鼻持ちならないガウチョ(ロベルト・ボラーニョ)のあらすじ(ネタバレなし)・感想

カフカやボルヘスへのオマージュを込めた五つの短篇、文学についての驚くべき知性とユーモアが発揮された二つの講演原稿を収録。没年に刊行された、ボラーニョ最後の短篇集。

作品情報

タイトル
鼻持ちならないガウチョ
著者
ロベルト・ボラーニョ
形式
小説
ジャンル
短篇集
執筆国
チリ
版元
アナグラマ社
執筆年
下記
初出
下記
刊行情報
白水社
翻訳者
久野量一

あらすじ・概要(ネタバレなし)

2003年6月、死期を悟ったボラーニョは自ら出版社を訪れ、信頼する編集者に本書の原稿を手渡した。彼はその二週間後にこの世を去ったため、生前に本の完成を見届けることはできなかったが、没後まもなく一冊の本として刊行された。大長篇『2666』とともに、ボラーニョ最後の日々に書かれた、もうひとつの遺作。

ぼくがメキシコにいたころ、ジムという名のアメリカ人の友人がいた。詩人だった彼は、路上で火を吹く男に見とれていた。ジムがそこで何を見ていたかを知り、ぼくは戦慄する。(「ジム」)

ブエノスアイレスに住む弁護士ペレーダは、高潔で非の打ちどころのない人物として知られていた。ある日、アルゼンチンが経済危機に見舞われたのをきっかけに、それまでの生活を捨て、祖国の精神的シンボルであるガウチョ(南米のカウボーイ)として生きる決心をする。(「鼻持ちならないガウチョ」)

鼠のペペは真面目な警察官で、地下の下水道を、日々パトロールして回っている。あるとき、鼠の死体が立て続けに見つかり、事件性を察したペペは、捜査を開始する。(「鼠警察」)

カフカやボルヘスといった、ボラーニョが敬愛した作家たちへのオマージュとして書かれた短篇のほか、死期の迫った作家の皮肉とユーモアが炸裂する講演録も二篇収められている。ボラーニョの文学観を知るうえでも必須の一冊。

目次

  • ジム
  • 鼻持ちならないガウチョ
  • 鼠警察
  • アルバロ・ルーセロットの旅
  • 二つのカトリック物語
  • 文学+病気=病気
  • クトゥルフ神話

作者

ロベルト・ボラーニョ Roberto Bolaño(1953年4月28日 – 2003年7月15日)

チリのサンティアゴ生まれ。メキシコ、エルサルバドル、フランス、スペインなど各地を放浪。1984年に小説家としてデビュー、『通話』『野生の探偵たち』などの諸作品でボルヘス、ガルシア=マルケス、リョサなどラテンアメリカ文学の大作家たちと比肩するような高い評価を受けるも、2003年に50歳の若さで死去した。

刊行情報

久野量一訳「鼻持ちならないガウチョ」(白水社、2014年)

感想・解説・評価

合わせて読みたい本

伝奇集(ボルヘス)

先輩作家たちの作品から多大な影響を受けていたボラーニョは表題作「鼻持ちならないガウチョ」を書くに当たり、ボルヘスの「南部(エル・スール)」(『伝奇集』所収)に多大な影響を受けた。あるいは「自分もこのような作品を書きたい」と考えていたのかもしれない。

「鼻持ちならないガウチョ」を単体で読んでも、寂寥感と儚さに満ちた素晴らしい作品だと感じられると思う。

だが、一方でボルヘスの「南部(エル・スール)」も読むと、ボラーニョが描きたかった世界がよりクリアに見えてくるような気がする。

カフカ寓話集

「鼻持ちならないガウチョ」だけではなく、「鼠警察」は、カフカ「歌姫ヨゼフィーネ」からの本歌取りが行われた。鼠がさながら人間のように描かれるのはいかにもカフカ的だ。

影響は「鼻持ちならないガウチョ」=「南部(エル・スール)」ほどの影響は感じないが、ボラーニョの作品にある不条理な部分の源泉を辿るのも悪くはない。

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