終末のフール(伊坂幸太郎)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。

終末のフール(伊坂幸太郎)の作品情報

タイトル
終末のフール
著者
伊坂幸太郎
形式
小説
ジャンル
SF
執筆国
日本
版元
集英社
初出
小説すばる、2004年2月号~2005年11月号
刊行情報
集英社文庫
受賞歴
第19回山本周五郎賞候補
2007年本屋大賞第4位
キノベス!2006第10位

終末のフール(伊坂幸太郎)のあらすじ・概要

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。

自分の言動が原因で息子が自殺したと思い込む父親(「終末のフール」)

長らく子宝に恵まれなかった夫婦に子供ができ、3年の命と知りながら産むべきか悩む夫(「太陽のシール」)

妹を死に追いやった男を殺しに行く兄弟(「籠城のビール」)

世紀末となっても黙々と練習を続けるボクサー(「鋼鉄のウール」)

落ちてくる小惑星を望遠鏡で間近に見られると興奮する天体オタク(「天体のヨール」)

来るべき大洪水に備えて櫓を作る老大工(「深海のポール」)などで構成される短編連作集。はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。

終末のフール(伊坂幸太郎)の目次

  • 終末のフール(『小説すばる』2004年2月号)
  • 太陽のシール(『小説すばる』2004年5月号)
  • 籠城のビール(『小説すばる』2004年8月号)
  • 冬眠のガール(『小説すばる』2004年11月号)
  • 鋼鉄のウール(『小説すばる』2005年2月号)
  • 天体のヨール(『小説すばる』2005年5月号)
  • 演劇のオール(『小説すばる』2005年8月号)
  • 深海のポール(『小説すばる』2005年11月号)

作者

伊坂 幸太郎(1971年5月25日 – )

小説家。千葉県松戸市出身。東北大学法学部卒業。大学卒業後、システムエンジニアとして働くかたわら文学賞に応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。『アヒルと鴨のコインロッカー』が第25回吉川英治文学新人賞を受賞。『ゴールデンスランバー』で本屋大賞、山本周五郎賞を受賞。

終末のフール(伊坂幸太郎)の刊行情報

  • 『終末のフール』集英社、2006年3月
  • 『終末のフール』集英社文庫、2009年6月

終末のフール(伊坂幸太郎)の登場人物

終末のフール(伊坂幸太郎)の感想・解説・評価

「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」日本を舞台にしたエンターテイメント

舞台は東北・仙台市。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」という発表が行われた世界を舞台にした小説です。その発表から5年後、秩序崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々の生活を追います。

「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表された直後は、犯罪が横行し食料の奪い合いが起こるなど治安が悪化。そして、自殺するもの、殺人を犯すものが続出した結果、人口は激減してしまったのです。

しかし、その発表から5年が経過した現在は犯罪は減り、小康状態とはいえ平和な時間を取り戻しつつあります。

そんな、この世界の登場人物たちは、いずれも生きることに真剣に向かい合っています。子どもを産むか迷う夫婦、ボーイフレンドをつくろうとする少女。刻一刻と終末の時間は近づいていますが、小惑星の脅威を怖れるよりも、毎日を必死に生きていきます。

「もし僕がこの世界に生きていたらどうするか」ということを考えずにはいられません。混乱に乗じて犯罪を犯すか、絶望して生きる希望を失ってしまうか、それとも変わらずに毎日を過ごしていくのか。

小惑星こそないものの、本作が発表された後にも多くの災害が日本を襲いました。震災、台風、水害…多くの方が亡くなり、傷ついた一方で、日々の生活を送る方もいます。そんなとき、僕らと登場人物たちはなにも変わらないことに気が付かされます。

一風変わったユーモア小説

伊坂作品の中では一風変わった小説に仕上がっています。普通に「いい話」になっていながら、それだけでなく伊坂特有のユーモア(時にブラックユーモア)がたくさん含まれています。

伊坂幸太郎はただ「楽しい」というだけの作品を書いているわけではありません。作品の根底に、答えのでない問いに対する自分なりの答えを書いている作家だと思っています。

「僕はやっぱり、死というのは負けじゃないと思っているんです。いずれみんな死ぬんだし、というのがやっぱり根底にあって。死と戦わなくてはいけないのか? じゃあ死んだ人は負けた人になっちゃうじゃないか、と。分からないなりに、いろいろ考えてしまって。今はとりあえず、立ち向かうものではない、と思っているんですよね。」

それが現在、伊坂幸太郎が高く評価されている一因だと思うのです。

合わせて読みたい本

夜の国のクーパー

「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。戦争が終わったんだ」突然知らない世界で目を覚ました主人公は、火との言葉を話す猫からそう伝えられます。

現代日本から離れた別世界を舞台に、ある”国家”のあり方が描かれます。日本とは全く異なる国であり、ファンタジー的なんですが、国ということについても考えさせられました。

終末のフール(伊坂幸太郎)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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