地球儀のスライス&僕に似た人(森博嗣)のあらすじ(ネタバレあり)・感想

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森ミステリィのこれまでとこれから
S&Mシリーズに続くVシリーズ主要人物も登場する傑作短編集!

地球儀のスライスの作品情報

タイトル
地球儀のスライス
著者
森博嗣
形式
小説
ジャンル
ミステリ
執筆国
日本
版元
講談社
初出
下記
刊行情報
講談社文庫

地球儀のスライスのあらすじ・概要(ネタバレなし)

「黒窓の会」。西之園萌絵を囲んで開かれるその秘密の勉強会にゲストとして招かれた犀川創平は、古い写真にまつわるミステリィを披露した。

屋根飾りと本体が別々になった奇妙な石塔は、何のために作られたのだろうか。S&Mシリーズ2編を含む、趣向を凝らした10作を収録。『まどろみ消去』に続く第2短篇集。

地球儀のスライスの目次

  • 小鳥の恩返し 「メフィスト」1997年12月号
  • 片方のピアス 「メフィスト」1998年10月号
  • 素敵な日記 「メフィスト」1998年5月号
  • 僕に似た人 書き下ろし
  • 石塔の屋根飾り 「ポンツーン」第1号
  • マン島の蒸気鉄道 「メフィスト」1998年12月号
  • 有限要素魔法 書き下ろし
  • 河童 「小説すばる」1998年5月号
  • 気さくなお人形、19歳 書き下ろし
  • 僕は秋子に借りがある 「小説すばる」1998年8月号

作者

森 博嗣 もり・ひろし(1957年12月7日 – )

小説家。愛知県生まれ。東海中学校・高等学校を経て、名古屋大学工学部建築学科卒、名古屋大学大学院修士課程修了。工学博士。

1995年に初めての小説『冷たい密室と博士たち』を執筆。メフィストに投稿し、編集部から高い評価を受ける。第4作『すべてがFになる』に合わせ編集部がメフィスト賞の開催を決定。同作が第1回メフィスト賞受賞作となり、デビューを飾った。

地球儀のスライスの刊行情報

  • 講談社ノベルス – 1999年1月発行
  • 講談社文庫 – 2002年3月発行

地球儀のスライスの登場人物

犀川創平(さいかわ そうへい)
国立N大学工学部建築学科助教授

西之園萌絵(にしのその もえ)
国立N大学工学部建築学科

地球儀のスライスの感想・解説・評価

「僕に似た人」について

「僕に似た人」を読み始めたものの、よく分からないまま読み終えてしまった人も多いでしょう。なにか伏線や仕掛けがあることは分かるけれど、具体的に何が仕掛けられているのは分からない。

僕も最初に読んだときはそうでした。

そんな状態に陥った人は以下のネタバレ解説を読む前に、続く短篇「石塔の屋根飾り」を読んでみてほしいと思います。大サービスのヒントが展開されていて、きっと「僕に似た人」を読み返したくなると思います。

最大のヒントとして配置されているのは、最終ページにある「二十一階」という数字。

「随分高層のマンションなんだな」と思うのが普通の人ですが、S&Mシリーズを読んだことのある人なら、「あっ!」と気が付きたいものです。

20階に住んでいた「僕」が、21階に住んでいるまあ君に挨拶に行くことも当然なわけですね。

そう、つまり、

  • まあ君=西之園都馬
  • まあ君のお母さん=西之園萌絵
  • まあ君のお父さん=諏訪野

というわけです。

普段、犀川と哲学的&形而上学的なトークを展開している萌絵ですが、「僕に似た人」では、男の子との微笑ましいやりとりが描かれます。印象的なのは以下の部分。

「僕に似ている人は、僕みたいに頭が悪いの?」と僕がきくと、まあ君のお母さんは、「誰がそんなことを言った?」と怒ったような顔をしたので、僕はびっくりしました。
「誰が、シュンちゃんの頭が悪いって言ったの?」もう一度、まあ君のお母さんが言います。

S&Mシリーズの萌絵は「常識知らずのお嬢様」「事件に首を突っ込む怖い物知らず」のイメージ。

「僕に似た人」の中での萌絵のイメージは違いますね。「頭が悪い」ということを気にしている少年にも優しく声を掛けています。(もしかしたら、少年はなにか障碍を抱えているのかもしれません)犀川先生とのやりとりばかりを見ている読者にとっては、萌絵の魅力的な大人の一面が見られたとも言えます。

犀川先生とざっくばらんなやりとりをしている萌絵を見て、叔母の睦子が驚く場面がありますが、犀川先生以外の人と対する萌絵はこんな女性なのかもしれません。

合わせて読みたい本

すべてがFになる

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

デビュー作であり、S&Mシリーズの一作目です。

ネタバレを見ることなく読んでほしい作品です。理系の知的な会話。犀川&萌絵の気になる関係。きっとシリーズが読みたくなると思います。

地球儀のスライスの評判・口コミ・レビュー

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