反日種族主義 日韓危機の根源(李栄薫)のあらすじ・解説・感想

慰安婦・徴用工・竹島などの問題を韓国を愛する研究者らが実証的に検証したベストセラー。日韓関係を危機に陥らせた数々の「嘘」を指摘した憂国の書は韓国内で発売されるや大きな話題を巻き起こしている。

反日種族主義 日韓危機の根源の作品情報

タイトル
反日種族主義 日韓危機の根源
著者
李栄薫
形式
評論
ジャンル
政治
執筆国
韓国
版元
不明
初出
書き下ろし
刊行情報
文藝春秋
翻訳者
不明

反日種族主義 日韓危機の根源のあらすじ・概要

韓国を震撼させたベストセラー、日本語版がついに登場!

緊迫する日韓関係の中で、韓国で一冊の本が大きな話題を呼んでいる。
7月の刊行以来、11万部のベストセラーとなっている『反日種族主義』は、元ソウル大教授、現・李承晩学堂校長の李栄薫(イ・ヨンフン)氏が中心となり、現状に危機感をもつ学者やジャーナリストが結集。慰安婦問題、徴用工問題、竹島問題などを実証的な歴史研究に基づいて論証、韓国にはびこる「嘘の歴史」を指摘する。

本書がいわゆる嫌韓本とは一線を画すのは、経済史学などの専門家が一次資料にあたり、自らの良心に従って、事実を検証した結果をまとめたものであるということだ。

その結果、歴史問題の様々な点で、韓国の大勢を占めてきた歴史認識には大きな嘘があったことが明らかにされている。そしてそうした嘘に基づいた教育が何年も積み重ねられた結果、韓国の人々の多くは誤った歴史認識を正しいものと信じ込み、反日に駆られている。

民族主義というより、意見の合わないものを力ずくでも排除する非寛容な「種族主義」が韓国には蔓延しており、それが日韓の関係を危機に陥らせている根源なのである。

本書は大韓民国を愛する学者たちによる、憂国の書だ。

反日種族主義 日韓危機の根源の目次

  • はじめに
  • プロローグ 嘘の国
  • 第1部 種族主義の記憶
  • 第2部 種族主義の象徴と幻想
  • 第3部 種族主義の牙城、慰安婦
  • エピローグ 反日種族主義の報い

作者

李 栄薫 イ・ヨンフン(1951年9月10日 – )

経済史学者。ソウル大学校商科大学経済学科卒業。ソウル大学経済学名誉教授・落星台経済研究所所長を務める。

反日種族主義 日韓危機の根源の刊行情報

  • 『反日種族主義 日韓危機の根源』文藝春秋、2019年11月14日

反日種族主義 日韓危機の根源の感想・解説・評価

韓国の学者が韓国内で発表した日本統治時代の”真実”

本書では冒頭から日本統治時代の”真実”について争点が列挙される。それは以下のようなものだ。

  • 朝鮮総督府が全国の土地の40%を国有地として奪ったこと
  • 朝鮮の米を日本が収奪したこと
  • 日本が戦時期に朝鮮人を労務者として動員し奴隷にしたこと
  • 憲兵や警察が女性を拉致して慰安所に連れて行ったこと

これら韓国サイドが歴史問題として挙げているポイントを著者はデタラメだと一刀両断している。

これらの主張自体は日本でも見られたものだった。とくに保守派は、学術的であれ、ヘイト的であれ似たような内容を書いては本にもなっている。

今回特筆すべきことは、これらの主張が韓国の学者層から発信されたということだ。これまでは”日本より”な主張は日本人か、韓国人であっても日本で活動している人に留まっていた。韓国人が韓国内で発表することは極めてまれだ。

だが、その状況にも関わらず韓国ではベストセラーとなり、日本語版も出版されることになった。本書の特長として、韓国内の嘘の主張により生まれた多くの矛盾を解きほぐしている。読んでいてスッキリとさせられるが、韓国内でもこの点が評価されたのだろうか。

タイトルの『反日種族主義』とはなんなのか

本書のタイトルは『反日種族主義』である。これは一体なんなのか。

著者は韓国内の民族主義を西洋の民族主義とは区別している。すなわち韓国の場合は、民族自体がひとつの集団であり身分であるというのだ。それゆえ民族ではなく種族という言葉を用いている。そして隣国の日本に敵対感情を持っているというのだ。

そして著者はこの状況に大きな危機感を覚えている。嘘やでたらめが広がり、政治や社会の判断が左右されるようになっては韓国は先進国として発展できない。いわばこの本は知識人によって書かれた憂国の書であり、ヘイト本や暴露本とは一線を画していると言える。

また慰安婦問題に関しても、日本軍慰安婦は問題になるが、米軍慰安婦や韓国軍慰安婦が問題になることは少ないと一面的な主張を批判している。

とくに、先の大戦から時間が流れ、当時を知っている人や証言がどんどん少なくなってからは、主張はどんどん一面的になりやすくなっている。これは韓国だけではなく日本でも同じことだ。日本でも慰安婦問題はたびたび論争の題材となるが、戦後アメリカ軍に対し慰安所を設けたことなどはほとんど議題にあがっていない。

日本統治時代の悪い面について

著者は韓国内で流布している、日本統治時代の朝鮮で起きたと主張されていることにはデタラメも多く含まれることを解説していく。繰り返すが、嘘の主張が行われたために生まれた矛盾が解決されていく様子は読んでいて気持ちがいい。

ただ、その主張を強めるためか、日本統治時代の悪い面については多くのことは書かれていない。差別や抑圧もあったと書かれてはいるが、具体的な事象についてももっとページを割いてほしかったというのが率直な感想だ。その方が「デタラメだ」という主張も結果的に強まったのではないかと思える。

「日本統治時代はよかった」とはいっても、れっきとした植民地だ。さすがにいいことばかりというのは無理があるだろう。

朝鮮王朝時代や、朝鮮戦争を経て独裁から民主化した時代についての描写は取捨選択が難しいかもしれないが、前後の時代との比較があればなおよかった。日本人の読者的には前後の時代の知識はそれほどないだろうから、「日本統治時代はよかった」と言われても、「前後の時代知らないけど、本当に?日本よりな主張をしてる書き手なんじゃないの?」となってしまいかねない。

合わせて読みたい本

韓国「反日主義」の起源

膨大な資料をもとに「反日」の起源とその構造を明らかにし、それがやがて「反日主義」という強固な国家イデオロギーへと発展していくさまを描き出した一冊。

『反日種族主義』は韓国人の経済史学者による本で、こちらは日本人の元官僚(在韓日本大使館参事官などを歴任した)の実証史学者・松本厚治氏の著作になっている。

日韓の別領域の学者による本を読み、どんな点が共通しているのか、違う主張になっているのかを比較してみるのもいいだろう。

反日種族主義 日韓危機の根源の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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