【おすすめ】佐伯一麦の全小説作品を一覧であらすじを紹介します

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佐伯 一麦 さえき・かずみ(1959年7月21日 – )

小説家。宮城県仙台市に生まれ。宮城県仙台第一高等学校卒業。週刊誌記者や電気工など様々な職業を経験する傍ら、1984年、『木を接ぐ』により第3回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。電気工として勤務中にアスベストの被害で肋膜炎にかかり、喘息の持病を抱えながら執筆を行なっており、関連する著作も執筆している。1990年、『ショート・サーキット』により第12回野間文芸新人賞受賞。1991年、『ア・ルース・ボーイ』により第4回三島由紀夫賞受賞。1997年、『遠き山に日は落ちて』により第1回木山捷平文学賞受賞。2004年、『鉄塔家族』により第31回大佛次郎賞受賞。2007年、『ノルゲ Norge』により第60回野間文芸賞受賞。2014年、『還れぬ家』により第55回毎日芸術賞受賞。2014年、『渡良瀬』により第25回伊藤整文学賞受賞。2020年、『山海記』により第70回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

おすすめ作品ランキング

長い記事なので、先におすすめランキングを紹介します!

  • 1位:ア・ルース・ボーイ
  • 2位:還れぬ家
  • 3位:空にみずうみ

作品一覧リスト

雛の棲家』1987年

ショート・サーキット』1990年

若くして父となったかれは生活のため配電工となった。都市生活者の現実に直面するうち3人の子供の父となり、妻はすでに子供たちのものになってしまった。今日も短絡事故(ショート・サーキット)が起こり、現場にかけつける――。野間文芸新人賞受賞の表題作に、海燕新人文学賞受賞のデビュー作「木を接ぐ」をはじめ、働くということ、生きるということをつきつめた瑞々しい初期作品5篇を収録。

一輪』1990年

ア・ルース・ボーイ』1991年

生きる意味を探す元エリート少年の青春小説。

性悪な英語教師をブン殴って県下有数の名門進学校・I高を中退した17歳の斎木鮮は、中学時代の恋人だった幹とアパートで一緒に暮らし始める。幹もまた父親の分からない子を産んだばかりで女子高を退学していた。
さまざまな世間の不条理に翻弄されながらも肉体労働での達成感や人間関係の充足を得て徐々に人として成長していく鮮――。
幼少期に性的悪戯を受けた暗い過去や、母親との不和による傷に苦しみながらも鮮は一歩ずつ前へと歩みを進めるのだった。

木の一族』1994年

遠き山に日は落ちて』1996年

男女の本質的な愛のあり方を探る長編小説。

都会を離れ、蔵王山麓の町で新しい生活を始める草木染めの作家・奈穂と小説家・斎木。それぞれに土地に溶け込み、新しい人生のときを刻み始める。静かに描き出す愛のかたち。

あんちゃん、おやすみ』1997年

川筋物語』1998年

鉄塔家族』で大佛次郎賞を受賞した、現代でもっとも真摯に「私小説」を追求している著者が、生まれ故郷である杜の都・仙台に戻り、みちのくの山や川を歩きつつ、その風土と歴史を静謐な筆致で描く。『鉄塔家族』に先行する連作長編。

まぼろしの夏 その他』2000年

ほの暗い生の奥底から射し始める再生の淡い光
仙台の川べり、ノルウェーの空の下、押し寄せる想いの源流には何があるのか?9つの作品群を通じて浮かび上がる男の消息……沈潜の日々からのゆるやかな寛解を描く。

マイ シーズンズ』2001年

ひと組の夫婦がある芸術家に導かれるように訪れた国・ノルウェー。その旅によって彼らが初めて見つめたたくさんの事柄。夫婦とは? 生死とは? きめ細やかな筆致で描く書き下ろし長編小説。

無事の日』2001年

オスロの美術大学へ招待留学した染織家の妻と一年間、異国で生活し帰国した小説家の茂崎は、喘息の発作で苦しみながら、小さな喜びを見出し暮らしを立て直す。本質的な生の在りかを探る小説。

鉄塔家族』2004年

街のシンボルでもある放送用鉄塔の建設が進む東北の都市を舞台に、その麓に暮らす人々の生活を情緒豊かな筆致で、丁寧にたんたんと描く。小説家・斎木と草木染作家・菜穂の夫婦を中心に、喫茶店のオーナー夫妻、単身赴任のサラリーマン、一人暮らしの老婦人など、それぞれの家族が抱える喜びや哀しみを四季おりおりの草花や野鳥などに溶け込むように語っていく。2004年大佛次郎賞受賞作、待望の文庫化。

草の輝き』2004年

もう一つの生きかたを草木染にもとめて。

植物たちの発する色に魅せられ、会社を辞めて草木染の道へ――。柊子の修業の日々と恋の予感。東北の地方都市でくりひろげられる、ひたむきな日常を精緻な文体で紡ぐ。静かな感動が広がる長編。

ノルゲ Norge』2007年

染色家の妻の留学に同行し、作家はノルウェーに一年間滞在した。光り輝く束の間の夏、暗雲垂れ込める太陽のない冬、歓喜とともに訪れる春。まっさらな心で出会った異郷の人々との触れ合いを縦糸に、北欧の四季、文学、芸術を横糸に、六年の歳月をかけて織り上げられた精神の恢復と再生のタペストリー。野間文芸賞受賞作。

ピロティ』2008年

エゴがぶつかりゃ、人情も通う

マンションが現代の長屋なら、管理人は長屋の大家さんのようなものだ。後任に仕事を引き継ぐ管理人の言葉を通じて、人間の心の深層を、野間文芸賞作家が軽妙なリズムで描く。

誰かがそれを』2010年

野間文芸賞作家の最新短編集

身辺の情景を静かに綴った私小説、居酒屋の客と女将のひとときを描いた小品、伊達政宗を題材にした歴史小説など、野間文芸賞作家の新たな魅力があふれる全8作。

還れぬ家』2013年

十代で捨てた家だった。姉も兄も寄りつかない家だった。老父は心臓病を患い、認知症が進む。老母は介護に疲弊していた。作家は妻とともに親を支えることになった。総合病院への入院も介護施設への入所も拒む父、世間体と因襲に縛られる母。父の死後、押し寄せた未曾有の震災。――作家は紡ぐ、ただ誠実に命の輪郭を紡ぎ出す。佐伯文学の結実を示す感動の傑作長編。毎日芸術賞受賞。

光の闇』2013年

電気工をしていた20代にアスベストの被害で肋膜炎にかかり、以後、喘息の持病を抱えながら作家活動を続けている、私小説作家・佐伯一麦氏の連作短篇集。 アスベスト被害で著者自身のなかに、肉体的欠損感覚が存在している。 そのことを緒にして、著者を思わせる主人公が、さまざまな肉体的欠陥を持ったひとびとの「欠損感覚」を探っていく物語。 視覚障害の夫婦、義足の女性、声帯を失った作家、嗅覚障害を患った寿司屋のおかみさん、盲学校の先生、聴覚障害者、そして記憶を失った板前の話……。

渡良瀬』2013年

茨城県西部の町にある配電盤製造の工業団地。28歳の南條拓は、東京の電気工としてのキャリアを捨て、ここで一工員として働き始めた。昭和の終焉も間近なざわついた空気のなか、渡良瀬川近くの乾いた大地に新天地を求め、妻、三人の幼子とともに越してきたのだ。――『海燕』連載の未完長篇小説がついに完結、単行本となった。

日和山 佐伯一麦自選短篇集』2014年

新聞配達の早朝の町で、暗天に閉ざされた北欧の地で、染織家の妻と新たな暮らしを始めた仙台の高台の家で、そして、津波に耐えて残った小高い山の上で――「私」の実感をないがしろにしない作家のまなざしは常に、「人間が生きて行くこと」を見つめ続けた。高校時代の実質的な処女作から、東日本大震災後に書き下ろされた短篇まで、著者自ら選んだ9篇を収録。

空にみずうみ』2015年

著者を彷彿させる作家の早瀬と妻の染色作家・柚子、東北地方に暮らす夫婦の、「震災三年後」の一年間を描く。豊かな自然、さまざまな生き物の気配、近所の人々との交流、梅干しを漬けたり草むしりをしたり……という何気ない日々の生活。大きな事件は起こらない。しかし、その「何気ないこと」が続いていく日常の大切さが伝わってくる作品。

山海記』2019年

東北の大震災後、水辺の災害の歴史と土地の記憶を辿る旅を続ける彼は、その締めくくりとすべく、大震災と同じ年に台風12号による記録的な豪雨に襲われた紀伊半島に向かった。バスの車窓から見える土砂災害の傷跡を眺める彼の胸中には、クラシック好きで自死した友・唐谷のことなど、さまざまな思いが去来する。現代日本における私小説の名手が、地誌と人びとの営みを見つめて紡ぐ、人生後半のたしかで静謐な姿。

アスベストス』2021年12月

かつて建築資材などに広く使われていたアスベスト(石綿)。その細かい繊維を肺に吸い込むことで、長い潜伏期間を経て肺がんや中皮腫を発症することから、「静かな時限爆弾」とも呼ばれる。著者は若い頃、電気工事工として働く中、現場でアスベストを吸い込み、今なお後遺症を抱えている。その経験をノンフィクションとして、『石の肺―僕のアスベスト履歴書』に書いたが、本書はその小説版と言える。仙台、ロンドン、東京、尼崎とアスベストの被害に苦しむ人びとの運命を綴った連作小説集。行政の対応が後手に廻り、結果として弱い個人が犠牲となっていく構図は、コロナ禍にも通じるものがある。

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