茄子(黒田硫黄)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

老若男女、国籍を問わず繰り返される人のいとなみ。家族、恋愛、友情、勉強、仕事……。なにげない日常のなかの人間関係を、ナスのある風景を交えて描いたヒューマンドラマ。

茄子(黒田硫黄)の作品情報

タイトル
茄子
著者
黒田硫黄
形式
漫画
ジャンル
オムニバス短編集
執筆国
日本
版元
講談社
初出
月刊アフタヌーン、2000年11月号~2002年10月号
刊行情報
アフタヌーンKC、全3巻
新装版、全2巻

茄子(黒田硫黄)のあらすじ(ネタバレなし)

テーマは野菜の「茄子」! 焼いても揚げても生でもイケる! 融通無碍の偉大な野菜「茄子」そのままに、自由自在に漫画を料理。田園生活を遊ぶ中年オヤジに時代劇、自転車レースに近未来SFと、節操がないほどに漫画の面白さを追求。題材も面白さも前代未聞の短編集が上・下巻の新装版で再登場! 下巻には、本誌09年3月号に収録された新作もバッチリ収録!!

田舎で自給自足の生活をおくる、しがない中年遊民・高間。そこにはなぜか、ワケありの人間ばかりがやってくる。家出した少年少女、眠れない女、親に捨てられた女子高生……。メシ食うか? 茄子ならあるぜ。

アニメ版関連動画

アニメ映画『茄子 アンダルシアの夏』2003年7月26日

OVA『茄子 スーツケースの渡り鳥』2007年10月24日

茄子(黒田硫黄)の目次

新装版 上巻

  • 3人(前編)
  • 3人(後編)
  • 2人
  • 空中菜園
  • アンダルシアの夏(前編)
  • アンダルシアの夏(後編)
  • 4人
  • ランチボックス
  • 39人(前編)
  • 39人(後編)
  • 東都早もの喰
  • 続 東都早もの喰

新装版 下巻

  • 富士山の戦い(前編)
  • 富士山の戦い(後編)
  • 残暑見舞い
  • お引っ越し
  • 焼き茄子にビール
  • 電光石火
  • いい日
  • 茄子の旅
  • 一人
  • 考える人
  • スーツケースの渡り鳥
  • 夏が来る
  • As time goes by

作者

黒田硫黄(1971年1月5日 – )

漫画家。北海道札幌市出身(ただし幼少期に引越しを繰り返したため、「東日本出身」と表現することも)。一橋大学法学部・社会学部卒業。1993年『月刊アフタヌーン』にてデビュー。『月刊アフタヌーン』『月刊IKKI』『COMIC CUE』などに筆による作品を発表している。2002年、『セクシーボイスアンドロボ』により第6回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞文部科学大臣賞を受賞。
もっと読む【おすすめ】黒田硫黄の全作品を一覧であらすじを紹介します

茄子(黒田硫黄)の刊行情報

  • 茄子』アフタヌーンKC、全3巻
  • おすすめ『茄子』アフタヌーンKC・新装版、上下巻

茄子(黒田硫黄)の登場人物

高間先生
田舎に隠遁し茄子の栽培など農家を営む一人暮らしの中年男性。読書家であり、英語の原書を読むなどインテリ。周囲からは「センセ(先生)」と呼ばれている。

大西
若い頃から高間と付き合いのある女性。睡眠障害のため一日3時間ほどしか眠ることができない。ただ高間の家では「よく眠れる」とのこと。

高橋綾
女子高生。父親の経営する会社が倒産し逃げてしまったため、借金取りに追われる。その後弟&妹と共に高間の近所にある親戚の家に引っ越してくる。

桑原
高橋の同級生。中学生の時に出会った高橋のことが忘れられない。

国重
高校卒業後、進学も就職もせず過ごしている女性。再会した有野と「キャッチボール友」になる。その後デパートのバイトと一人暮らしを始める。

有野
国重の同級生。若隠居がしたいが口癖。のちに海外へと向かう。

ペペ・ベネンヘリ
スペインの自転車レーサー。

茄子(黒田硫黄)のあらすじ(ネタバレあり)

3人

※オムニバス短編集のため冒頭の高間先生のストーリーを紹介します。

高間先生は読書家な茄子農家。ある日自宅に帰ってくると、ガレージの中に少年少女が勝手にお邪魔しているのを見つける。

強引な少年の「泊めてくれ」という要求に高間先生はとくに返事もせずに了承した。

たがこの2人は姉弟でもカップルでもなく、電車の中で知り合っただけの関係だった。少年は「黙って俺について来い」と自信たっぷりだが、少女は「どこにでも行けるわけじゃない」とつぶやく。

少年は少女のために高間の銃を使い銀行強盗をすることを提案するが、少女は2人の言い争いの間に少年を置いて家を抜け出す。少年は高間の車で追いかけようとするが事故ってしまい病院に担ぎ込まれる。

少女はスナックで自分をどこかへと連れて行ってくれる誰かを待つのだった。

茄子(黒田硫黄)の感想・評価

ゆったりとしたライフスタイルを描いた短編集

本作に収録された短編の中でもっとも有名なのはアニメ化されたになった「アンダルシアの夏(『茄子 アンダルシアの夏』)」だろう。黒田硫黄のファンでなければ、アニメから原作を…というのが入り口として多そうだ。

本作は「茄子」をキーワードとした作品集だ。高間先生の周辺の人たちが柱となるが、ほかにも国重と有野、前述の「アンダルシアの夏」のストーリーが描かれる。

「茄子」がキーワードと聞いても意味が分からないだろうが、登場人物に共通しているのは、ほとんどの人物がそんなに必死こいてまで働きたいとは思っていないということだ。

「3人」に出てきた少年少女は流されて高間先生の家までやって来るし、国重は高校卒業後もブラブラしているし、有野は若隠居したいと言って仕事を辞めてしまう。大西はバリバリのキャリアウーマンだが、それゆえ不眠症に悩まされ、好意的に感じている高間先生の元にまでわざわざ来て寝入ってしまう。

作品全体に流れる穏やかな空気感とキャラクター造形から作者のメッセージが透けて見える気がする。

もちろん前向きに動いていくことを否定しているわけではない

しかし、そんな登場人物たちのなかでも高橋綾だけは一人異なる姿を見せる。

親の会社が倒産し逃げてしまったせいで、高橋は親戚の家へとやって来る。親戚の家にお世話になっている申し訳なさもあるだろうし、弟と妹を養わなければいけないという気持ちから、働くことに積極的だ。

髙橋はどんどん積極的に人に絡んでいくし、自分で仕事もとってくる。そして高間先生を巻き込みつつ、その仕事をちゃんとやり遂げる。

この高橋の姿によって本作は「ただ働きたくなく緩やかに生きている人達を描いた作品集」から一皮むけた短編集になっている。作者のメッセージもより穏やかで懐の深いものになっている。様々な人がいていいのだ。

新装版には「As time goes by」が収録。ラストで高校三年生の桑原は、中学二年生の時に二回だけ会った高橋のことを思い返す。10代の4年間は相当大きいが、高橋のことを思い出すのは、そのほかに「なにもなかったから」に違いない。

この読後感は強烈で、作風によっては読者に大きな毒を残すが、本作では苦みと共に青春の切なさや甘さも感じられる。まさに「茄子」と言えばそうだが、これが作者・黒田硫黄の腕によるところだろう。

合わせて読みたい本

春と盆暗

好きな子ができた。同じ職場の女の子。それも誰もが認める「いい人」キャラ。しかし僕は、彼女のとんでもない“頭の中”を知ってしまう!(『月面と眼窩』)

月刊『アフタヌーン』でデビューを飾った2017年最注目の新鋭、熊倉献待望の初コミックス。さえない男子たちが予想外のドラマをつむぐ、4編の恋愛譚を収録。

アンダーカレント

ほんとうはすべて知っていた。心の底流(undercurrent)が導く結末を。夫が失踪し、家業の銭湯も手につかず、途方に暮れる女。やがて銭湯を再開した女を、目立たず語らずひっそりと支える男。穏やかな日々の底で悲劇と喜劇が交差し、出会って離れる人間の、充実感と喪失感が深く流れる。 映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します。
もっと読むアンダーカレント(豊田徹也)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

茄子(黒田硫黄)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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