平手友梨奈の日本アカデミー賞新人俳優賞受賞はなるだろうか?2018年度の映画賞レースを振り返る【コラム】

1月5日記事作成公開。
1月8日第28回東京スポーツ映画大賞について追記。

年末、そして年度末が迫り映画賞の発表や選考が相次いでいる。それと同時に「響-HIBIKI-」で映画初主演を務めた平手友梨奈の映画賞へのノミネートも相次いでいる。平手が演じた響が文学賞に興味がなかったように、平手自身も映画賞に興味がなさそうではあるが、外野は受賞すればうれしいものだ。

本当は映画評・女優評を書くことができればいいのだろうが、僕は文学畑の人であるし、何回もテキストを確認してレビューを書くことのできる小説については書くことができても、一度(もちろん繰り返し観てもいいのだが)の鑑賞から評を書く映画ついては不得手だということがある。

また映画の評価・演技の評価というものもなかなか難しいものだ。そのためここでは映画の賞レースでどのような選考が行われたのかを追いかけてみたいと思う。着目したのは主に平手友梨奈がノミネートされた/ノミネートされることになるであろう「新人賞(女性)」である。

2018年度の映画賞レースを振り返る

第42回山路ふみ子映画賞

2018年11月30日に授賞式が行われた、第42回山路ふみ子新人女優賞を受賞したのは「寝ても覚めても」に出演した唐田えりかだった。山路ふみ子映画賞はその年に発表された日本映画に対して最も早く贈られることで知られる映画賞だ。個人賞は名を冠している山路ふみ子にちなんで、女優賞のみを表彰している。

オーディションを経てヒロイン・朝子役を勝ち取った唐田は、「映画『寝ても覚めても』で、二人の男性の間で揺れ動くヒロインの朝子を透明感のある佇まいで好演し今後のさらなる飛躍への期待を込めて」と評価され、山路ふみ子新人女優賞という栄冠を手にすることになった。

第43回報知映画賞

第43回報知映画賞で平手は主演女優賞と新人賞に、「響-HIBIKI-」は作品賞・邦画にノミネートされた。この報知映画賞はノミネート数が相対的にかなり多い映画賞である。作品賞・邦画のノミネート作品は20本。主演女優賞ノミネートは14人・新人賞ノミネートは15人だった。平手は主演女優賞の読者投票では1位だったのだが…

このうち作品賞を受賞したのは白石和彌監督の「孤狼の血」だった。ちなみに日刊スポーツ映画大賞の授賞式で同じテーブルの平手に話しかけていたのがこの白石監督である。(白石監督は日刊スポーツ映画大賞でも監督賞を受賞している)主演女優賞を受賞したのは篠原涼子。篠原涼子はこれが初めての主演女優賞となった。新人賞を受賞したのは「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」でW主演を務めた南沙良と蒔田彩珠だった。

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第31回日刊スポーツ映画大賞

そしてご存じ第31回日刊スポーツ映画大賞では平手友梨奈が新人賞を受賞した。新人賞には俳優/女優だけではなく「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督もノミネートされた。候補者は上田慎一郎監督、唐田えりか、木竜麻生、小松菜奈、土居志央梨、平手友梨奈、松本穂香の7名と、報知映画賞の15人から半減したが平手友梨奈はノミネートされた。

山路ふみ子新人女優賞の唐田えりかはノミネートされたが、報知映画賞で受賞した南沙良と蒔田彩珠の名前は無しと厳しい選考だった。これらの候補者の中で決選投票にもつれたのが平手と木竜麻生だった。「鈴木家の嘘」「菊とギロチン」の2作品に出演した木竜はこれらの作品が出品された第31回東京国際映画祭で「輝きを放った若手俳優に贈られる」東京ジェムストーン賞を受賞している。

日刊スポーツ映画大賞で木竜は「感情を上下させながら、アップで5分間撮られる場面は相当な演技力」と高評価を受けていたが、平手の好演への驚きがその高評価を上回っていたようだった。

第40回ヨコハマ映画祭

だが、その後12月1日に発表された、第40回ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞に選ばれたのはその木竜麻生と唐田えりかだった。ヨコハマ映画祭では唐田えりかが出演した「寝ても覚めても」が作品賞・監督賞・撮影賞・主演男優賞・助演女優賞、そして最優秀新人賞と最多六冠を達成。映画祭を席巻していた。

第43回エランドール賞

12月6日に候補者が発表された、第43回エランドール賞新人賞は候補者も男女別16人ずつ、計32人と多いのが特長だ。設立当初は俳優のみを対象としていた賞だけに、良い俳優/女優を表彰しようという雰囲気が感じられる。選考基準に「原則として6名まで」とあるようにほぼ毎年男女3名ずつが選ばれており、候補者も多いが受賞者も多い。

また、映画だけではなくテレビドラマも対象であり、昨年は高橋一生、ムロツヨシが受賞するなど年齢の幅も広い。なんといっても、2015年には「響-HIBIKI-」で共演した北川景子さんも受賞した賞だけに、日刊スポーツ映画大賞授賞式のインタビューで「実感がない」と語っていた平手も喜ぶのではないだろうか。

第73回毎日映画コンクール

報知映画賞やエランドール賞とは異なり、12月21日に候補者が発表された第73回毎日映画コンクール新人賞はかなり「固い」メンツになった。候補者は平手に加え、唐田えりか(寝ても覚めても)に、木竜麻生(菊とギロチン・鈴木家の嘘)、蒔田彩珠(志乃ちゃんは自分の名前が言えない)と南沙良(志乃ちゃんは自分の名前が言えない)佐々木みゆ(万引き家族)の6人だけ。これまでの新人賞で名前が挙がった女優ばかりであり、まだ7歳の佐々木みゆを除けば残りの候補者はすべて新人賞を得ている。

第61回ブルーリボン賞

しかし、「固い」と評した第73回毎日映画コンクールよりも狭き門になったのが、年が変わり1月3日に候補者が発表された第61回ブルーリボン賞新人賞だった。候補者は、平手に唐田えりか、木竜麻生、南沙良と、俳優の伊藤健太郎の男女合わせて5人だけ。伊藤健太郎は昨年5本の映画に出演。ブルーリボン賞とは関係ないが、「今日から俺は!!」への出演も記憶に新しいところだ。受賞者は2人の年もあるが、1人だけの年がはるかに多いため厳しい選考が予想される。

第28回東京スポーツ映画大賞

記事を公開した直後には、第28回東京スポーツ映画大賞新人賞のノミネート者が発表された。ここでも平手友梨奈は最終候補者に残った。ほかの候補者には、これまでにも名前の挙がった、木竜麻生、唐田えりか、佐々木みゆ、そしてSUMIRE(リバーズ・エッジ)が選ばれている。雑誌『装苑』専属モデルとしても活躍するSUMIREは映画出演2作目にしてノミネートされることになった。

ただ最終候補者に誰を残すのかという、いわば予備選考は全国の映画祭ディレクターが行っているが、受賞者はビートたけし審査委員長の独断で決定される。そのため誰が選ばれてもまったくおかしくない。ただここでてちが選ばれたらちょっとうれしいなとファン心理的に思ってしまう。「響-HIBIKI-」の月川監督が教えを受けた北野武に認められたということになるからだ。

そして…日本アカデミー賞

テレビで授賞式の模様が放送され注目度が高いのが日本アカデミー賞だ。年度末に行われる日本アカデミー賞では年によっても違うが新人俳優賞は男女合わせて4人から8人が選ばれる。(最優秀賞の受賞はない。)昨年が男女合わせて4人だけしか選ばれなかったのは気になるところだが、一昨年は男女合わせて8人が選ばれている。

男女4人ずつとなればその中に平手友梨奈の名前が含まれていてもまったく不思議ではない。ここまでノミネートはされているのだ。というか、報知映画賞・日刊スポーツ映画大賞・エランドール賞・毎日映画コンクール・ブルーリボン賞全部で候補に選ばれているのは平手友梨奈だけなのだ。テレビで、てちがドレスアップして緊張しながら歩いているところを見たくてしょうがない。

そのほか、雑誌としては一番の影響力を持つであろう『キネマ旬報』の個人賞・新人女優賞も気になるところだが、とにかく文学賞もそうだが映画賞は「水物」だとよく言われる。予想しようと思って当たるものでもないし、他の映画賞の受賞者が賞によってはノミネートすらされないということもある。選考の不透明さをめぐって噂が飛び交うこともあるし、話題作が作品賞や個人賞をとるとも限らない。

ただ、ファンとして平手友梨奈が授賞式など公の場に出てくる機会が増えてくれればいいなと思うばかりである。

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