ペドロ・パラモ(フアン・ルルフォ)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

作品情報

タイトル
ペドロ・パラモ
著者
フアン・ルルフォ
形式
小説
ジャンル
文学
執筆国
メキシコ
版元
不明
初出
1955年
刊行情報
岩波文庫
翻訳者
杉山晃、増田義郎

あらすじ・概要(ネタバレなし)

ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった……。生者と死者が混交し、現在と過去が交錯する前衛的な手法によって紛れもないメキシコの現実を描き出し、ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作。

目次

  • 全70挿話

作者

フアン・ルルフォ(1917年5月16日 – 1986年1月7日)

小説家。メキシコのハリスコ州サユラ生まれ。ラテンアメリカ文学上で重要な位置を占める作家である。生涯で発表した小説は『ペドロ・パラモ』と短編集『燃える平原』だけだが、20世紀最高のスペイン語作家を選ぶアルファグアラ社の催した投票では、ホルヘ・ルイス・ボルヘスとともにルルフォも選ばれている。

刊行情報

  • 岩波文庫、1992年

登場人物

ペドロ・パラモ
フアン・プレシアドの父親。主人公の一人。

スサナ・サン=フアン
フアンの愛人。

フアン・プレシアド
語り手。主人公の一人。

ミゲル・パラモ
ペドロ・パラモの息子。

ドロテア
語り手。

感想・解説・評価

『百年の孤独』とラテンアメリカ文学の双璧をなす傑作

ペドロ・パラモを気になって読み返した。今年読んだ中でクッツェーの「マイケル・K」と並ぶ良さだった。たぶん人生でも海外文学トップ10に入るくらい良かったと思う。

視点変換と場面転換の多用、突然挿入される母の語り、説明も少ない。ぼんやりと読んでいくだけでは、誰のどの場面が描写されているのかが分からなくなってしまいそうだ。熱心に読んでいくことが求められるが、最終盤の文学的感動は素晴らしく、そうそう出会えるものではない。

とにかく読みにくいのは間違いない。短い章や挿話が続いていく中で、登場人物は何人も唐突に現れて消えていくし、終盤になって再登場したりするし、慣れないスペイン語名でもありさらに覚えにくい。

視点も突然飛ぶし、語られる場面も時代を超えてあちらこちらへと飛んでいく、舞台や人物について説明してくれるわけでもないし(詳しく説明してくる小説は苦手だけどそれにしても少ない)、作中の時間経過も短めの長篇小説にしてはかなり長い。

正直、ウルフのダロウェイ夫人や、リョサの緑の家などの、いわゆる読みにくい小説を読んでいなかったら、放り出していたかもしれない。

短い章が続いていく形だったので何とか読み終えると、解説の説明で全体像を理解しつつ2回目を、さらに時間を空けて3回目を読み終えた。その結果、確かにこれは傑作に間違いないと確信することになった。

ペドロ・パラモは女性関係も派手だし、仲間も多い。しかしスサナに対するときの孤独さ、寂寥感はその彼のイメージからかけ離れたものだ。

僕もこの小説をガルシア=マルケス、ボルヘスといったラテンアメリカ文学から経由して読むことになった。その読了感、とくにペドロ・パラモがスサナを見送る最後の場面の霧と風と光のイメージ、それはガルシアマルケスの『百年の孤独』や「大佐に手紙は来ない」を読んだときと寸分たがわぬ強烈なものだった。

一度読んだだけでは理解できないかもしれないし、二回読むのは面倒かもしれない。でもこの小説は海外文学ならマイベスト5に入るくらい好きだ。

隆盛を誇ったラテンアメリカ文学の中でもガルシアマルケスの『百年の孤独』と双璧をなす傑作だと思う。

ペドロ・パラモを難しく感じたら

ペドロ・パラモは解説に大まか展開が書いてあります。もちろんネタバレなんですが、この展開を読んでも、筋を追いかけてほしいです。

大まかな筋を理解しながら読むと、この小説の素晴らしさが分かると思います。

ぜひ寂しく美しいラストシーンを読んでほしいですね。

合わせて読みたい本

百年の孤独

僕の人生ベスト小説です。

世界文学史上の大作家となったガルシア=マルケスは、最初の4冊の本を書いた後、小説家として八方ふさがりになったように感じたといいます。

その彼の道を切り拓いたのが、この『ペドロ・パラモ』を”発見したこと”でした。

ガブリエル=マルケスは、「(ルルフォの全著作は)合計300ページしかない。だが、それはソポクレスが我々に残したものとほぼ同じページ数で、やはりソポクレス同様に永遠に残るものと信じている」と語っています。

『百年の孤独』では一つの家族を中心に、ある村の発展と衰退が描かれます。何人もの人生が描かれ、作中には膨大な挿話が含まれます。人生のすべての瞬間を描くことができたのではないかと思うほどの大作です。

マイケル・K

内戦下の南アフリカ。手押し車に病気の母親を乗せて、騒乱のケープタウンから内陸の農場をめざすマイケル。内戦の火の粉が飛びかう荒野をひたすら歩きつづける彼は、大地との交感に日々を過ごし、キャンプに収容されても逃走する。……国家の運命に巻き込まれながら、精神の自由を求めて放浪する一個の人間のすがたを描く、ノーベル賞作家の代表作。

クッツェーのブッカー賞受賞作。

大地と寂寥感を描いた傑作です。土と共に生きながら、いま既に亡くなったひとのことを想う寂しさを見事に書き出しています。

評判・口コミ・レビュー

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