「風俗紊乱の書」ふらんす物語(永井荷風)のあらすじ・解説・感想

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ふらんす物語(永井荷風)の作品情報

タイトル
ふらんす物語
著者
永井荷風
形式
紀行文、小説
ジャンル
フランス
執筆国
日本
版元
近代文学館
執筆年
1908年
初出
1908年
刊行情報
近代文学館、1968年

ふらんす物語(永井荷風)のあらすじ・概要

作者

永井 荷風(1879年12月3日 – 1959年4月30日)

小説家。東京都文京区出身。高商付属外国語学校清語科中退。広津柳浪・福地源一郎に弟子入りし、ゾラに心酔して『地獄の花』などを著す。1903年より1908年まで外遊。帰国して『あめりか物語』『ふらんす物語』(発禁)を発表し、文名を高める。1910年、慶応大学教授となり「三田文学」を創刊。その一方、花柳界に入りびたって『腕くらべ』『つゆのあとさき』『濹東綺譚』などを著す。1952年、文化勲章受章。1917年から没年までの日記『断腸亭日乗』がある。

ふらんす物語(永井荷風)の刊行情報

ふらんす物語(永井荷風)の感想・解説・評価

あこがれのフランスに滞在した荷風の作品集

永井荷風は24歳から5年弱欧米に渡り、銀行マンとして働いた。ただ、最初に訪れたアメリカ・ニューヨークでの生活と銀行勤めは肌に合わなかったようだ。その生活の間にフランスへの憧れはどんどん募っていき、父の協力もあり、同じ横浜正金銀行のリヨン支店に異動することが決定。憧れのフランスの地を踏むことになる。

渡仏後も銀行務めは合わなかったようで、荷風は結局8か月で退職してしまう。退職後はパリに2か月滞在したのち帰国。本作は、10か月のフランス滞在中に書き溜めた紀行文、短編小説、漫録からなる作品集だ。

発禁処分になり60年間封印された「風俗紊乱の書」

とにかく読んでて伝わってくるのは「荷風のフランス好き」ということだ。「憧れ」と書いたが、盲目的・フランス至上主義者と言ってもいいくらいのフランス狂いなのだ。

権力嫌いで反骨精神に満ちた荷風は、明治政府や日露戦争の“戦勝”気分に沸く当時の雰囲気が大嫌いだったらしく、とにかく日本を下げフランスを上げる書き方をしている。本書は「風俗を乱す」との理由で発売が禁止され、当初の予定から60年後ようやく発売された。たしかにフランスの娼婦の話なども書かれているが、そのことより日本を下げた書き方をしているのが問題視されたのだろう。永井荷風の女好き、オペラ好き、フランス好きな一面を知るには充分な一冊だ。

憧れの地フランスを旅して歩いた荷風

荷風がフランスでの生活を始めたのは、嫌々ながらアメリカでの銀行勤めを4年続けた後のことだった。そのせいもあってか、とにかく到着時の感激は大きかったようだ。

「フランス!ああフランス!!」
「ああ!パリ―!自分は如何なる感に打たれたであろうか!」

岩波文庫より

なんせ船の上からフランスの街並みを見ただけで、「ニューヨークの屋根の四角い建物ばかり見ていたからフランスの人家は自然で美しい」などと思うほどだ。そんな憧れの土地を荷風は短い滞在期間の中で旅している。

フランスの風土気候を論じた「秋のちまた」や、文豪たちが眠る墓地巡りを描いた「墓詣」、リヨン郊外の秀逸な描写が印象的な「蛇つかい」など、フランスのガイドブックのような一面を持っている。特にパリは、街々の名所旧跡・歴史・由緒を紹介しており、お気に入りだった。

全体を通して感じるのは「フランスって素晴らしいよね。日本はクソだけど」という当時の荷風の心境だ。紀行文の中で、フランスは良いところばかりが書いてあるが、日本は嫌なところばかりが書いてある。「フランスって素晴らしいよね」で終わらずに、「日本はクソだけど」と付け足しているあたりに好みが分かれるだろうが、それだけに率直な感情がおもしろくもあり、なんだか悲しくもなる本だ。

合わせて読みたい本

あめりか物語

フランス滞在前に、若き永井荷風が4年間を過ごしたアメリカ滞在を素材にした短編集です。小説とも随筆とも言えない文章が綴られています。

「ふらんす物語」の序曲だという人もいますし、斬新で瑞々しい作品だという人もいれば、未熟な習作であるという人もいます。そのどちらにせよ、本作がなければ「ふらんす物語」もなかったのではないでしょうか。その意味で荷風の中でも重要な位置を占める作品だと思っています。

荷風がアメリカの生活の中で親しんだというオペラやフランス文学、白人女性との交際などにも触れつつ、日米の違い、格差、人種など現代にも通じるテーマを論じています。「ふらんす物語」との比較もいいですし、英国留学で神経衰弱に陥った漱石との比較もおもしろいと思います。

ふらんす物語(永井荷風)の評判・口コミ・レビュー

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