蹴りたい背中(綿矢りさ)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

第130回芥川龍之介賞を受賞した著者の代表作。

周囲に溶け込むことが出来ない陸上部の高校1年生・初実(ハツ)と、アイドルおたくで同級生の男の子・にな川との交流を描いた青春小説。

作品情報

タイトル
蹴りたい背中
著者
綿矢りさ
形式
小説
ジャンル
青春
執筆国
日本
版元
河出書房新社
初出
文藝、2003年秋季号
刊行情報
河出文庫
受賞歴
第130回芥川賞

あらすじ・概要(ネタバレなし)

第130回芥川賞受賞作品。高校に入ったばかりの“にな川”と“ハツ”はクラスの余り者同士。やがてハツは、あるアイドルに夢中の蜷川の存在が気になってゆく……いびつな友情? それとも臆病な恋!? 不器用さゆえに孤独な二人の関係を描く、待望の文藝賞受賞第一作。

目次

作者

綿矢 りさ わたや・りさ(1984年2月1日 – )

小説家。京都府京都市生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。高校在学中に「インストール」で第38回文藝賞受賞。受賞当時17歳であり、20年ぶりの最年少タイ記録だった。2003年、『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。当時19歳での受賞は現在に至るまで最年少記録である。
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刊行情報

  • 『蹴りたい背中』河出書房新社、2003年
  • 『蹴りたい背中』河出文庫

登場人物

ハツ(長谷川初実)
主人公。陸上部に所属する高校1年生。人付き合いを嫌い、同級生や先輩を冷めた目で見ている。

にな川(蜷川智)
ハツの同級生でオリチャンのファン。オタク。

絹代(小倉絹代)
ハツの中学校からの友人で同級生。高校ではやや疎遠になっている。ハツとは逆に交友に余念がない。

オリチャン(佐々木オリビア)
モデル。27歳。

感想・解説・評価

賛否両論となった芥川賞受賞作

この作品には様々な感想が寄せられているようです。

「面白い」「つまらない」

「すごいよく分かる」「意味不明」

「傑作」「買う意味がない。金返せ」

「さすが芥川賞受賞作」「芥川賞のレベルも権威も落ちたもんだ」

ひどい中では「蹴りたいのは選考委員の背中だ」なんてことまで言っている方まで。

確かなセンスを感じさせる傑作

僕はこの本を2回読みました。

最初に読んだときの感想は。「これで、終わり?」という感じでした。中途半端というか、もっとはっきりと終わるんじゃないのかと、思わず首を傾げてしまいました。でも、その後ふと再読したとき、こんなにおもしろかったのかと驚くことになりました。

初美はあらゆるところで、悲しそうにしています。友人の絹代が別の友達に今日の話をするのを楽しみにしていると知ったとき、周りに上手くとけ込めないとき、にな川がオリチャンに駆け寄るとき。

これは、近くにいた人が、自分に似ているかも知れないと思った人達が遠くへ行くのを実感したからです。自分より他の人に興味を持たれてしまったからです。

だから、初美はにな川を蹴りたくなった。おまえは、私と一緒のクラスのあぶれ者だったのに、オリチャンのこととなるとなんでそんなに必死なんだと。自分は陸上部にいるけど、そんなに全力投球ってわけでもない。なのにお前はなんで全力なんだと。

しかも中学からの友達の絹代は、中身も外見も自分より大分大人っぽくなっている。そんな焦りや不満、もやもやっとしたものを文章化しようと苦心した小説のように思います。

僕はたいへんな傑作だと思います。このような小説は書けるようでとても書きにくい。しかも似たような内容の小説は世界中でたくさん書かれています。「ありきたり」を回避するためにはひとつもふたつも工夫しなければなりません。

「特にいじめられているわけでもなく気が付いたら教室の中で一人だった」「とりとめのないことを話せる人がいない」「弁当を食べるときも一人で、早々と済ませてしまう」そんな人にとっては、この本は名作になると思います。

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文藝賞を受賞した作者のデビュー作です。

周囲に馴染めない女子高生の混乱と奮闘ぶりが描かれていると思います。

「蹴りたい背中」の後にも様々な小説を発表されていますが、僕は初期の文体や雰囲気が大好きです。

評判・口コミ・レビュー

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