ジパング(かわぐちかいじ)のあらすじ(ネタバレあり)・感想

舞台は西暦200X年。海外派遣によりエクアドルへ向かう海上自衛隊の自衛艦隊のイージス艦みらいはミッドウェー沖合で突如嵐に巻き込まれ落雷を受ける。みらいが直面したのは不可思議な現実。なんとミッドウェー海戦直前の1942年6月4日の太平洋上にタイムスリップしていたのだ。そしてみらいは大日本帝国海軍連合艦隊に遭遇する…。

作品情報

タイトル
ジパング
著者
かわぐちかいじ
形式
漫画
ジャンル
SF
仮想戦記
戦史
軍事
ミリタリー
執筆国
日本
版元
講談社
初出
モーニング、2000年35号~2009年49号
刊行情報
モーニングコミックス
受賞歴
第26回講談社漫画賞一般部門

あらすじ(ネタバレなし)

西暦200X年の6月。日米新ガイドラインの下での海外派遣によりエクアドルへ向かう海上自衛隊の自衛艦隊のイージス艦みらいはミッドウェー沖合で突如嵐に巻き込まれ落雷を受ける。その直後からレーダーからの僚艦喪失、送受信機の故障ではない衛星通信の不通、突如の降雪という不可思議な現象に直面する。そして戦艦大和以下大日本帝国海軍連合艦隊に遭遇したことによりミッドウェー海戦直前の1942年6月4日の太平洋上にタイムスリップした事が判明する。

異常事態の中、みらい副長 角松洋介は、撃墜され水没しつつある零式水上観測機の後席から自ら救助した帝国海軍通信参謀 草加拓海少佐に未来世界の情報を公開したことから、みらいは徐々に変化してゆく歴史の流れに巻き込まれて行く……。

作者

かわぐち かいじ(1948年7月27日 – )

漫画家。広島県御調郡向東町(尾道市)出身。明治大学文学部日本文学科卒業。1968年に『ヤングコミック』に掲載された「夜が明けたら」でデビュー。 代表作に『アクター』、『沈黙の艦隊』、『ジパング』、『太陽の黙示録』などがある。

もっと読む【おすすめ】かわぐちかいじの全作品を一覧であらすじを紹介します

刊行情報

  • 『ジパング』モーニングコミックス、全43巻
  • 講談社漫画文庫、全22巻

映画版、アニメ版関連動画

テレビアニメ『ジパング』2004年10月~2005年3月

登場人物

角松洋介(かどまつ ようすけ)
本作の主人公の一人。二等海佐。35歳。イージス艦みらい副長。エクアドル争乱に伴う現地の邦人保護のため、エクアドル沖へ派遣される。その途中、タイムスリップに伴い1942年のミッドウェー海域へ巻き込まれることになる。副艦長として責任のある立場ながら、熱い想いゆえに積極的に行動し、次々と周囲の人物を感化していく。

草加拓海(くさか たくみ)
本作の主人公の一人。架空の人物。少佐。32歳。大日本帝国海軍通信参謀。ミッドウェー海戦の戦況報告のため、金剛型戦艦「霧島」から本隊へ偵察機「零観」で飛行中に撃墜されて戦死するはずだったが、イージス艦みらいに発見され、人命を尊重する角松により救助される。その後、角松によってみらいの資料室へと案内され、第二次世界大戦の経緯や、戦後日本の歩みなど未来世界の情勢を知ることになる。その結果、歴史改変に乗り出し、新日本「ジパング」創生のため行動するようになる。

菊池雅行(きくち まさゆき)
砲雷長。三等海佐。角松、尾栗とは防大からの同期であり友人。とても冷静沈着であるため梅津や角松からの信頼は厚いがその一方で生真面目でもある。

尾栗康平(おぐり こうへい)
航海長。階級は三等海佐。角松、菊池とは防大からの同期であり友人。気さくで感情に素直、情に厚い性格で部下も彼には心を開きやすい。

山本五十六(やまもと いそろく)
連合艦隊司令長官。海軍大将。本作ではミッドウェー作戦中にみらいと遭遇。やがてみらいの信念に理解を示し、擁護しつつ海軍への吸収を試みる。

米内光政(よない みつまさ)
三国同盟や対米戦争に反対した予備役将校。海軍大将。横須賀でみらいを単身訪れ日本の将来に支障をきたすことを理由に自沈を促すが、角松から後に犠牲となる人々を見捨てられないと反論され、ひそかにサポートすることになる。平和主義者であり、軍国主義に狂った日本が太平洋戦争で大敗北し、過ちに気付くことを願っている。

あらすじ(ネタバレあり)

ジパングのストーリー(あらすじ)を簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

第1巻のストーリーを紹介!

200X年のイージス艦が、1942年にタイムスリップしたならば――。“来(きた)る”太平洋戦争が、その先の“みらい”が激震する!! ――海上自衛隊所属、最新鋭イージス艦「みらい」、謎の暴風雨に遭遇(そうぐう)。そしてすべての僚艦(りょうかん)、失踪(ロスト)……。やがて、1942年・ミッドウェー海戦域のド真ん中に“出現”した「みらい」は、撃墜(げきつい)された海軍将校を救助。そして、「歴史」は塗り替えられる――!! 講談社漫画賞受賞。圧倒的なイマジネーションで描き出される、歴史横断超大作!

舞台は200X年の日本。日米新ガイドラインの下での海外派遣によりエクアドルへ向かう海上自衛隊の自衛艦隊のイージス艦みらいはミッドウェー沖合で突如嵐に巻き込まれ落雷を受ける。

その直後からレーダーからの僚艦喪失、原因不明の衛星通信の不通、突如の降雪という不可思議な現象に直面する。そして戦艦大和以下大日本帝国海軍連合艦隊に遭遇したことによりミッドウェー海戦直前の1942年6月4日の太平洋上にタイムスリップした事が判明する。

異常事態の中、みらい副長・角松洋介は、撃墜され水没しつつある零式水上観測機の後席から帝国海軍通信参謀・草加拓海少佐を救助。本来なら死んでいたはずの人物の命を助けてしまう。角松は覚悟を決め、草加に未来世界の情報を公開する。

見どころよくミリタリーファンの中で語られるのが、「今の自衛隊の戦力・装備なら当時の世界でどれだけ戦えるか?」というもの。豊田有恒の「タイムスリップ大戦争」では日本列島全体がタイムスリップした世界が描かれましたが、「ジパング」ではイージス艦のタイムスリップが描かれます。

よりにもよってみらいが巻き込まれたのは日本海軍が大敗を喫したミッドウェー海戦。ミサイルを積み、原子力潜水艦ですら撃沈可能なみらいは、一隻で米機動艦隊とやり合えるだけの力を持っているのです。

注目ポイントは艦の意志の違い。太平洋戦争中の艦艇は自らの勝利のために動きますが、みらいは戦後日本の平和主義・人命重視の下で行動するのです。そのギャップが見どころです。

第2巻のストーリーを紹介!

かわぐちかいじが『沈黙の艦隊』を超えるスケールで描く、海と戦いの黙示録(もくしろく)!! ――1942年・ミッドウェー海戦域にタイムスリップした21世紀のイージス艦「みらい」の副長・角松は、歴史的に“死ぬ運命だった”謎の大日本帝国海軍少佐・草加(くさか)を救命。そのまなざしに運命を感じた角松は、歴史の塗り替えを覚悟しながら、太平洋戦争の“真実”と“未来”を開示する! 一方その頃、連合艦隊司令長官・山本五十六(いそろく)も、「みらい」の存在に気付きはじめていた……!

ミッドウェー海戦に巻き込まれ、草加を救助したみらいはエクアドル行きを断念。出発した横須賀基地へと戻ることを選択する。日本本土は現代なのか。それとも戦時中なのか。みらいから飛び立った哨戒機・海鳥を迎えたのは日本海軍の零式水偵だった。

上陸を断念したみらいは燃料・物資を補給するため日本占領下のシンガポールへと向かうことになる。

見どころミッドウェー海戦から一夜明け、これからみらいはどうなるのか?という点が描かれ始めた2巻。みらいは南方へと向かうことになりましたが、個人的には協力を求められるのは仕方がないにしても、大日本帝国の支援を受けないのかと疑問に思ったりもしました。

作中でも当時の日本に協力する(ことになるかもしれない)危険性が語られますが、所属不明艦として極秘裏に行動する方が危険ではないのかなと思ったりもするのです。

そんなことを考えつつ読み返すと気が付くのは帝国海軍軍人と自衛隊員の意識の違い。戦闘時に、相手の命を奪うということへの抵抗というか覚悟が全然違うということがわかります。

第3巻のストーリーを紹介!

1942年、太平洋戦争直前のシンガポール。21世紀のイージス艦「みらい」に救命された海軍将校・草加(くさか)は、大日本帝国軍を欺(あざむ)き、燃料補給のために奔走(ほんそう)。しかし、すんでのところでかつての部下・津田に“正体”を見破られ、同行していた「みらい」副長・角松とともに捕捉(ほそく)される! “戦時を生きる軍人たち”の想いを知った角松は、「ある賭け」に出る。そして舵(かじ)は一路、ガダルカナルへ……!

紆余曲折を経てシンガポールにて燃料・物資を補給したみらい。

今いる世界が戦時下であることを認めたみらいは太平洋戦争に介入するため、泥沼となったガダルカナル島へと向かうことになる。

見どころこれまではタイムスリップに戸惑いが見られたみらい一行。3巻では軍人たちとの交流もあり、徐々に自分たちの状況を冷静に捉えることができるようになっています。

人命を重視するみらいは日米双方の死者を減らすため、戦争への介入を行うため、ガダルカナル島へと向かいます。ここで日本海軍の勝利を支援するためではなく、戦闘を回避させ死者を減らそうというのが現代日本の価値観なのかなと思いました。

第4巻のストーリーを紹介!

1942年、ガダルカナル。大日本帝国軍の「惨敗の史実」を知る“未来人”の角松らは、泥沼回避を狙(ねら)った上陸作戦「オペレーション・サジタリウス」を決行! 一方その頃、“未来を知る元・海軍将校”草加(くさか)は、連合艦隊司令長官・山本五十六(いそろく)と、信じがたい極秘作戦を用意していた! “無条件降伏から始まる屈辱の戦後”を認めぬ草加には、角松たちの21世紀とは違う未来=「ジパング」が、見えていた――!!

4巻では三川艦隊が出撃、史実通り第一次ソロモン海戦が勃発する。

戦艦大和の山本長官に接触し、ガダルカナルからの撤退を実現すべく行動していく。

見どころ積極的に歴史改変に動き出したみらい。日米両軍にコンタクトをとりつつ、戦闘を回避すべく努力していきます。

みらいの行動は平和主義によるものですが、帝国海軍の幹部たち全員がその意志を理解・共感しているわけではありません。そりゃそうですよね。60年後の未来からいきなり戦闘艦がやってきて、自分たちの作戦に注文を付けようとしているなんて理不尽な事態だろうと思います。

みらいが自分たちの要求をどう受け入れさせるか。その硬軟織り交ぜた交渉が見どころです。

第5巻のストーリーを紹介!

「みらい」総員に告ぐ。山本長官からの“夏島への上陸許可”と慰安の申し出、謹んで受ける! ――南太平洋中心部、トラック諸島。イージス艦「みらい」の乗員は、2ヵ月ぶりの上陸解禁に浮かれていた。一方その頃、戦艦「大和」――。陸軍・辻参謀は、“統帥権(とうすいけん)の絶対性”をタテに、「ガダルカナル奪還(だっかん)命令」を山本に要求。“未来の敗戦史”を知る山本は、せめて犠牲を最小限に抑えるべく、「あの艦(ふね)」を要求するのだが……!?

4巻で実施されたガダルカナルからの撤退。しかしジャングルに散らばった将兵に作戦を伝えることは困難でした。多くの将兵が取り残される中、司令部は撤退を敢行。一部ながらみらいの意向が通ることになります。

それに不満なのは帝国陸軍。ガダルカナルに部隊を送り込もうとする上層部は山本長官の下へ参謀・辻政信を派遣します。

みらい一行は日本の委任統治領だったトラック諸島へ。そこで角松とすれ違うように草加が向かったのは退役軍人だった石原莞爾でした。

見どころ戦時中の大きな問題のひとつであった陸軍と海軍の対立が描かれます。とくに協調派の山本五十六と急進派の辻政信はまさに対照的な存在。

統帥権というワードを出して、自らの主張を通そうとする辻の姿は当時の陸軍の増長ぶりを如実に表していると思います。

第6巻のストーリーを紹介!

俺たち自衛隊は、“矛(ほこ)”じゃない。日本人すべての“盾(たて)”なんだ! ――自衛隊所属のイージス艦「みらい」は、滝少佐の護衛を連れてサイパン沖を航行中。進撃を重んじる“矛”のごとき軍人・滝は、山本長官の命にそむき、誘導したアメリカ機による「みらい」撃沈を画策していた! 危機、せまる。「みらい」は、ついに非常事態(ハルマゲドン)用の自動発射管制モードを選択するのか……!? 本編のほか、外伝「マレーの残照」も同時収録!

横須賀へと向かうみらいはその道中で敵空母・ワスプと遭遇。空母艦載機ドーントレスによる大編隊の攻撃を受けます。

優れた攻撃能力で敵機を打ち落としていくみらい。しかし弾薬にも限りがあるため、第二次、第三次攻撃を防ぐことは困難だった。砲雷長菊池は艦を守るためにトマホークミサイルでのワスプ攻撃を具申する。

見どころこれまで平和主義の下で行動してきたみらいもついに米軍との直接戦闘に臨むことになります。みらいは日米の戦闘を回避するために行動していますが、米軍からすればそんなことはわかりません。

米軍からすればみらいは、詳細不明の日本の新鋭艦。単独で航行しているのなら攻撃する絶好のチャンスです。

その認識のずれが描かれたのがこの6巻。自らが望んでいなかったとしても、相手から攻撃されれば戦闘が起きてしまうのかもしれません。

第7巻のストーリーを紹介!

21世紀のイージス艦、1942年の横須賀への“帰港”なるか――。石原莞爾(いしわら・かんじ)との密約を終えた草加(くさか)は、太平洋戦争の早期講和を目標に、かつての部下・津田に対して「ヒトラー暗殺」を指示、自身は満州へ渡ることに。一方、帝国軍部に警戒された「みらい」は横須賀入港を許されず、要塞(ようさい)島たる猿島沖への停泊を命じられる。この決定を不服とした「みらい」梅津艦長は、反対に“人質”を要求。なんと、これに応じたのは海軍大将・米内光政(よない・みつまさ)だった――。

日本へと上陸することになったみらい。そのみらいを尋ねてきたのは首相も務めた海軍の大物・米内光政だった。協調派・条約派として知られる米内はみらい上層部に対して、大日本帝国はこの戦争に負けることで、膿を出し切らねばならないと自論を展開する。

トラックで草加から逃げられた角松は彼の行方を追って、遠く満洲へと向かう。そこで彼が出会ったのは清国最後の皇帝溥儀であった。

見どころ米内や石原など実在の人物の思想が語られる7巻。史実でも日独伊三国同盟や対米開戦に反対し、海軍大臣として終戦に尽力した米内が静かに語る日本論には独特の迫力があります。

これまでは南太平洋にて展開されてきた物語も、日本、そして満洲へと広がりを見せました。日本が戦争へと舵を切る中で無視できない関東軍や中国戦線も語られるなど大きく物語が動き始めた巻ですね。

第8巻のストーリーを紹介!

草加(くさか)の暗殺計画から脱出した“ラストエンペラー”溥儀(ふぎ)は、角松にかくまわれることに。大失態に憤(いきどお)る陸軍大将・梅津美治郎(うめづ・よしじろう)だが、関東軍の“謀反(むほん)”を許すこととなり……。そして、更けゆく満州の夜。銃を携(たずさ)え、再会を果たした草加と角松は……!? 本編のほか、外伝「至誠に悖(もと)るなかりしか」を同時収録!

中国大陸へと向かった角松が遭遇したのはラストエンペラー・溥儀の暗殺未遂事件だった。史実では戦後まで生き残ることになっている溥儀を殺させまいと角松は奔走するが、その裏には草加の影があるようで…?

一方、日本に残ったみらい上層部は海軍の上層部との交渉に臨む。その席上で海軍上層部が提案したのは陛下にご助言できる立場の人間との会談だった。

みどころこれまでのように戦闘ではなく、角松のハードボイルドなストーリーと、帝国海軍との交渉が描かれた8巻。

陸軍内にも様々な意見があるように、海軍内にもリベラルな穏健派と急進派がおり、その対立軸なども徐々に明かされます。

8巻で示されるのは思想。大勢の登場人物たちが自らの思想に向かって進んでいくさまが読んでいてワクワクさせられるところです。歴史に詳しくなくても、この8巻まで来れば当時の日本の状況がわかるでしょう。

第9巻のストーリーを紹介!

緊迫の「アリュージョン編」突入!! DDH(海上自衛艦)「みらい」、米巨大戦艦「ノースカロライナ」と激突!! ――流転する「もう一つの歴史」の中で、米軍によるアリューシャン奪回の時期が早まろうとしていた。このままでは、孤立したアッツ、キスカは全滅か……。「みらい」は、“玉砕”寸前の帝国軍を撤退させるべく、出航。草加(くさか)のライバル・滝参謀とともに、濃霧の海戦を展開するのだが……!?

ミッドウェー、ガダルカナルと転戦してきたみらい。そのみらいが次に向かうのは4000人の日本兵が取り残されたアリューシャン・キスカ島。日本軍が占領していたが、ミッドウェーの敗戦により価値を失い、孤立を深めていた。

史実では霧に隠れての救出作戦が成功。奇跡の作戦と称賛されることになる。しかし史実より早くガダルカナルからの撤退が成功した今となっては、米軍の反抗作戦も早まることが予想された。みらいは4000名の命を救うことができるのか。

見どころ8巻で修理を終えたみらい。部品が完全には調達できないためスペックは落ちていますが、ある程度の戦闘能力を取り戻しました。そんなみらいは第三の戦場として北へと向かうことになります。同行する帝国海軍の船は輸送艦のみ。事実上、単独での作戦となります。

ここまで、政治や各登場人物の思惑が描かれてきたわけですが、9巻では再び戦闘が描かれます。難しい霧の中での戦闘をみらいがどう乗り越えるのか。全体を通してもかなり読み応えのある巻です。

第10巻のストーリーを紹介!

舞台は戦火の欧州へ。もうひとつの歴史を創るため、草加(くさか)が欲するものは、独裁者(ヒトラー)の死。――帝国軍のアッツ、キスカ撤退作戦を成功させた「みらい」は、負傷した梅津に代えて、角松を艦長に頂く。その頃、地下潜行中の草加(くさか)は、腹心・津田に同盟国の統帥(とうすい)=ヒトラー暗殺を指示。この極秘計画の後ろ盾(だて)は、やはり“あの人物”だった……!

アリューシャンでの戦いを終え、みらいは横須賀へと寄港した。

一方、暗躍する草加はヒトラーを暗殺するために腹心の部下・津田を同盟国ドイツへと送り出す。長距離飛行機A-26でドイツへとたどり着いた津田は同じくヒトラー暗殺を目論むドイツ軍将校と出会う。

見どころ霧の中での白熱の戦闘も終わり、舞台は一路欧州へ。日本の同盟国であったドイツでの物語が展開されます。

挙国一致内閣とか言いつつ、内情はバラバラだった日本とは異なり、当時のドイツはナチ党の下に一党独裁体制が確立。その党首たるヒトラーの暗殺計画がスタートします。

飛行機A-26の日本-ドイツ間の長距離飛行にせよ、日本人によるヒトラー暗殺計画にせよ、史実にはない出来事。IFを描いてきたジパングの本領発揮ともいえる巻です。

第11巻のストーリーを紹介!

再会、衝撃の告白。そして静寂のクライマックス――。舞台は大空襲のベルリンの夜、「グラーフ・ツェッペリン」号謁見(えっけん)を経て、孤高の別荘「ケールシュタインハウス」へ……。総統(ヒトラー)は暗殺者・津田に微笑みかけ、草加(くさか)は吹雪(ふぶき)の中で津田を待つ。そして草加の腹蔵する“もう一つの訪欧目的”が、明らかになる……! 本編のほか、外伝「フレンドシップ」を同時収録!

別のヒトラー暗殺未遂事件に遭遇した津田は自らその行動を阻止。その功績が認められ別荘ケールシュタインハウスにて、ヒトラー本人に面会することになった。

津田は暗殺を目論むも、ヒトラーを守るために身体検査などチェック体制は万全。その陰では草加も渡欧しなにやら行動を開始していた。

見どころほぼヒトラー暗殺を目論む津田の行動が描かれた11巻。ヒトラーという超重要人物にまつわる話というだけあり、周囲の人物も様々。軍人・民間人問わずあらゆる人物が暗躍しています。

津田が主人公ともいえる巻ですが、彼は角松ほど真っすぐで芯が強いわけでもなければ、草加ほど覚悟を持って行動しているわけでもない。これまでは彼の弱さがたびたび見られましたが、11巻のラストでは彼の強さの一面を見ることができます。

第12巻のストーリーを紹介!

史上初の「核」が、南太平洋、ヨーロッパ、そして満州へ……運命の連鎖を引き起こす!! 連合艦隊の戦線縮小作戦に加わり、トラック泊地からパラオへ向かう「みらい」。一方草加(くさか)は、ヨーロッパで濃縮ウランの入手を画策していた……。未来を知る男たちが、“歴史”の最前線へと走り出す――! 講談社漫画賞受賞。かわぐちかいじが圧倒的なイマジネーションで描き出す、歴史横断超大作!

草加が渡欧した理由。それはヒトラー暗殺のためだけではなかった。強力な兵器である核を手中に収めるため、その製造に必要な濃縮ウランを手に入れようとしていたのだ。

一方日本軍は防衛ラインの縮小化を推し進め、陸軍の大物・石原莞爾は東条英機との関係改善を図るなど国内の状況も刻一刻と変化していた。

見どころ現代においても外交カードになってしまうほど強大な兵器であるのが核兵器(原子爆弾)です。当然太平洋戦争中であればその存在はより大きくなる。

強力な兵器であると同時に強力な外交カードである核を手に入れるため、これまで謎に包まれていた草加の行動が徐々に明かされます。

これまでジパングでは、「違うもの」が描かれてきました。しかし核の「強さ」は時代によって変わるものではありません。その怖さを感じます。

第13巻のストーリーを紹介!

米軍vs. 「みらい」部隊……“セクションS”始動。太平洋の“謎(リドル)”を排除せよ! ――濃縮ウランを手に満州に戻った草加(くさか)は、帝国海軍に捕捉(ほそく)される。しかしその隠密裏(おんみつり)では、石原莞爾(いしわら・かんじ)が動いていた! 一方、米海軍内では、謎の艦「みらい」と決着をつけるべく、大規模な秘密作戦が始動。決戦の海はニューギニア沖、ダンピール海峡……!!

第14巻のストーリーを紹介!

ただ仲間を守るために……。「みらい」に迫る、回避不可能な500ポンド爆弾。機長・佐竹に迷いはなかった。艦載多目的偏向翼機「海鳥」、壮絶なるラストフライト!! そして“60年後の未来人”たちは、存在意義に揺れはじめる。自衛隊員を貫くべきか、それとも帝国海軍の一員となるべきなのか……!? かわぐちかいじが描き出す、海と戦いの黙示録(もくしろく)。本編のほか、外伝「守るべきもの」前後編を同時収録!

第15巻のストーリーを紹介!

「みらい」、決裂!! 「この戦争に積極的に参加する」……菊池の考えに賛同する乗員たちが、ついに行動を起こす。だが、角松と尾栗(おぐり)にも“切り札”があった――。かわぐちかいじが「沈黙の艦隊」を超えるスケールで描き出す、海と戦いの黙示録(もくしろく)!!

第16巻のストーリーを紹介!

「この」日本は、紛れ込んだ異物を許さない。――菊池派のクーデターを受け、艦長・角松派5名は“下艦”。彼らと入れ替わるように「みらい」へ招き入れられたのは、歴史の改竄(かいざん)を目指す草加(くさか)、その男……。いつしか言動を怪しまれた角松と篠原は、特高警察に拘束されるのだが、素性を明かせぬ二人を待つのは、繰り返される苛烈(かれつ)な拷問(ごうもん)なのだった……!!

第17巻のストーリーを紹介!

アラビア海が、炎に染まる……。それは、「みらい」の記録に存在せぬ戦い。――“60年後のイージス艦”「みらい」を乗っ取った男、草加(くさか)。彼の立案したインド洋からの連合国軍への攻撃が開始された。“歴史”を大きく変えていく、戦いの火蓋(ひぶた)が切って落とされる。そしてそれは、「みらい」の乗務員から“自衛官”という意識を失わせていく戦いでもあった……!

第18巻のストーリーを紹介!

1/1000秒で演算された、殺戮(さつりく)――。日々激化する戦局とともに、“60年後のイージス艦”「みらい」は、確実に太平洋戦争のまっただ中へと飲み込まれていく。それは、第二次大戦の“史実”には存在しなかった戦いである。そして“史実”には存在しなかった“犠牲者”が、一人、また一人、インド洋の藻屑(もくず)となって消えていった――。かわぐちかいじが「沈黙の艦隊」を超えるスケールで描く、海と戦いの黙示録(もくしろく)!!

第19巻のストーリーを紹介!

再び「みらい」を目指す決意をした角松。満州で“草加(くさか)の原爆”を追う梅津……。変わりゆく歴史に、彼らはどこまで抗(あらが)えるのか!? ――帝国軍のインド洋侵攻はイギリスを激震させ、アメリカを突き動かす。“60年後のイージス艦”「みらい」は進む。「新しい戦史」という名の処女航海に――。巨匠・かわぐちかいじが圧倒的なイマジネーションで描き出す、歴史横断超大作!

第20巻のストーリーを紹介!

変わりゆく歴史が、角松と梅津に牙(きば)をむく。――“草加(くさか)の原爆”を巡り、陸軍と海軍が動き出した。緊迫する夜の南京(ナンキン)で、自らが生きた時代への誇りを懸(か)け、梅津はウラン235を葬らんとするが……!? 一方、角松の乗る伊-152号を発見したのは、“潜水艦の狩人(かりうど)”立石が率いる駆逐艦(くちくかん)だった! 日本軍とは名乗れない伊号。一対一の死闘が、幕を開ける――!!

第21巻のストーリーを紹介!

苛烈(かれつ)さを増す、“対潜の鬼”立石(たていし)の攻撃。何者とも知れない“米俵”たちのため、伊-152号艦長・堀田は捨て身の奇策に出た! 戦史に残ることのない南洋の死闘は、ついに最終局面を迎える……! かわぐちかいじが「沈黙の艦隊」を超えるスケールで「戦後」を問う、海と戦いの黙示録(もくしろく)!!

第22巻のストーリーを紹介!

米海兵隊《U.S.マリーン》vs. 海上自衛隊《イージス艦「みらい」》。その双眸(そうぼう)が見すえるのは、どんな未来か。その銃口が睨(にら)むのは、誰か――!? タラワ島・日本軍撤退の隠蔽(いんぺい)工作。上陸した角松と菊池は、米海兵隊に包囲され、孤立した……! 圧倒的なイマジネーションで描き出される、歴史横断超大作! かわぐちかいじインタビュー「日本人とは何なのか」を同時収録。

第23巻のストーリーを紹介!

「みらい」は奪われた……! 不幸な“事故”により負傷した菊池三佐は、パラオに緊急搬送された。角松が「みらい」を掌握することを恐れた草加(くさか)と滝は、陸戦隊2個小隊を率いて「みらい」を制圧。角松以下全乗員は、退艦のうえ無人島に軟禁……。「みらい」はこのまま南洋の孤島で朽ち果てるのか……!?

第24巻のストーリーを紹介!

「みらい」を奪還せよ! ――“60年後のイージス艦”「みらい」と乗員の封じ込めを図る草加(くさか)に、角松たちは反旗を翻(ひるがえ)す。もたらされたのは、「菊池無事」の朗報と、梅津の遺志。孤島に囚(とら)われの身となった乗員たちは、角松のもと、再び心を一つにした――。そして帝国海軍の厳重な警戒網をかいくぐる、230名の大脱走が始まった……!! 本編のほか、かわぐちかいじが語る「日本と日本人(1)」も同時収録!

第25巻のストーリーを紹介!

総員、脱出せよ。「みらい」が再び一つになるために! ――“60年後のイージス艦”「みらい」奪還に成功した角松たちに、草加(くさか)率いる軽巡洋艦「阿賀野(あがの)」の砲弾が容赦なく降り注ぐ。一方、菊池と桃井は、空路で本土へ。小栗たちは、海軍の油槽船(ゆそうせん)を奪い海へ。それぞれの方法で脱出を試みるのだが……!? 本編のほか、かわぐちかいじが語る「日本と日本人(2)」も同時収録!

第26巻のストーリーを紹介!

たった一人の存在が、予想できない未来をもたらす。――戦艦「大和」に原爆を搭載し、マリアナ海域に最終決戦を求める草加(くさか)。そうした日本海軍の動きに“異物”を感じ取る米海軍の知将・カーネル。彼らの存在は、戦いの帰趨(きすう)をいずこへ導くのか。そして「みらい」の行動は、草加の野望を打ち砕けるのか……!? 本編のほか、かわぐちかいじが語る「日本と日本人(3)」も同時収録!

第27巻のストーリーを紹介!

草加拓海(くさか・たくみ)vs. 連合艦隊司令部。そして旗艦「武蔵」、もう一つの戦場。マリアナ沖で激化する日米空母機動部隊の戦闘。“野望”を推し進めるために、草加は連合艦隊司令部に駆け引きを挑むのだが……!? 日米両軍の“勝利への意志”が激突する!! 本編のほか、詳細解説「日米最終決戦」も同時収録!

第28巻のストーリーを紹介!

過ちを正す機会は、永遠に失われた――。太平洋の最重要地・マリアナ海域にて、最終決戦に臨む日米両軍。激化する争いの中、草加(くさか)は原爆を積んだ「大和」奪取に向け、連合艦隊司令部に、“もう一つの戦争”を仕掛けていた……。「みらい」との直接対決、迫る! 本編のほか、詳細解説「日米最終決戦(2)」も同時収録!

第29巻のストーリーを紹介!

月下の激闘。日米艦隊、ついにサイパン沖にて全面対決! ――月明かりの下、砲弾飛び交い水煙噴き上がる混乱に乗じ、草加(くさか)は「大和」奪取の機会をうかがう。「みらい」のレーダーはその瞬間(とき)を逃すまじと「大和」の艦影を追いつづけるのだが……!? 本編のほか、詳細解説「日米最終決戦(3)」も同時収録!

第30巻のストーリーを紹介!

「大和」脱走――。草加(くさか)の同志たちに掌握(しょうあく)された戦艦「大和」は、帝国海軍の指揮系統をついに離脱。世界最初の原子爆弾をその巨体に宿しつつ、米上陸部隊の結集する海域に向け北上する。「みらい」はその恐るべき“意思”を阻(はば)むべく、「大和」の航跡を追いつづける――!!

第31巻のストーリーを紹介!

同じ月を見ても、同じには見えない二人――。1年半前、ミッドウェーの洋上で出会った草加(くさか)と角松。この時代にもっとも互いを理解し合いながら、その目指す先はあまりにもかけ離れていた……。ただ一艦、草加の“野望”を積んで北上する戦艦「大和」に、角松の“60年後のイージス艦”「みらい」が立ちはだかる!

第32巻のストーリーを紹介!

イージスシステム、沈黙!! ――草加(くさか)操る「大和」が放った三式弾によって、“60年後のイージス艦”「みらい」の対空レーダー、SPY-1Dは崩壊。“電子の眼”を喪(うしな)った「みらい」の行く手は、闇に閉ざされたのか……!? かわぐちかいじが「沈黙の艦隊」を超えるスケールで描く、海と戦いの黙示録(もくしろく)!!

第33巻のストーリーを紹介!

艦載ヘリSH60J(シーホーク)、突入!! ――草加(くさか)の指揮する戦艦「大和」を航行不能にするため、“60年後の自衛官”小栗は、「大和」を直上から攻撃しようと決意。対する草加は、零式観測機からすべてを監視していた……。そして「大和」の上空には、さらに“もう一機”の機影が接近するのだが……!?

第34巻のストーリーを紹介!

彼は、舞い降りた。――“60年後の自衛官”小栗による捨て身の攻撃により、戦艦「大和」の機関は停止。一部始終を上空から見届けた草加(くさか)は、ついに「大和」甲板上に降り立つのだが……!? “歴史改竄(かいざん)の革命家”草加のもたらす、起死回生の策とは何か。かわぐちかいじが圧倒的なイマジネーションで描き出す、歴史横断大ヒット作!

第35巻のストーリーを紹介!

《全力を以(も)って「大和」を撃沈せよ!》――マンハッタン計画について紛糾(ふんきゅう)する閣議のさなか、ホワイトハウスにもたらされた一通の電文。アメリカはついに、草加(くさか)の意思と原爆の存在を知る。ルーズベルトは、その抹殺(まっさつ)を指示する……! かわぐちかいじが圧倒的なイマジネーションで描き出す、歴史横断大ヒット作!

第36巻のストーリーを紹介!

太平洋の熱き焦点。それは、「大和」の艦内にて目覚めを待つ原子爆弾!! 草加(くさか)の計画を阻止するため、角松(かどまつ)率いる強襲部隊は「大和」へ強襲着艦。あと数時間が、この大戦のヤマとなる……。強い、そして激しい予感が角松の胸を焦がしていた!! そして同じ頃――。“核”と「みらい」の存在を知ったホワイトハウスは揺れていた。環太平洋のすべての視線。それらはいま、「大和」、たったひとつに注がれる!!

第37巻のストーリーを紹介!

我、「大和(やまと)」に潜入せり。――あまたの犠牲を乗り越え、単艦航行を続ける「大和」に乗艦した「みらい」クルー。目的はただひとつ、《草加(くさか)の原爆を葬ること》!! 一方、大統領の直命により、事実上の指揮官として戦線に復帰したカーネル。彼は「みらい」の弱点を看破し、勝負に出るが……!?

第38巻のストーリーを紹介!

艦(ふね)を守るため、パイロットが抱いた決意――。「みらい」の戦力喪失を看破し、事実上の投降を呼びかけたカーネル。艦載ヘリ・SH60J(シーホーク)のパイロット林原(はやしばら)は、「みらい」のダメージをカムフラージュするため、たった1機で米軍に挑むが――!?

第39巻のストーリーを紹介!

足掻(あが)くものだけが、活路を開く。原爆が存在する機関科主倉庫に侵入した、角松(かどまつ)たち「大和(やまと)」強襲部隊。だが、そこには草加(くさか)の罠(ワナ)がしかけられていた。密閉された倉庫に間断なく注ぎ込まれる海水。角松たちは脱出することができるのか――!?

第40巻のストーリーを紹介!

これは、国運を賭けた「ドミノ倒し」なのだ。――海軍、陸軍、連合国、枢軸国……さまざまな思惑が絡み合うなか、内地では滝(たき)が講和に向け静かに動いていた。それは、「ドミノ倒し」のようにひとつの間違いも許されない慎重な作業。そして、すべての鍵を握るマリアナの原爆。草加(くさか)が最初の一枚を倒したとき――我々の知る歴史は消滅する。

第41巻のストーリーを紹介!

角松(かどまつ)二佐、裏切りの告白――。原爆の起爆が迫る「大和」の艦内。右足に重傷を負った角松は、思いつめた顔で草加(くさか)に語りはじめる。「自分が生まれた日本に帰れないのならば、この世界も戦争も、どうなろうと知ったことではない」さらに、楽に死なせてくれとの哀願まで……。困惑する「みらい」乗員。角松の発言は、懺悔(ざんげ)か虚辞(きょじ)か!?

第42巻のストーリーを紹介!

草加(くさか)は最期に何を託したのか――。原爆を抱えた戦艦「大和」轟沈の渦に飲み込まれる角松(かどまつ)と草加。頭に傷を負った草加は、最大の敵対者である角松に対し、自分を見捨てて生き残れと迫る。

第43巻のストーリーを紹介!

堂々完結。――200X年6月。合同演習に参加するため、横須賀からハワイに向け出航する“国防軍”の最新鋭イージス艦「みらい」。埠頭には、帽子を掲げて彼らを見送る一人の車椅子の老人がいた――。9年3ヵ月におよぶ航海は、衝撃の結末を迎える!!

感想・解説・評価

太平洋の戦場を舞台に繰り広げられる孤軍奮闘劇

舞台は西暦200X年。海外派遣によりエクアドルへ向かう海上自衛隊の自衛艦隊のイージス艦みらいはミッドウェー沖合で突如嵐に巻き込まれる。そんなみらいが直面したのは不可思議な現実。なんとミッドウェー海戦直前の1942年6月4日の太平洋上にタイムスリップしていたのだ。そしてみらいは大日本帝国海軍連合艦隊に遭遇する…

その名の通り未来からやってきたみらいは、他の艦艇とは比較にならない戦闘力を持っている。一隻で空母艦載機の大編隊を数分で撃墜でき、トマホークミサイルで空母を沈めることもできれば、機動艦隊を無力化することもできる。

圧倒的な力を持った存在というのは前作『沈黙の艦隊』にも通じるテーマだ。だが、『沈黙の艦隊』では核兵器の搭載の有無が交渉材料になったのもあり手を出しにくいという事情もあった。みらいは違う。文字通り圧倒的な軍事力を有しているのである。その圧倒的な軍事力により歴史が変化していく様子を見るのは気持ちがいい。

政治ではなく、歴史を描いた作品

前作『沈黙の艦隊』も原子力潜水艦を描いたミリタリー作品だった。一隻で圧倒的な力を有しているという設定はどちらにも共通している。

だが『沈黙の艦隊』は現代を舞台にした作品だった。それゆえに潜水艦同士の戦闘シーンも描かれたものの、物語の神髄は「一国に属さない圧倒的な軍事力が登場したときに各国がどのように対応するか」という点にあったようにも思う。当事国の日本に加え、アメリカ、イギリス、フランス、中国、ソ連という安保理の常任理事国がどのように対応するのか。そのときにどのような意思決定のプロセスが取られるのか。各国の足並みはそろうのか。そういう政治が描かれていた。

『ジパング』はそうではない。タイムスリップしたという設定も合わせて歴史が描かれる。かわぐちかいじの作品には「日本」や「日本人」というテーマが一貫してある。

『沈黙の艦隊』が現代の日本(人)を描いた作品なら『ジパング』は過去の日本(人)を描いた作品ともいえる。そのどちらも現代日本を語るうえで重要なものだろう。その流れは近作『空母いぶき』へとつながっている。

残念だったラスト

物語の終盤では戦艦大和と日米の海戦が描かれる。物語の終着点ともいうべき一大決戦で、いわば関ヶ原の戦いともいえる重大な転換点だ。

だがいかんせん長すぎる。それまでの戦いが一巻から二巻程度だったのに対して、この海戦は26巻から43巻まで実に物語の三分の一以上を費やして描かれる。確かにそれまでの伏線を回収しつつ、草加の計画の全貌を明らかにする物語の”山場”なのは間違いない。

そういうことが分かっていてもやっぱり長いのだ。丁寧に積み上げてきた見せ場ををじっくり描きたいにしてもダラダラとした展開だと感じてしまう。

最終43巻では、太平洋戦争が終わり、史実とは違う戦後が描かれ物語は終わりを告げる。この戦後編はたった5話しかない。史実とは異なる形とはいえ、戦後には様々な動きがあり、その動きをみらいに関係する人物が抑えていたことが示唆されている。

物語の重きをどこに置くか。それは作者の自由だ。とはいえ感動的なラストシーンを迎えるために準備された戦後編がたった5話では物足りなく感じた。もう少しページを割いてくれたら…というのが率直な感想だった。

合わせて読みたい本

沈黙の艦隊

日米は、世界でも類をみない高性能な原子力潜水艦「シーバット」を、極秘裡に造り上げる。日本によって資金、技術提供をされた日本初の原潜であったが、米第7艦隊所属という、数奇の宿命を背負った落とし子でもあった。艦長には、海自一の操艦と慎重さを誇る海江田四郎が任命された。が、海江田は突如、試験航海中に指揮下を離れ、深海へと潜行する。米軍は「シーバット」を敵と見なし、撃沈のため第3、第7艦隊を南太平洋に集結。しかし、大胆にもシーバットは艦隊中最大の空母「カールビンソン」の目前に堂々と浮上。独立国家「やまと」を全世界に向けて宣言したのだった。

国家に属さない強力な軍事力が登場したら世界はどうするのか。

現代を描いた作品だと思います。作中にはソ連が登場するなど古さを感じる面もありますが、各国首脳が顔を合わせて会合を行うシーンなど読みごたえは抜群。

空母いぶき

20XX年、尖閣諸島沖で
海上自衛隊と中国海軍が衝突!!
戦闘は回避したものの、
危機感を募らせた日本政府は、
最新鋭戦闘機を搭載した
事実上の空母「いぶき」を就役させ、
新艦隊を編成――――!!!
艦長は、空自出身の男・秋津―――。

日中双方が領有を主張している尖閣諸島沖で武力衝突が起きるという仮想戦記物。『沈黙の艦隊』を現代にアップデートしたらこうなるのかもしれないと思いました。

評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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