空中ブランコ(奥田英朗)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

『空中ブランコ』は、奥田英朗による連作短編集。精神科医・伊良部シリーズの2冊目にあたる。第131回直木賞受賞作。

空中ブランコ(奥田英朗)の作品情報

タイトル
空中ブランコ
著者
奥田英朗
形式
小説
ジャンル
エンターテイメント
執筆国
日本
版元
文藝春秋
初出
オール讀物、2003年1月号~2004年1月号
刊行情報
文春文庫
受賞歴
第131回直木賞

空中ブランコ(奥田英朗)のあらすじ・概要

伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が…。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?
直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。

サーカスの花形、空中ブランコでフライヤーを務める公平は最近失敗ばかり、原因は自分にあるらしい。困り果てて伊良部を訪ねたが、伊良部が自分も空中ブランコに乗ってみたいと言ってきかず……(「空中ブランコ」)

ほかに「ハリネズミ」「義父のヅラ」「ホットコーナー」「女流作家」を収録、直木賞を受賞した絶好調シリーズ第2弾!

空中ブランコ(奥田英朗)の目次

  • 空中ブランコ(初出:『オール讀物』2003年1月号)
  • ハリネズミ(初出:『オール讀物』2003年7月号)
  • 義父のヅラ(初出:『オール讀物』2003年10月号)
  • ホットコーナー(初出:『オール讀物』2003年4月号)
  • 女流作家(初出:『オール讀物』2004年1月号)

作者

奥田 英朗(1959年10月23日 – )

小説家。岐阜県岐阜市出身。プランナー、コピーライター、構成作家など様々な職業を経た後、出版社に持ち込んだ『ウランバーナの森』でデビュー。2004年に『空中ブランコ』で第131回直木賞を受賞した。主な作品に『最悪』、『邪魔』、『イン・ザ・プール』、『オリンピックの身代金』などがある。

空中ブランコ(奥田英朗)の刊行情報

  • 『空中ブランコ』文藝春秋、2004年4月
  • 『空中ブランコ』文春文庫、2008年1月

ドラマ版、アニメ版

テレビドラマ『空中ブランコ』2005年5月27日

テレビドラマ『Dr.伊良部一郎』2011年1月30日~3月27日

舞台『空中ブランコ』2008年4月20日~

テレビアニメ『空中ブランコ』2009年10月15日~

空中ブランコ(奥田英朗)の登場人物

伊良部 一郎
伊良部総合病院神経科の医師。注射が好きで、患者にはとりあえず注射を打つ。デブで色白。公平の制止を無視し、「自分は身軽だから」と空中ブランコに挑戦するなど大胆な性格。学生時代は厄介者扱いされており、成績も振るわなかった。

マユミ
看護師。胸が大きく、目立つような露出の多い服装を好む。

山下 公平
「空中ブランコ」主人公。サーカスの空中ブランコ乗り。失敗を重ねるようになり、妻と団員に勧められ精神科を訪れる。

猪野 誠司
「ハリネズミ」主人公。渋谷界隈をシマとするヤクザ・紀尾井一家の若頭。内縁の妻に勧められ、重度の尖端恐怖症を克服するべく神経科を受診する。

池山 達郎
「義父のヅラ」主人公。大学講師で、付属病院勤務の神経科の医師。非常ボタンを押し逃げしたい衝動や、整然としたものを破壊したい衝動に駆られる強迫神経症。義父のカツラを剥ぎ取りたい衝動に駆られることに悩んでいる。

坂東 真一
「ホットコーナー」主人公。プロ野球選手。練習試合での野次を耳にして暴投して以来、一塁への送球に苦労するイップスになってしまう。

星山 愛子
「女流作家」主人公。小説家。都会の男女の心の機微を描かせたら当代一との評価を得ている俊英だが、新作執筆中に、以前も書いた内容ではないかと不安になる。かつて患っていた心因性嘔吐症を再発し、神経科に足を運ぶ。

空中ブランコ(奥田英朗)の感想・解説・評価

神経科(精神科)のイメージを覆す怪作

精神科というと、「怖そう」などと思ったり、嫌悪感を抱く人が多いでしょう。ですが本作に登場する伊良部医師は子どもじみたというか、のんきな人物なんです。

患者を「いらっしゃーい」という声と共にむかえる彼は、以前は小児科医でした。ですが、「子どもと本気で喧嘩してしまう」という何とも情けない理由で精神科医になったという経歴をもっています。

そんな彼だが、精神科医としては一流なんです。

患者たちは一様になにかしらの悩みをかかえています。暴投してしまうようになったプロ野球選手、上手く飛べなくなった空中ブランコのエース、先端恐怖症の極道。

彼はそんな患者たちと接し、治療をしていくときに、実際に空中ブランコを飛び(体重は100キロぐらいなのに)、キャッチボールをし、極道に注射を射します。これらの行為は患者を治したいという気持ちからではなく、「患者の症状を楽しむ」という医者としてはあってほしくない欲求からの行為です。

でもそこには、患者と真剣に向き合う姿勢があるのです。そして結果として、患者たちは異常を治し彼の元を去っていきます。性格的にも、行動的にも「名医」とは呼びたくないような伊良部先生なんですが、「こういう名医もいるのかもしれない」と思わせる作品に仕上がっています。

合わせて読みたい本

イン・ザ・プール

『精神科医 伊良部シリーズ』の第1作で、第127回直木賞候補になりました。同じく、伊良部総合病院の地下にある神経科を訪れる人々を描いた作品ですが、高校生や会社員など、より身近なキャラクターたちが登場します。

空中ブランコ(奥田英朗)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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