町長選挙(奥田英朗)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

「精神科医・伊良部シリーズ」の3作目。

町長選挙(奥田英朗)の作品情報

タイトル
町長選挙
著者
奥田英朗
形式
小説
ジャンル
エンターテイメント
執筆国
日本
版元
文藝春秋
初出
下記
刊行情報
文春文庫

町長選挙(奥田英朗)のあらすじ・概要

離島に赴任した精神科医の伊良部。そこは、島を二分して争われる町長選挙の真っ最中だった。伊良部もその騒動に巻き込まれてしまい…。「空中ブランコ」「イン・ザ・プール」でお馴染みの、トンデモ精神科医の暴走ぶり健在!

『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』で、好評をはくした、精神科医伊良部シリーズ第3作。

町長選挙(奥田英朗)の目次

  • オーナー(『オール讀物』2005年1月号)
  • アンポンマン(『オール讀物』2005年4月号)
  • カリスマ稼業(『オール讀物』2005年7月号)
  • 町長選挙(『オール讀物』2006年1月号)

作者

奥田 英朗(1959年10月23日 – )

小説家。岐阜県岐阜市出身。プランナー、コピーライター、構成作家など様々な職業を経た後、出版社に持ち込んだ『ウランバーナの森』でデビュー。2004年に『空中ブランコ』で第131回直木賞を受賞した。主な作品に『最悪』、『邪魔』、『イン・ザ・プール』、『オリンピックの身代金』などがある。

町長選挙(奥田英朗)の刊行情報

  • 『町長選挙』文藝春秋、2006年4月
  • 『町長選挙』文春文庫、2009年3月

アニメ版

テレビアニメ『空中ブランコ』2009年10月15日~
第10話「オーナー」

町長選挙(奥田英朗)の登場人物

伊良部 一郎(いらぶ いちろう)
伊良部総合病院の神経科医師。37歳。肥満体形であり、子どもっぽい性格。

マユミ
伊良部の助手の看護師。ミニの白衣を身にまとったスタイルの良い若い女。伊良部のことなら大抵知り尽くしている。

田辺 満雄(たなべ みつお)
「オーナー」主人公。78歳。あだ名はナベマン。「大日本新聞」の代表取締役会長で、プロ野球球団「東京グレート・パワーズ」のオーナー。死への不安を抱いており、棺桶を連想させる暗闇と狭い場所が怖く不眠症に悩まされている。モデルは渡邉恒雄

安保 貴明(あんぽ たかあき)
「アンポンマン」主人公。小太りの体型から、あだ名はアンポンマン。東大在学中に、インターネットのホームページ作成サービスの会社「ライブファスト社」を立ち上げ、瞬く間に急成長し、IT長者に成り上がった。文字を書く習慣がなく、平仮名の形を思い出すことができない。モデルは堀江貴文

白木 カオル(しらき カオル)
「カリスマ稼業」主人公。女優。44歳。若さと美貌をいつまで維持できるかを過度に気にしており、食事を中心に節制した生活を送っている。

宮崎 良平(みやざき りょうへい)
「町長選挙」主人公。東京都庁職員。9カ月前に、離島研修のため伊豆半島沖合の島・千寿島に出向してきた。町長選挙の勃発により島は二つの派閥に分かれており、その争いに巻き込まれ食欲不振と胃痛に悩まされる。

町長選挙(奥田英朗)の感想・解説・評価

おもしろいが不満も残るシリーズ第3作

本作は一風変わった精神科医・伊良部一郎を主人公に据えたシリーズの3作目です。精神科医が主人公なだけに、登場人物たちは体になんらかの異常をきたしています。暗所、閉所恐怖症の球団オーナー、平仮名が書けなくなるIT企業社長、すぐに運動をしたがる女優。

伊良部は不摂生のあまり太っており、マザコン、性格も幼稚園児のように幼いとダメダメな人物です。医療ドラマの主人公は「権威を嫌う凄腕のイケメン(美人)医者」「真面目に患者さんに向き合う健気な新人」など魅力的&好意的な人物であることが多いですが、伊良部は全く異なった人物です。

でも、だからといって読んでいて嫌悪感を抱くかというとそうではないところがこのシリーズの良いところですね。第1作『イン・ザ・プール』は、読者を笑わせながら社会に警鐘を鳴らしている作品でもありましたし、単なる娯楽作品ではなくメッセージも込められています。

ただ、シリーズ3作目となる本作ではこれまでの作品から少し変更が行われました。まず、気になったのは実在の人物をモデルになっている患者たちが、次々と出てくることです。

おもしろいものの、患者のイメージが固定されてしまった感じがしました。これまで不思議な存在だった看護士のマユミが、趣味があり、お金にうるさいなど、一気に身近な存在として描かれたことも気になりました。

言うなれば、第2作、第3作と進むにつれて笑いに重きを置く作品になっていっていることは残念でもあります。伊良部医師の子どもっぽさにも磨きがかかっており、無知さ、馬鹿さで笑いを誘っていることが見えてくるようになってしまっていると思います。

合わせて読みたい本

イン・ザ・プール

『精神科医 伊良部シリーズ』の第1作で、第127回直木賞候補になりました。同じく、伊良部総合病院の地下にある神経科を訪れる人々を描いた作品ですが、高校生や会社員など、より身近なキャラクターたちが登場します。

空中ブランコ

シリーズ2作目の『空中ブランコ』は直木賞受賞作となりました。尖端恐怖症のヤクザ、義父のカツラを剥ぎ取りたい大学講師、イップスに悩むプロ野球選手、小説家が彼の元へとやってきます。
もっと読む空中ブランコ(奥田英朗)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

町長選挙(奥田英朗)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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