【おすすめ】佐藤正午の全作品を一覧であらすじを紹介します

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佐藤 正午 さとう・しょうご(1955年8月25日 - )

小説家。長崎県佐世保市生まれ。北海道大学文学部国文科中退。大学在学中に小説を書き始める。1983年に『永遠の1/2』がすばる文学賞を受賞しデビュー。2015年、『鳩の撃退法』で山田風太郎賞受賞。2017年、『月の満ち欠け』で第157回直木賞受賞。

おすすめ作品ランキング

長い記事なので、先におすすめランキングを紹介します!

  • 1位:月の満ち欠け
  • 2位:鳩の撃退法
  • 3位:身の上話

作品一覧リスト

永遠の1/2(1984年1月)

田村宏、27歳。“失業したとたんツキがまわってきた”とはいうものの競輪の儲けで暮らす失業者……。競輪場でやけに脚のきれいな元人妻・良子と知り合うが、その頃から宏そっくりの男が街に出没、次々に奇妙な事件にまき込まれていく。青春の日の陰りと明るさを日常感覚のリズミカルな言葉でとらえる長編小説。第7回すばる文学賞受賞作にして鮮烈なデビュー作。

王様の結婚(1984年12月)

「これまでにいくつか恋をして、いくつか恋を失って、そのたびに3日で立ち直ってきたじゃないか。しっかりしろ!」ジョン・レノンが死んだ日にふられた男の消すに消せない恋の記憶……。以来、すっかり落ち込んだ日常と輝やかしい甘美な過去を交錯させて、男に再び訪れた新しい恋の季節を、ホロ苦いユーモアで描く青春小説。

リボルバー(1985年11月)

――あいつこんど会ったら殺してやる。まだまだぼくは怒りを憶えつづけなければならない。理不尽な暴力で、屈辱を味わった17歳の少年は、偶然実弾入りの拳銃を手に入れる。少年は決心し旅立つ。自分を叩きのめした男に「仕返し」をするために。――拳銃と職を失った元警察官は、少年の跡を追う。昔を忘れるために。スリリングな2000キロの旅の果てに待つのは!?

ビコーズ(1986年4月)

次作を書けずにいる新人作家のぼくは、ある日、十代の頃の相棒・寺井と10年ぶりに再会する。しかし、彼は無茶な依頼を口にしたのち、ぼくの前から消えてしまった。寺井を追うほどに胸を過る10年前の忘れ得ぬ出来事と映子の姿。思いがけず始まった人捜しが、止まっていた時間を揺り動かす。若き日の恋と苦い過去が織りなす人間模様。直木賞作家の才気あふれる初期傑作!

恋を数えて(1987年2月)

賭け事をする男とだけは一緒になるな。それが母の遺言でした。

幸せになれないとわかっていても、どうしても好きになってしまう相手がいる。いつかせつない思いを抱えることになると予感していても……。地方都市の夜の街で働く秋子の、やるせなくも静かな日々を描く。

童貞物語(1987年3月)

あの夏、ぼくは江川との甲子園対決を夢みる高校生だった。だが、父の死によって、少しだけ早く人生の決断を迫られた。友情、恋、夢…。あらゆる可能性がきらめいていた、あの日々へのレクイエム。

女について(1988年4月)

彼女はぼくと同じ18歳だった。初めての女性だった。好きかと尋ねられて頷(うなず)いた――家族以外の女性についた初めての嘘。嘘を重ねるため他の女性を拾い、途切れ途切れに続いた彼女との関係も、ぼくが街を出ることで終止符が打たれた――。そして長い時を経て、ぼくは再び彼女と出逢った(「糸切歯」)。青春のやるせなさ、ほろ苦さを瑞々しい感性で描く秀作集。(『恋売ります』改題)

  • 女について(1988年4月 講談社)
  • 恋売ります(1991年4月 講談社文庫)
  • 女について(2001年4月 光文社文庫)

個人教授(1988年12月)

桜の花が咲くころ、休職中の新聞記者であるぼくは一つ年上の女と酒場で再会し、一夜をともにする。そして数ヵ月後、酒場を再び訪れたぼくが聞いたのは、二十八歳の彼女は妊娠しているという噂だった。

夏の情婦(1988年12月)

「鳩の撃退法」、「月の満ち欠け」と、次々に小説読みたちを唸らせる傑作を発表し続けている著者が、「永遠の1/2」でのデビュー直後に執筆した恋愛小説五編を収録。

私の犬まで愛してほしい(1989年6月)

夕ぐれのベランダで、港に沈む陽を眺めながら、缶ビールをあけて考える――。最初の小説を書きあげる決心をさせたスクリーンの女のこと。野球に明けくれた少年時代。諫早、佐世保、札幌と移り住んだ町のこと。息子の縁談に熱心な母のこと。「永遠の1/2」で鮮烈にデビューした新進作家の誕生から今までの全軌跡。乾いたユーモアとアンニュイな優雅さが魅力のオリジナル・ファースト・エッセイ。

人参倶楽部(1991年4月)

女が髪を切る。男はためいきをつく。女が疲れて帰ってくる。男は優しく寝顔を見守る――。深夜の地方都市、スナック「人参倶楽部」で男と女の愛と嫉妬の火花が静かに散る。愛の連環小説10話。

放蕩記(1991年8月)

私はなぜ小説を書くのか。お金のためである。――処女作が新人賞を取って売れまくり、使っても使ってもお金が入ってくる“ぼく”、海藤正夫(かいどうまさお)。昼も夜もなく、酒と女に溺れる放蕩の日々。それは果てしなく続くと思われたが、ある日金が底をつき、あっけなく終わる。どん底の中、小説家が見つけた真実とは? 各章ごとに文体が変貌する、佐藤正午のみに書きうる傑作。

スペインの雨(1993年5月)

「今日これから会える?」テレフォン・クラブに通って5日め、27歳のぼくに、人妻は言った。そして、思いついた合言葉……「スペインの雨はどこに降る?」「平野に。おもに平野に」……タクシー代もホテル代もぼくに支払わせず、知らぬ間に人妻は部屋から消えた。ぼくは人妻からの電話を待ち続けた(「スペインの雨」)。甘く苦い青春の終わりを噛みしめる9編の恋愛小説集!

彼女について知ることのすべて(1995年7月)

その夜「わたし」は人を殺すため車を走らせていた。愛した女と共謀して、わたしたちに執拗につきまとう女の愛人である男を殺すために――。小学校の教員である「わたし」と、看護婦の女との恋。互いにのっぴきならないしがらみを背負ったふたりが企てた殺害計画は、思いがけない結末を迎える。裏切ったのは女なのか、それとも「わたし」なのだろうか。

取り扱い注意(1996年12月)

僕には「女を蕩けさせ夢中にさせる」という才能があった。県庁の役人としてそつなく仕事をこなし、複数の女と付き合う日々。このまま無難に流れていくかと思えた僕の人生は、叔父の登場で変化しはじめる。

事の次第(1997年3月)

7つの物語が精妙巧緻にリンクする連作短編

今年四十歳になるタクシーの運転手、武上英夫は妻に言えない秘密を三つ持っていた。五年前、放火事件が起こった冬の夜にタクシーに乗せた女との経緯もその一つだった。彼に内緒で定額貯金を積み立てている妻にもまた、結婚前に付き合っていた危険な男との過去があり、五年前の冬の夜に武上英夫のタクシーに乗った女には、妻子ある山田宗雄との短い恋があった。山田宗雄が働く新聞社で記者を務める七種歩は妻のまゆみの浮気に気づき、まゆみとは高校時代の同級生だった有坂弓子は三十五歳になっても結婚できないのは妹のせいだと密かに思っていた。有坂弓子と交際中の竹中昭彦には事故で失った双子の弟がいたが、それを彼女に打ち明けていなかった。
そして街の裏社会に生きる“少年”倉田健次郎は雨の夜、武上英夫のタクシーに乗り込み――。ひとつの街を舞台に炙り出されていく、夫婦の関係、恋人の関係、不倫の関係、一晩かぎりの関係、過去の関係……。それぞれの事情を抱えた男と女が、それぞれの人生の境界線に直面したときに生まれる“事の次第”を巧みに描き出し、交錯し連鎖していく至極の小説集。表題作のほか「寝るかもしれない」「姉の悲しみ」「七分間」など、全七篇所収。

  • バニシングポイント(1997年3月 集英社 / 2000年2月 集英社文庫)
  • 事の次第(2011年9月 小学館文庫)

Y(1998年10月)

ある晩かかってきた一本の奇妙な電話。北川健と名乗るその男は、かつて私=秋間文夫の親友だったというが、私には全く覚えがなかった。それから数日後、その男の秘書を通じて、貸金庫に預けられていた二枚のフロッピー・ディスクと、五百万の現金を受けとることになった私はフロッピーに入っていた、その奇妙な物語を読むうちにやがて、彼の「人生」に引き込まれていってしまう。この物語は本当の話なのだろうか? 時間を超えた究極のラブ・ストーリー。

カップルズ(1999年1月)

男と女の噂の真相を、小説に仕立てた作品集

その街ではいくつもの噂話がささやかれている。
結婚から五年が経ち、すっかり冷えきった仲になった夫婦の噂(「好色」)。
酒と博打と女が原因で街から夜逃げした若い男の噂(「カップル」)。
不幸な事件で命をおとした夫と、未亡人となった女の噂(「アーガイルのセーターはお持ちですか?」)。
街のデパートに勤務する男と、街から上京して活躍している女優との噂(「輝く夜」)。
ある交通事故をきっかけに男が悔やむことになる冬場だけあらわれる娼婦の噂(「あなたの手袋を拾いました」)。
アーケード街で似顔絵を描いて街に住み着いた男の噂(「いまいくら持ってる?」)。
かつて街じゅうの男が群がったホステスとある男の噂(「グレープバイン」)。
そしてその街にはひとりの「小説家」が暮らしていた――。
噂はいつも事実よりひと回り大きい。ただ「小説家」にとってこれほど興味をひかれるものもない。噂の収集に余念のない語り手の「私」はその真相を探りつつ、実際に耳にした噂の数々を可笑しみと皮肉にみちた小説へと仕立てあげてゆく。
文壇屈指の小説巧者・佐藤正午が、その街に暮らす「小説家」の視点を借りて描いた、著者真骨頂とも言える作品集。全七篇を所収。

きみは誤解している(2000年5月)

競輪場を舞台に綴る切ない6つの人間ドラマ

「ねえ聞いてるの? 自分のことを僕って呼ぶ人間がギャンブラーになんかなれるわけないって、あたしは言ったのよ」とマリは婚約者の青年をたしなめる。JRの勤勉な駅員として働く彼の、唯一の趣味は競輪。そんな彼が、死期の近づく父の残した当たり車券を元手に大口勝負を挑もうとする表題作。
信用組合に勤める女が、車券の一点勝負にギャンブルの真髄を見い出したきっかけを語る「遠くへ」。
十三年間定職に就かず、競輪場で儲けた金だけで生活している独りぼっちの男が、中学時代の同級生と再会したときの顛末を告白する「この退屈な人生」。
ある夜明けのくしゃみと三万円分のはずれ車券のせいで、夫婦のあいだに波風が立ちはじめた鮨職人の「女房はくれてやる」。
賭けに負けたことがない女子高生が、姉の婚約者の応援に駆り出されたのを機にこっそり通い出した競輪場で淡い恋心を抱く「うんと言ってくれ」。
同棲相手の会社の金を持ち出したという兄を追って、八年前のある出来事から車券を買わなくなった競輪ファンの弟が佐世保競輪場へ向かう「人間の屑」。
全六篇収録。
競輪場を舞台に繰り広げられる切ない人生が放つ一瞬の輝きを、透明感あふれる文章で綴った珠玉の作品集。

ジャンプ(2000年9月)

その夜、「僕」は、奇妙な名前の強烈なカクテルを飲んだ。ガールフレンドの南雲(なぐも)みはるは、酩酊(めいてい)した「僕」を自分のアパートに残したまま、明日の朝食のリンゴを買いに出かけた。「五分で戻ってくるわ」と笑顔を見せて。しかし、彼女はそのまま姿を消してしまった。「僕」は、わずかな手がかりを元に行方を探し始めた。失踪をテーマに現代女性の「意志」を描き、絶賛を呼んだ傑作!

ありのすさび(2001年1月)

要するに、「ありのすさび」という言葉は未来だけを視つめている青年には似合わないので、その青年を他人事のように眺められる中年にこそ、もしくは中年にさしかかって過去を振り返りはじめた小説家の、随筆のタイトルにこそふさわしいと、そういうことである。(本文より) 机に向かい原稿を一枚一枚増やしてゆく日々―。日常の中に物語が浮かび上がる名随筆。

象を洗う(2001年12月)

実際、この頁を埋めることさえ僕にとっては大仕事である。毎月毎月、締切りの一週間も十日も前から、寝ても覚めても一本のエッセイのことを考えて苦悩を味わい、それでどうにかこうにか書き上げては乗り切っている。そんなふうだから別の仕事にまで手がまわらない。(本文より) 小説家であるゆえの喜び、悲哀、そして葛藤。淡々と過ぎゆく日常を描く名随筆。

side B(2002年12月)

佐藤正午、<賭け人生>20年の全記録

僕は若い頃から本を読み、文章を書き、そのかたわら競輪とつきあってきた。だからできることは次の二つしかない。一つ、競輪場へ行き、競輪をやること。二つ、机に向かって文章を書くこと――文壇屈指の小説巧者と呼ばれる著者のまなざしが机上を離れ、競輪というギャンブルにむけられるとき、そこにはまぎれもない素顔が表出している。小説家・佐藤正午が自らの25年以上にもおよぶ〈もうひとつの顔〉を記録した珠玉のエッセイ集。

豚を盗む(2005年2月)

「生きることの大半は繰り返し」というとき、その「繰り返し」の中に人は生きるための喜び、とまではいかないにしても、慰め、頼り、よすが、何でもいいけどそのようなものを見いだすことができる。(本文より)――変わらないということは、逆に考えれば古びていないということ。書いては眠り、起きては書き、自らの日常を小説家ならではの視点で綴る名随筆。

花のようなひと(2005年9月)

日々の暮らしのなにげない出来事、揺れ動く心象風景――その一瞬の小さな物語を、“恋愛小説の名手”が、さまざまな花々に託してあざやかに描き出した世界を、牛尾篤が洗練された筆致で映し出す。ふたつの才能によるコラボレーションで初めて実現した、優しさの花束。秀作「幼なじみ」をあわせて収録。オールカラー。

小説の読み書き(2006年6月)

小説家はどんなふうに読み,また書くのか.近代日本文学を代表する小説家たちの作品を書き写すように読み解きながら,「小説の書き方」ではない「小説家の書き方」を,小説家の視点から考えるユニークな文章読本.読むことは書くことに近づき,読者の数だけ小説は書かれる.こんなふうに読めば,まだまだ小説だっておもしろい.

5(2007年1月)

結婚8年目の記念にバリ島を訪れた志郎と真智子。旅行中に起こったある出来事がきっかけで、志郎の中に埋もれていたかつての愛の記憶が蘇る。洗練された筆致で交錯した人間模様を描く、会心の恋愛小説。

アンダーリポート/ブルー(2007年12月)

衝撃の結末が加わった傑作長編小説の完全版。

 15年前、ある地方都市のマンションで男が撲殺される事件が起こった。凶器は金属バット。死体の第一発見者は被害者の隣人で、いまも地方検察庁に検察事務官として勤める古堀徹だった。事件は未解決のまま月日は流れるが、被害者の一人娘・村里ちあきとの思わぬ再会によって、古堀徹の古い記憶のページがめくれはじめる――。
 古堀は事件当時、隣室に暮らすちあきの母親・村里悦子と親しい間柄だった。幼いちあきを預かることも多く、悦子が夫の暴力にさらされていた事実や「もし戒める力がどこにも見つからなければ、いまあなたがやろうとしていることは、あやまちではない」という彼女の人生観に触れる機会もあった。その頃の記憶にはさらにもう一人の女性の存在もあった。女性はある計画について村里悦子を説得したはずだ。「一晩、たった一度だけ、それですべてが終わる」と。
 よみがえる記憶を頼りに組み立てたひとつの仮説――交換殺人という荒唐無稽な物語が、まぎれもない現実として目の前に現れる! サスペンスフルな展開に満ちた長編小説『アンダーリポート』に加えて、新たに衝撃的なエンディングが描かれた短編小説『ブルー』を初収録した完全版。

  • アンダーリポート(2007年12月 集英社 / 2011年1月 集英社文庫)
  • アンダーリポート/ブルー(2015年9月 小学館文庫)

幼なじみ(2009年2月)

身の上話(2009年7月)

あなたに知っておいてほしいのは、人間にとって秘密を守るのはむずかしいということです。たとえひとりでも、あなたがだれかに当せんしたことを話したのなら、そこから少しずつうわさが広まっていくのは避けられないと考えたほうがよいでしょう。(『【その日】から読む本』第二部・第4章) 不倫相手と逃避行の後、宝くじが高額当選。巻き込まれ、流され続ける女が出合う災厄と恐怖とは。

正午派(2009年11月)

精緻を極めた文章と綿密に計算され尽くしたストーリーの作品を発表しつづけ、
文壇屈指の小説巧者との呼び名も高い小説家・佐藤正午。
そのデビュー25周年を記念して刊行される究極の書。四半世紀の足跡を
圧倒的なボリュームでたどるとともに、単行本未収録の小説やエッセイ、
さらには幻となった原作映画脚本も完全収録する。
西の果て長崎県佐世保市に居を構え、メディアにもほとんど登場しない小説家の、
デビュー前の秘蔵写真から現在の創作現場や自宅のスナップまで収め、謎多き素顔にも迫る。
手に取れば必ず佐藤正午の作品が読みたくなる――
ファンはもとよりこれから作品に触れるであろう読者にも入門書として最適な、永久保存版「佐藤正午読本」!

ダンスホール(2011年6月)

男は昔の恋人に金を借りに来たと言う(「愛の力を敬え」)。夫は妻の体重日記に不審を抱き始める(「空も飛べるはず」)。女はバニラの匂いに恋人の浮気を疑う(「ピーチメルバ」)。男は顔も知らないダンスホールの女を探している(「ダンスホール」)。長年の片思いが相手に通じる(「真心」)。人生の滑稽と不安、そして希望。単行本未収録の作品を含む全五編で贈る贅沢な傑作集。

鳩の撃退法(2014年11月)

かつて直木賞も受賞した作家・津田伸一は、とある地方都市で送迎ドライバーをして糊口をしのいでいた。
以前から親しくしていた古書店の老人の訃報が届き、形見の鞄を受け取ったところ、中には数冊の絵本と古本のピーターパン、それに三千枚を超える一万円札が詰め込まれていた。
ところが、行きつけの理髪店で使った最初の一枚が偽札であったことが判明。
勤務先の社長によれば、偽札の出所を追っているのは警察ばかりでなく、一年前の雪の夜に家族三人が失踪した事件をはじめ、街で起きる騒ぎに必ず関わる裏社会の“あのひと”も目を光らせているという。

書くインタビュー1(2015年6月)

小説巧者に訊く前代未聞のインタビュー読本。

「これは、直接会って言葉をやりとりするのではなくて、メールを用いたインタビューです。いっぱんの対面式のインタビューを『喋るインタビュー』だとすると、今回やろうとしているのは『書くインタビュー』です。いままでどおりに質問しようとしても、なかなかそうはいかない。こちらもいままでどおりに答えようとしても、そうはいかない。質問も回答も手間をかけて文章にしなければならないからです」(本文より抜粋)
 小説巧者として知られる作家・佐藤正午さんはいかにして作品を“つくって”いるのか――そんな疑問を直接ぶつけるインタビューが、前代未聞の形式で実現。面とむかって話す機会はおろか事前の打ち合わせもいっさい無し、メールのやりとりのみの「書くインタビュー」はスタートしましたが……。
「はっきりさせておきます。なにがなんでも答えたい質問などこちらにはありません。僕はべつに誰かの質問に答えたくてうずうずしているわけではないのです」
 まさかの聞き手交代劇にはじまり作家秘書の口述筆記も! のちにNHKでドラマ化される『身の上話』上梓直前の2009年6月から、『鳩の撃退法』の執筆準備に入る2010年12月までの質疑応答(?)を収録した第1巻。

書くインタビュー2(2015年6月)

長編小説『鳩の撃退法』創作現場からの肉声。

「いったん書いたものを読み直して考え直す、考え直して書き直す、また読み直して考え直す、でも正解にはたどり着けない、でもそれをやらないことには先へ進めない、そういう厄介な手間に耐える勇気がなければどんな文章も書けない、そのような結論になります。ものものしいです。ほんとかよ? と思われるかもしれません。僕もちょっとそんな気がします。でも勢いで続けます。みんな(多かれ少なかれ)そうやって書いているのではないでしょうか」(本文より抜粋)
 いよいよ新作長編に頭をむけ始めた作家は、ある場所へ取材に出かけます。執筆のためのメモも何十枚か溜まり、それを見て考えているうちに「物語の輪郭のいちぶが浮かびあがってくる」こともあると言います。
「明日からまた小説を書きます。いま決めました。仕事机の埃を払い、iMacの電源を入れ直します。久しぶりに仕事机にむかい、『鳩の撃退法』とタイトルを書き入れるところから始める。まずはそこからですね」
 物語の種とは? 冷蔵庫理論とは? 新作執筆のため本格的に始動する2011年1月から5月、さらに著者最長編となる『鳩の撃退法』脱稿直後の2014年6月から2015年4月までの、メールによるインタビューを記録した第2巻。

小説家の四季(2016年2月)

「同じ時刻に目覚め、小説書きに精を出し、眠る。書いては眠り、起きては書き、書いては眠る。そういう日付も曜日も定かではない毎日をとうぶんの間くり返すことになる」。机の向こうで過ぎゆく季節を、飄々と慈しみ、ユーモアとペーソス溢れる筆致で綴る。小説の名手による「ライフワーク的エッセイ」、第1期を収録!

  • 小説家の四季(2016年2月)
  • 小説家の四季 1988-2002(2022年11月 岩波現代文庫)
  • 小説家の四季 2007-2015(2022年12月 岩波現代文庫)

月の満ち欠け(2017年4月)

あたしは,月のように死んで,生まれ変わる──目の前にいる,この七歳の娘が,いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の,三十余年におよぶ人生,その過ぎし日々が交錯し,幾重にも織り込まれてゆく.この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は,戦慄と落涙,衝撃のラストへ.

書くインタビュー3(2017年5月)

20年ぶりに長編小説の書き下ろしを始めた作家。
連載ではなく、「書いても書いても原稿料を貰えない」現場では、自身の台所事情とは別に、「小説を書くこと」について、いろいろと思うところも――。

最新作『月の満ち欠け』の執筆開始から第一稿完成までとまったく同じ時期、小説名人・佐藤正午が語っていた、「小説を書くこと」についてのすべて。

書くインタビュー4(2021年9月)

2021年夏公開の映画『鳩の撃退法』の原作者であり、小説名人の佐藤正午さんがメールでインタビューに応じる「書くインタビュー」シリーズ第4弾。

書くインタビュー5(2022年11月)

2022年冬公開の映画『月の満ち欠け』の原作者で、直木賞作家の佐藤正午さんがメールでインタビューに応じるシリーズ第5弾。

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