レトリック感覚(佐藤信夫)の概要・感想

「直喩」「隠喩」「換喩」「提喩」などの表現、さらに様々な文章例から、日本人の立場で在来の修辞学に検討を加えた好著。

レトリック感覚の作品情報

タイトル
レトリック感覚
著者
佐藤信夫
形式
学術書
ジャンル
言語学
修辞学
日本
初出
不明
執筆年
不明
刊行情報
1978年、講談社
1986年、講談社文庫
1992年、講談社学術文庫

レトリック感覚のあらすじ

作者

佐藤 信夫 さとう・のぶお(1932年9月24日 – 1993年5月19日)

言語哲学者。東京府(東京都杉並区)出身。東京大学文学部哲学科卒。國學院大學教授などを歴任した。おもに「レトリック」に関する著作を数多く残したことで知られている。

レトリック感覚の刊行情報

  • 1978年、講談社
  • 1986年、講談社文庫
  • 1992年、講談社学術文庫

レトリック感覚の感想・評価

レトリックについて

本書の中で、佐藤はレトリックを「ことばをたくみにもちい、効果的に表現すること、そしてその技術」と定義する。

そのうえでレトリックには二重の役割があるとする。すなわち「説得する表現の技術」(ソクラテスやプラトンは好まなかったという)と、「芸術的あるいは文学的表現の技術」である。実用的な機能を担当するだけではなく、芸術的・文学的な役割を担っている。

本書はその二つの役割を再点検しながら、第三の役割「発見的認識の造形」をさぐるこころみである。

レトリック感覚の必要性

レトリックは「憎たらしさ」や「ずるさ」という偏った連想により使用されるようになった。しかしそれだけではなく、新しい創造的認識のメカニズムの探求でもあった。

文化とは記号の体系であり、記号を支えるものは約束と信頼である。

レトリック感覚 (講談社学術文庫)より

レトリックは記号の遊戯であり、偶然に生まれた戯れではない。フィーリングではなく、通底する規則性が存在しているのだ。その無変化こそが私たちの文化を構築する一要素であり、文化を信頼するに足るものであるという。

合わせて読みたい本

レトリック認識

『レトリック感覚』の続編。

『レトリック感覚』の内容に加え、黙説、転喩、逆説、反語、暗示などを取り扱っている。単なるレトリックの紹介に留まらず、そこに佐藤の言語哲学を浸透させることによって充実した一冊になっている。

レトリックの記号論

レトリック三部作のラストとなる一冊。75年から83年にかけて発表されたエッセイをまとめたものであるが、言語学・記号論・レトリックという佐藤の仕事全体を示している著作となる。

まとまって書かれた本ではなく短いエッセイを集めたものなので、文章の難易度は様々。文字以外の記号表現、思考、翻訳、時間概念の認識と守備範囲も広い。『レトリック感覚』よりユーモアの利いた文章で「ことば」について考えることができる。

レトリック感覚の評判・口コミ・レビュー

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