森永義一訳『楡の木蔭』世界近代劇叢書 第5輯、金星堂、1927年
  • 加来章子編『楡の下の慾望』文芸春秋社出版部、1927年
  • おすすめ井上宗次訳『楡の木陰の欲望』岩波文庫、1951年
  • 菅原卓訳『楡の樹蔭の慾望』現代世界戯曲選集 第9、白水社、1954年
  • 清野暢一郎訳『楡の木蔭の欲望』角川文庫、1958年
  • 菅泰男訳『楡の木の下の欲望』オニール名作集、白水社、1975年
  • 西田実訳『椰子の木陰の欲望』世界文学全集 8、講談社、1980年

楡の木陰の欲望(ユージン・オニール)の登場人物

エビン・キャボット
25歳。イーフレイムの三男。背が高くたくましい体格。

シミアンとピーター
エビンの2人の兄。裕福と自由を求めて西部の金鉱へ向かう。

イーフレイム・キャボット
エビンたち3人の父親。75歳。背が高くやせている。

アビー・パトナム
35歳。イーフレイムが後妻として家に連れてくる女性。小太りで健康。

楡の木陰の欲望(ユージン・オニール)の感想・解説・評価

執着し続けた人々の物語

本作の主要登場人物は3人だ。母の遺産と考え農場の所有を望むエビン。安定した暮らしを求め農場を手に入れようとするアビー。すべてが自分のものだと信じて疑わないイーフレイム。

そんなエビン、アビー、イーフレイムの3人には共通点がある。それは農場に執着し続けているということだ。それは本作のタイトルにあるように”欲望”に他ならないが、3人が3人とも満足のいく形で農場を手に入れることは出来ずに物語は終幕を迎える。

物語のラスト、この悲劇の舞台となった農場を保安官が羨ましがる場面がなんとも皮肉めいている。

すばらしい畑だ、まったく。これがわしのものならなぁ!

井上宗次訳『楡の木陰の欲望』岩波文庫、第40刷

三兄弟は貧しいながらも農場で暮らしていたが、2人の兄が“欲望”から農場を離れ、エビンとアビーは“欲望”から人殺しとなり、イーフレイムは“欲望”からすでに若い働き手のいない農場にただ一人残され老い先短い身の上に途方に暮れる。救いのない悲劇だが、いつの時代も人は欲望ゆえに破滅してしまうのだろうか。

合わせて読みたい本

欲望という名の電車

同じくアメリカの戯曲から。

ニューオーリアンズの下町フレンチ・クォーターにブランチという女性がやって来るところから物語は始まります。南部の大農園の娘から没落し、妹ステラのアパートに身を寄せることになりました。

ブランチは新生活に望みを繋いでいましたが、次第に彼女の過去が明らかになるにつれ、生活に陰りも見えてきます。

楡の木陰の欲望(ユージン・オニール)の評判・口コミ・レビュー

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