私の消滅(中村文則)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した傑作長編小説。

作品情報

タイトル
私の消滅
著者
中村文則
形式
小説
ジャンル
純文学
執筆国
日本
版元
文藝春秋
初出
文學界、2016年6月号
刊行情報
文春文庫
受賞歴
第26回Bunkamuraドゥマゴ文学賞

あらすじ・概要(ネタバレなし)

このページをめくれば、
あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない。

一行目に不気味な文章が書かれた、ある人物の手記。
それを読む男を待ち受けるのは、狂気か救済か。

『掏摸 スリ』『教団X』を越える衝撃。
中村文則が放つ、新たな最高傑作!

目次

作者

中村 文則 なかむら・ふみのり(1977年9月2日 – )

小説家。愛知県東海市出身。福島大学行政社会学部応用社会学科卒業。2002年に「銃」で第34回新潮新人賞を受賞しデビュー。2004年、『遮光』で第26回野間文芸新人賞、2005年、『土の中の子供』で第133回芥川龍之介賞、2010年、『掏摸<スリ>』で第4回大江健三郎賞を受賞。2014年、ノワール小説への貢献で、アメリカでデイビッド・グーディス賞を受賞した。

刊行情報

  • 文藝春秋、2016年
  • 文春文庫、2019年

登場人物

感想・解説・評価

脳と精神を描いた実存主義的物語

本作の主なストーリーとしては「精神科医の『私』が、とある人間に復讐をする。その人物はかつての恋人を自殺へ追いやったのだった」というものだ。

作中では、宮崎勤の精神分析が行われたり、旧ソ連の洗脳実験、電気ショック、催眠療法での記憶の復元などが語られる。「悪」を描いてきた中村文則の作品の中でもかなり尖った作品になっている。

読み終わってこれは良い小説だろう、傑作だろうと思った。しかし、同じような展開や仕掛けが過去作でも見られまたこういう話かと感じたのも事実だ。

でも、宮崎勤などの描写、外部の描写が入っていること、精神について専門家である人物を中心人物に据えたことなどは間違いなく前進だろう。だって専門家だと発言や行動に甘えが許されなくなるからだ。

「脳と精神の物語を、直接脳に流し込まれた気分。」僕も以前中村文則の小説を読んでそう思った。「銃」とか「遮光」を読んでいた時だと思う。僕はその感覚を本作を読みながら感じることはなかった。

それでも「読んでいてクラクラ」するように感じたという人の気持ちもわかる。それだけ、精神の深いところを描写しているのだろう。

以前の中村文則の小説は罪の前で罰が与えられず、登場人物はあがいていた。今作ではしっかりと罰が与えられる結果となった。中村文則の悪のテーマは、中心は変わっていないけれど、細かいところは少しずつ変わっている。試行錯誤しているとも言えるかもしれない。

合わせて読みたい本

「次は…人間を撃ちたいと思っているんでしょ?」
雨が降りしきる河原で大学生の西川が<出会った>動かなくなっていた男、その傍らに落ちていた黒い物体。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが……。TVで流れる事件のニュース、突然の刑事の訪問――次第に追いつめられて行く中、西川が下した決断とは?

ふとしたことから銃を手に入れた青年の危なっかしい精神の揺れを描いたデビュー作です。

「~と思った」と連続する表現に引き込まれる小説です。

何もかも憂鬱な夜に

施設で育った刑務官の「僕」は、十八歳のときに強姦目的で女性とその夫を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井はまだ語らない何かを隠している――。どこか自分に似た山井と接する中で、「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、大切な恩師とのやりとり、自分の中の混沌が描き出される。
芥川賞作家が重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った長編小説。

死や犯罪、死刑囚という題材を扱った作品です。

ピースの又吉さんがこの小説に衝撃を受けたことを語っていました。

その名の通り「何もかも憂鬱な夜に」読むといいと思います。明るい作品ではありませんが、不思議なエネルギーを受け取ることができます。
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評判・口コミ・レビュー

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