アンダーカレント(豊田徹也)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

失踪した夫の行方を捜す女性は過去に大きなトラウマを抱えて生きていた。人をわかる(理解する)ことの難しさ、様々な過去を抱えながら生きている人々を描き、海外でも高い評価を受けた著者初の連載作品。

アンダーカレント(豊田徹也)の作品情報

タイトル
アンダーカレント
著者
豊田徹也
形式
漫画
ジャンル
日常
家族
生活
執筆国
日本
版元
講談社
初出
月刊アフタヌーン、2004年10月号~2005年1月号、3月号~6月号、8月号~10月号
刊行情報
講談社、2005年11月
受賞歴
Japan Expo 2009 第3回ACBDアジア賞

アンダーカレント(豊田徹也)の概要

アンダーカレント(豊田徹也)の目次

全11話

作者

豊田 徹也(1967年 – )

漫画家。茨城県出身。1989年、アフタヌーン四季賞夏のコンテストにて「のら犬のいない街に住みたくない」が準入選を受賞するもデビューにいたらず。その後沈黙期間を経て、2003年、買い取ってもらう目的で描き上げた「ゴーグル」で、アフタヌーン四季賞夏のコンテストの四季大賞を受賞しデビュー。2004年10月より一年間にわたり「アンダーカレント」を『月刊アフタヌーン』にて連載。その静謐な表現が一部で高く評価された。

アンダーカレント(豊田徹也)の刊行情報

  • 豊田徹也 『アンダーカレント』 講談社〈アフタヌーンKCDX〉 2005年11月22日初版発行

アンダーカレント(豊田徹也)の登場人物

関口かなえ
主人公。30歳前後。銭湯を夫婦とお手伝いさんの3人で切り盛りしていたが、夫が蒸発。今はおばさんと2人で銭湯を営む。


かなえの銭湯に臨時雇いとしてやってきた男性。寡黙ながら働きぶりは真面目。

菅野
かなえ、悟の学生時代からの友人。かなえに山崎を紹介する。

山崎
探偵。本当は「ヤマサキ」だが、みんな「ヤマザキ」と呼んでいる。食えない性格。作者の短編「ミスター・ボージャングル」(『ゴーグル』所収)にも登場する。

関口悟
かなえの夫。突然蒸発し、消息不明となる。

アンダーカレント(豊田徹也)の感想・解説・評価

人をわかるということの難しさ

『アンダーカレント』は夫がいなくなってしまった女性・かなえが営業を休んでいた銭湯を再開することから幕を開ける。おばちゃんや謎の男性・堀の助けもあって銭湯の営業は順調だ。

しかし夫を突然失踪という形で失ったかなえが心理的に受けた傷は根が深い。かなえは日々自殺者のニュースに目を通し、時折どこを見るでもなくぼんやりと考え事をしている。そんなかなえは友人の勧めで探偵に夫の捜索を依頼することになる。だが、その探偵にも夫のことを全然理解していなかったことを見抜かれてしまう。

かなえと悟の結婚生活は四年に及んだ。その結婚生活の中で夫のことを本当に理解できていただろうかと考えこむかなえの姿には誰もが共感を覚えることだろう。他人を互いに分かり合うということに明確な答えはないが、物語のラストでかなえは人を理解するために努力が必要なことを再確認していた。答えがないながらもその人なりの結論にかなえは辿り着いたようだ。

三者三様の過去

物語が進むにつれ、かなえ、悟、堀の過去が明かされていく。人について理解しようとするとき、その人の過去を知ることは重要だ。だが、本作では読者はもちろん登場人物同士も互いの過去について知らない。

その人の過去のトラウマ、コンプレックスを知らないときにコミュニケーションは難しくなる。登場人物たちはそれでもその人のことを知ろうとするし、想いを寄せようとする。その姿に好感が持てる作品だ。

センスのいい構図やかっこいい台詞は健在

作者豊田哲也は寡作の漫画家であり、単行本で読めるのは、長編2作『アンダーカレント』『珈琲時間』、短篇集『ゴーグル』、そのほかアンソロジーコミック『蟲師外譚集』に収録されている中編一作だけだ。

作品に共通しているのは、作中に静謐な質のいい雰囲気が流れているということ。物語は大きな事件のない日常のストーリーを切り取ったものが多い。様々な角度から一瞬を切り取る作風は大友克洋や谷口ジローから影響を受けたと思われる。

物語はオシャレな映画のワンシーンを切り取ったようなセンスのいいカットや台詞を含んで進行していく。上質な時間を求めている漫画好きの方におすすめの作品だ。

合わせて読みたい本

珈琲時間

「コーヒー」をモチーフにした芳醇な短編集です。

静かな時間が流れる作品が集まっています。

ゴーグル

こちらも短編集です。

豊田さんの作品はどれもそうですが、元気を貰える一冊だと思います。明日も生きていこうというエネルギーを感じます。

アンダーカレント(豊田徹也)の評判・口コミ・レビュー

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