自殺直前日記(山田花子)の概要・解説・感想

1992年高層住宅の11階から飛び降り自殺し、24年の短い生涯を終えた漫画家・山田花子の書き遺した日記。

自殺直前日記(山田花子)の作品情報

タイトル
自殺直前日記
著者
山田花子
形式
日記
ジャンル
日記
執筆国
日本
版元
太田出版
執筆年
不明
初出
書き下ろし
刊行情報
太田出版、1996年6月

自殺直前日記(山田花子)のあらすじ(ネタバレなし)

1992年5月、高層住宅の11階から飛び降り自殺し、24年の短い生涯を閉じた”カルト漫画家”山田花子。死後六年を経過した現在も”信者”とも言える熱狂的なファンを増やし続けている彼女が、死の前日まで記していた日記が存在した。テレビ、新聞、雑誌などを賑わせた「自殺直前日記」が、完全版となって登場!96年刊行版に、新たに発見された「日記」の未発表部分を追加した完全版!読者からの手紙も併せて収録。

作者

山田花子(1967年6月10日 – 1992年5月24日)

漫画家。東京都世田谷区出身。自身のいじめ体験をベースに人間関係における抑圧、差別意識、疎外感をテーマにしたギャグ漫画を描いて世の中の矛盾を問い続けた。だが漫画家としての活動の中、中学2年生の時から患っていた人間不信が悪化すると、1992年3月には精神分裂病と診断される。2ヵ月半の入院生活を経て5月23日に退院するも、翌24日夕刻、団地11階から投身自殺した。24歳没。

自殺直前日記(山田花子)の刊行情報

自殺直前日記(山田花子)の感想・評価

夭折した漫画家の日記

24歳で投身自殺をした漫画家・山田花子の日記から文章を集めた本になる。山田花子は漫画家だが、この本には過去作からいくつかコマが挿入されているものの、基本的には文章ばかりだ。

数ページにわたって文章が書かれているものもあるが、公開する予定のない日記からの抜粋ということで、思いついたことをそのまま書いたように箇条書きのようになっているところもある。

漫画家としてはいじめや疎外感を描いたものが多いが、日記に書かれた自身の体験も似たようなものだ。クラスで独りぼっちだったこと、アルバイトでトラブルが起きたこと、家族と言い争いになったこと。日記だけに実際に体験したエピソードが並んでおり、読んでいくと気分が沈む。この日記の辿り着いた先が投身自殺だというのも、どんどん気分を重くする。きっと最後まで読むことのできない人もいるだろう。

寄せられた両親と親友の手記

本書には山田花子本人の日記だけではなく、両親の手記と死後親友から送られたという手紙が収録されている。

両親の手記では、死ぬ前の様子や特に当日の様子が詳しく紹介されている。駅前に長時間佇み警察に保護されたこと、解雇されたバイト先の喫茶店に居座っていたこと、精神分裂病の診断により入院したこと…そんな苦しいエピソードの中で、唯一父親の書いた手記の一部が救いになっている。

一見すると、由美・山田花子は全くの絶望のドン底で自ら命を絶ったように見える。しかし、私には深い絶望感と共に「やりたいことは一通りやった、この先、生きていても辛いことばかり。もう終りにしたい」というような諦めの気持も入り混じったささやかな満足感があったように思えるのだ。前日までの悲し気で苦し気な表情とうって変わって、その死顔は静かに眠っているかのように穏やかであった

自殺直前日記より

いじめ体験や精神を病んで入院したりなど苦しい日々の中でも、悲惨なことしかなかった訳ではなかった。憧れの雑誌『ガロ』で仕事ができ(山田の死から数年後ガロは休刊に追い込まれる)、ストレスは抱えていたものの仕事はあった。漫画以外にも、音楽や演劇、映像の活動もできた。順風満帆ではないが彼氏もいて、他の漫画家と付き合いもあった。

本書を読んでいると「苦しみから解放されるためには、自ら命を絶つしかなかったのではないか」と思わせられる瞬間が来る。自殺に至った本人の心境はもはやわからないが、御尊父の書かれたように”ささやかな満足感”があったことを祈らずにはいられない。

合わせて読みたい本

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自殺直前日記(山田花子)の評判・口コミ・レビュー

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