【おすすめ】堀江敏幸の全作品を一覧であらすじを紹介します

堀江 敏幸 ほりえ・としゆき(1964年1月3日 – )

小説家、フランス文学者。早稲田大学教授。 岐阜県多治見市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科フランス文学専攻博士課程単位取得退学。1994年より、フランス留学経験を随筆風に綴った『郊外へ』を連載し、小説家デビュー。 2001年『熊の敷石』で第124回芥川賞受賞。

おすすめ作品ランキング

長い記事なので、先におすすめランキングを紹介します!

  • 1位:雪沼とその周辺
  • 2位:その姿の消し方
  • 3位:河岸忘日抄

堀江敏幸の作品年表リスト

『郊外へ』1995年

パリを一歩離れるといつも新しい発見があった。郊外を愛した写真家や作家に寄り添いながら、ときに幸福な夢想に身をゆだね、ときに苦い思索にふける。三島賞作家鮮烈のデビュー作。

『おぱらばん』1998年

とりすました石畳の都会から隔たった郊外の街に暮らす私。自らもマイノリティとして日を過ごす傍らで、想いは、時代に忘れられた文学への愛惜の情とゆるやかにむすびつきながら、自由にめぐる。ネイティブのフランス人が冷笑する中国移民の紋切型の言い回しを通じ、愛すべき卓球名人の肖像を描いた表題作をはじめ、15篇を収録した新しいエッセイ/純文学のかたち。三島賞受賞作。

『子午線を求めて』2000年

フランスで長らく経度の基準とされてきた、パリ子午線。敬愛する詩人ジャック・レダの文章に導かれて、その痕跡をたどりながら、「私」は街をさまよい歩く。パリの郊外が抱え込む闇を抉り出したセリーヌやロマン・ノワールの書き手たちへの眼差し。断章で鮮やかに綴るエルヴェ・ギベールの肖像……。著者の作家としての原点を映し出す、初期傑作散文集。

『書かれる手』2000年

『熊の敷石』2001年

「なんとなく」という感覚に支えられた違和と理解。そんな人とのつながりはあるのだろうか。 フランス滞在中、旧友ヤンを田舎に訪ねた私が出会ったのは、友につらなるユダヤ人の歴史と経験、そして家主の女性と目の見えない幼い息子だった。 芥川賞受賞の表題作をはじめ、人生の真実を静かに照らしだす作品集。

『回送電車』2001年

評論とエッセイ、小説。その「はざま」にある何かを求め、文学の諸領域を軽やかに横断する――著者の本領が発揮された、軽やかでゆるやかな散文集。

『いつか王子駅で』 2001年

背中に昇り龍を背負う印鑑職人の正吉さんと、偶然に知り合った時間給講師の私。大切な人に印鑑を届けるといったきり姿を消した正吉さんと、私が最後に言葉を交わした居酒屋には、土産のカステラの箱が置き忘れたままになっていた……。古書、童話、そして昭和の名馬たち。時のはざまに埋もれた愛すべき光景を回想しながら、路面電車の走る下町の生活を情感込めて描く長編小説。

『ゼラニウム』2002年

『雪沼とその周辺』2003年

小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。

本作の舞台は寂れた田舎町・雪沼です。人々が過労を極めた一番目の人生を終えた後、二番目の人生の舞台として選んだ、自然と人々の優しさに恵まれた人情味ある町です。

本作の中ではこれといった事件が起きるわけではありません。日常の一ページといった風景や生活の話が展開されます。静かで穏やかで、あえて言えば地味だとも言えます。ですが「何を言いたいのか分からない」、「意味不明」、「だらだらと続いて全くおもしろくない」という感想は持ちませんでした。

ただ日常の生活の様子を楽しめるというのが、読者からすれば嬉しく、同時に作者の筆力を感じさせるものとなっています。
もっと読む雪沼とその周辺(堀江敏幸)のあらすじ(ネタバレなし)・書評・感想。読書感想文にもおすすめ!

『一階でも二階でもない夜 回送電車2』2004年

『河岸忘日抄』2005年

ためらいつづけることの、何という贅沢──。ひとりの老人の世話で、異国のとある河岸に繋留された船に住むことになった「彼」は、古い家具とレコードが整然と並ぶリビングを珈琲の香りで満たしながら、本を読み、時折訪れる郵便配達夫と語らう。ゆるやかに流れる時間のなかで、日を忘れるために。動かぬ船内で言葉を紡ぎつつ、なおどこかへの移動を試みる傑作長編小説。

ひとりの老人の世話で、異国のとある河岸に繋留された船に住むことになった「彼」は、古い家具とレコードが整然と並ぶリビングを珈琲の香りで満たしながら、本を読み、レコードを楽しむ。

緩やかな生活の描写が心地よい小説です。作者の素晴らしい文章を楽しみたいのならこちらがおすすめです。

『めぐらし屋』2007年

長く疎遠だった父、その遺品の整理中に見つけた大学ノートには、表紙に大きく「めぐらし屋」と書かれていた。困惑する娘の蕗子さんに、折も折、当のめぐらし屋を依頼する見知らぬ客からの電話が舞い込む。そして、父の独居暮らしに淡い輪郭が与えられるたび、蕗子さんの遠い記憶は小さくさざめくのだった。地方都市を舞台に、温かで端正な筆致で描く、飾りない人びとの日常光景。

『未見坂』2008年

山肌に沿い立ち並ぶ鉄塔の列、かつて移動スーパーだった裏庭のボンネットバス、ゆるやかに見え実は急な未見坂の長い道路……。時の流れのなか、小さな便利と老いの寂しさをともに受けいれながら、尾名川流域で同じ風景を眺めて暮らす住民たちのそれぞれの日常。そこに、肉親との不意の離別に揺れる少年や女性の心情を重ねて映し出す、名作『雪沼とその周辺』に連なる短編小説集。

『彼女のいる背表紙』2009年

背表紙のむこうに、彼女がいる。
逆を言えば、そこにしかいない。
すぐ近くなのに遠く、
遠いのにひどく身近な友人のように。
書物のなかの「彼女」と書き手の生きた道すじを静謐な筆致で重ね綴る。
『クロワッサン』誌で好評を博した、上質な随筆集。

『正弦曲線』2009年

サイン、コサイン、タンジェント。この秘密の呪文で始動する、規則正しい振幅のように――暮らしはめぐる。思いもめぐる。第61回読売文学賞受賞作。

『象が踏んでも- 回送電車IV』2011年

一日一日を「緊張感のあるぼんやり」のなかで過ごしたい――異質な他者や、曖昧な時間が行きかう時空を泳ぐ、初の長篇詩と散文集。シリーズ第四弾。

『なずな』2011年

とある事情から弟夫婦の子、なずなを預かることになった私。独身で子育て経験のない四十半ばの私は、周囲の温かい人々に見守られながら、生後二ヶ月の赤ん坊との暮らしを始める。第23回伊藤整文学賞受賞作。

『振り子で言葉を探るように』2012年

100冊の本があれば、100冊の受け取り方がある。再生装置である「私」の数だけ本は存在する― 日本語の名手による本にまつわるエッセー集。

『時計まわりで迂回すること- 回送電車V』2012年

爪切りひとつで、世界は大きくその姿を変える。眼鏡、ジダンの足さばき、世田谷線の踏切…愛はまっすぐ五十五篇。

『目ざめて腕時計をみると』2012年

先日、芥川賞の新選考委員に就任したことでも話題を呼んだ作家 堀江敏幸による、初の本格的な写真集。

『燃焼のための習作』2012年

築四十年を超えた雑居ビルに探偵とも便利屋ともつかない事務所を構える枕木。依頼内容が「うまく言えない」と口ごもる客人と、その心を解すように言葉を継いでいく枕木の会話に、雷雨とともに戻ってきた郷子さんも加わって、時はゆるやかに流れる。別れた妻と息子の消息が知れない男の胸によぎる思いとは?

『余りの風』2012年

数々の文学賞を受けて来た堀江敏幸が、自らを育み、力を与えた書き手を読み込む。
作家ならではの触感と、作品の深みに入って行く理路によって、読者はそれぞれの書き手の大切な部分に気付かされる。
文学の先達、多くは「会えなかった人たち」に向けられたエッセ・クリティック。

『戸惑う窓』2014年

安アパートのアルミサッシ窓、「万葉集」で読まれる窓、今は焼け落ちてしまったノートルダム寺院のステンドグラス……窓とは、いったいなんだろう? ときに世界の生成に立ち会い、ときに胸をかきむしるほどの透明さで迫ってくる「窓」から、言葉や記憶の小宇宙をのぞく随筆集。

『その姿の消し方』2016年

引き揚げられた木箱の夢 想は千尋の底海の底蒼と 闇の交わる蔀。……留学生時代、手に入れた古い絵はがき。消印は1938年、差出人の名はアンドレ・L。古ぼけた建物と四輪馬車を写す奇妙な写真の裏には、矩形に置かれた流麗な詩が書かれていた。いくつもの想像を掻き立てられ、私は再び彼地を訪れるが……。記憶と偶然が描き出す「詩人」の肖像。野間文芸賞受賞作。

『音の糸』2017年

静かに響きわたる、著者初の音楽エッセイ。

小学生の時に友人の家で聴いたカラヤンのレコード、中学校の音楽室で耳を傾けたブラームス、日曜朝のFM放送、故郷でストーヴを焚きながら聴いた灯油の臭いのするカセットテープ、大学生になって、抽選で当たって訪れた“はずだった”、あるピアニストのコンサート……。

音の記憶の糸をたぐり寄せ、絡まった糸を一本ずつ解きほぐしていくと、そこには何が見えてきたのであろうか――。

『坂を見あげて』2018年

季節の移ろいと響きあう、46の短い小説のような随想のつらなり。『正弦曲線』『戸惑う窓』に続く、著者独自の世界が広がる待望の散文集。

『曇天記』2018年

月刊誌「東京人」で好評連載中の、堀江敏幸さんのエッセイ「曇天記」。 連載開始の2008年9月号より、2011年3月11日の東日本大震災を挟む、 2017年2月号までの100篇を収録した単行本です。

『オールドレンズの神のもとで』2018年

わたしの頭部には一センチ四方の小さな正方形の孔があいている。一生に一度、訪れる激しい頭痛とともに、無名の記憶が不意に臨界点を迎えてなだれ込む。眼前を通過する、飛行機雲、マルタ会談、オリンピックのワンシーン。代々繰り返されてきた、一族の男たちを通過する不思議な体験。それはいったい、何を意味するのか。祖父のつぶやいた言葉を手がかりに、わたしは色と呼ばれる現象を考える。いまの世界に失われた何かを描き出す「オールドレンズの神のもとで」ほか、記憶や風景に抱かれたシーンを描き出す、彩り豊かな掌編小説集。

『傍らにいた人』2018年

■堀江敏幸氏による、読書をめぐるエッセイ集。
■日経新聞土曜朝刊の連載随想が、待望の単行本化!

堀江敏幸さんがなれ親しんできた書物の頁の風景の中で、なにかの拍子によみがえってくる人の姿。「たいていはだれもが知っている人物の傍らの、淡い接触をしただけの存在で、顔の輪郭がはっきりしていないことさえあるのだが、思い出したらそのまま忘れて終わりというわけではなく、何年か経つと、べつの角度で刺激された記憶の片隅から、また不意にあらわれたりする。」「私は実際に、思い出されてはじめて、なるほどその折の景色のなかに目立たない見えない傍点が打たれていたのだと気づかされるような影たちと、何度も遭遇してきた。」――文芸作品の楽しみ、それは細部につまづくこと。「読む」ことをめぐる52篇。

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