罪と罰(ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)・解説・感想

『カラマーゾフの兄弟』、『白痴』、『悪霊』、『未成年』と並ぶ、後期五大長編小説で最初に出された。「現代の預言書」とも呼ばれ、ドストエフスキーの実存主義的な考え方を垣間見ることができる。

罪と罰(フョードル・ドストエフスキー)の作品情報

タイトル
罪と罰
著者
フョードル・ドストエフスキー
形式
小説
ジャンル
犯罪
ヒューマニズム
執筆国
ロシア
版元
不明
執筆年
不明
初出
ロシア報知、1866年1月号-12月号
刊行情報
下記
翻訳者
下記

罪と罰(フョードル・ドストエフスキー)のあらすじ・概要

頭脳明晰ではあるが貧しい元大学生ラスコーリニコフが、「一つの微細な罪悪は百の善行に償われる」「選ばれた非凡人は、新たな世の中の成長のためなら、社会道徳を踏み外す権利を持つ」という独自の犯罪理論をもとに、金貸しの強欲狡猾な老婆を殺害し、奪った金で世の中のために善行をしようと企てるも、殺害の現場に偶然居合わせたその妹まで殺害してしまう。この思いがけぬ殺人に、ラスコーリニコフの罪の意識が増長し、苦悩する。しかし、ラスコーリニコフよりも惨憺たる生活を送る娼婦ソーニャの、家族のためにつくす徹底された自己犠牲の生き方に心をうたれ、最後には自首する。人間回復への強烈な願望を訴えたヒューマニズムが描かれた小説である。

罪と罰(フョードル・ドストエフスキー)の目次

作者

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821年11月11日 – 1881年2月9日)

ロシアの小説家。思想家。レフ・トルストイ、イワン・ツルゲーネフと並び、19世紀後半のロシア小説を代表する文豪である。代表作に『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』などがある。

罪と罰(フョードル・ドストエフスキー)の刊行情報

  • おすすめ工藤精一郎訳『罪と罰 上下』新潮文庫、1987年/改版2010年
  • 江川卓訳『罪と罰 上中下』岩波文庫
  • 池田健太郎訳『罪と罰 上下』中公文庫、1994年
  • 亀山郁夫訳『罪と罰 上中下』光文社古典新訳文庫、2008年-2009年
  • 米川正夫訳『罪と罰 上下』角川文庫

映画版関連動画

  • 1923年『ラスコーリニコフ』ドイツ:ロベルト・ヴィーネ監督
  • 1935年『罪と罰』アメリカ:ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督
  • 1935年『罪と罰』フランス:ピエール・シュナール監督
  • 1956年『罪と罰』フランス:ジョルジュ・ランパン監督
  • 1958年『罪と罰』アメリカ:デニス・サンダース監督
  • 1970年『罪と罰』ソ連:レフ・クリジャーノフ監督
  • 1983年『罪と罰 – 白夜のラスコーリニコフ』フィンランド:アキ・カウリスマキ監督
  • 2003年 『罪と罰』イギリス:マイケル・ダーロウ監督

罪と罰(フョードル・ドストエフスキー)の登場人物

ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ
孤独な主人公。学費滞納のために大学から除籍され、ペテルブルグの粗末なアパートに下宿している。

ソフィヤ・セミョーノヴナ・マルメラードワ
マルメラードフの娘。家族を飢餓から救うため、売春婦となった。ラスコーリニコフが犯罪を告白する最初の人物である。

ポルフィーリー・ペトローヴィチ
予審判事。ラスコーリニコフを心理的証拠だけで追い詰め、鬼気迫る論戦を展開する。

アヴドーチヤ・ロマーノヴナ・ラスコーリニコワ
ラスコーリニコフの妹。美しく芯の強い、果敢な娘。兄や母の事を考え裕福な結婚をするため、ルージンと婚約するが、ルージンの横柄さに憤慨し、破局する。

ドミートリィ・プロコーフィチ・ウラズミーヒン
ラスコーリニコフの友人。ラズミーヒンと呼ばれる。変わり者だが誠実な青年。ドゥーニャに好意を抱く。

セミョーン・ザハールイチ・マルメラードフ
居酒屋でラスコーリニコフと知り合う、飲んだくれの九等官の退職官吏。ソーニャの父。

アリョーナ・イワーノヴナ
高利貸しの老婆。未亡人。悪徳なことで有名。ラスコーリニコフに殺害され金品を奪われる。

罪と罰(フョードル・ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)

罪と罰のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

罪と罰のあらすじ【起】

帝政ロシアの首都、夏のサンクトペテルブルク。学費滞納のため大学から除籍された貧乏青年ラスコーリニコフは、それでも自分は一般人とは異なる「選ばれた非凡人」との意識を持っていた。その立場なら「新たな世の中の成長」のためなら一般人の道徳に反してもいいとの考えから、悪名高い高利貸しの老婆アリョーナを殺害し、その金を社会のために役立てる計画を立てる。

アリョーナから金を借り、その金を貧乏なため娘が娼婦になったと管を巻く酔っ払いのマルメラードフに与えた翌日、かねてからの計画どおりアリョーナを斧で殺害し、さらに金を奪おうとする。しかし、その最中にアリョーナの義妹も入ってきたので、勢いでこれも殺してしまう。

罪と罰のあらすじ【承】

この日からラスコーリニコフは、罪の意識、幻覚、自白の衝動などに苦しむこととなる。翌朝、ラスコーリニコフは、下宿の女中が「警察に出頭せよ」との命令書を持ってきたので慄く。行ってみると借金の返済の督促であったが、刑事達から昨夜の老婆殺しの話を聞いて失神する。様子が変だと思った友人のラズミーヒンが、ラスコーリニコフを訪問してきたところに、母から手紙で知らされていた妹の婚約者のルージンが現れる。

成金のルージンを胡散臭く思ったラスコーリニコフは、これを追い出す。そんなとき、ラスコーリニコフは、マルメラードフが馬車に轢かれたところに出くわす。介抱の甲斐なく、マルメラードフは死ぬ。マルメラードフの家に金を置いて下宿に戻ると、郷里から母と妹のドゥーニャが来ていた。ラスコーリニコフは、罪の意識のためにその場に倒れる。

母は、息子の無礼にルージンが怒っていることを心配していた。金持ちのルージンが一家の貧窮を救うと期待していたからだ。予審判事のポルフィーリは、ラスコーリニコフが2ヶ月前雑誌に発表した論文の「選ばれた未来の支配者たる者は古い法を乗り越えることができる」というくだりは殺人の肯定であり、あなたはそれを実行したのではないかと探りを入れて来る。なんとかポルフィーリの追及をかわしたラスコーリニコフだが、下宿の前で見知らぬ男から「人殺し」と言われ立ちすくむ。しかし「人殺し」という言葉は幻覚で、見知らぬ男はラスコーリニコフに用があったのだった。

罪と罰のあらすじ【転】

スヴィドリガイロフと名乗ったその男はドゥーニャが目当てで、ルージンとドゥーニャの結婚を一緒につぶそうと持ちかけてくる。ラスコーリニコフはこれを追い返すが、図らずともルージンは自らの恩着せがましさがばれてしまったために、妹の結婚は破談となる。ラスコーリニコフはマルメラードフの娘で娼婦であるソーニャのところへ行き、聖書の朗読を頼んだり君と僕は同類だと言って、ソーニャを不安がらせる。そして、再びポルフィーリと対決するが、その横で事件当日そこにいたペンキ屋が、自分が犯人だとわめき出したので、驚きながらも解放される。

ソーニャはマルメラードフの葬式後の会食で、同じアパートに逗留していたルージンの策略により、金銭泥棒に陥れられる。周囲の証言によりルージンの狂言であることがわかるが、ソーニャはその場を飛び出して帰宅しまう。ラスコーリニコフは彼女を追いかけ、ついに彼女の部屋で殺人の罪を告白する。しかし、隣の部屋に居たスヴィドリガイロフが薄い壁を通して会話を聞いていたのだった。

ポルフィーリが三度現れてペンキ屋でなくお前が犯人だと主張し、罪が軽くなるので自首することを勧める。一方、スヴィドリガイロフはラスコーリニコフの犯罪をネタに、ドゥーニャに結婚を迫っていた。ドゥーニャはスヴィドリガイロフのところへと現われるが、結局結婚を拒絶したので、スヴィドリガイロフは有り金を周囲に渡したりおごったりしたあと自殺する。

罪と罰の結末・ラスト(ネタバレ)

とうとう罪の意識に耐えられなくなったラスコーリニコフは、母に別れを告げる。何か恐ろしいことが起こった事だけを悟る母。ドゥーニャの顔はすべてを知っていた。ラスコーリニコフは自殺を考えていたが、ソーニャの力を借りてついに自首する。

ラスコーリニコフへの罰は、それまでの善行や自首したこと、取り調べの際の態度などを考慮し、シベリア流刑8年という寛刑になる。ラスコーリニコフを追ってソーニャもシベリアに移住し、ラスコーリニコフを見守る。そのことに気づいたラスコーリニコフはソーニャへの愛を確信する。

罪と罰(フョードル・ドストエフスキー)の感想・解説・評価

世界文学史に残る傑作

文豪として今日揺るがない名声を獲得したドストエフスキーの代表作である。傑作と名高い後期五大長編小説の中でも『罪と罰』は『カラーマゾフの兄弟』と双璧をなす作品である。

後世の様々な分野へ影響を与えており、漫画界でも手塚治虫『罪と罰』や大島弓子 『ロジオン ロマーヌイチ ラスコーリニコフ -罪と罰より-』 から、漫画太郎『罪と罰』、朝霧カフカ『文豪ストレイドッグス』と現代にいたるまで多数のフォロワーが生まれている。

世界中で共感される主人公ラスコーリニコフ

主人公・ラスコーリニコフは学費の支払いが滞ったために大学を除籍された学生。家族から期待をかけられているが、実際は除籍された孤独な身の上であり、粗末なアパートに暮らしている。そんな彼は自分の事を「凡人ではなく、自分はなにか大きな仕事をやり遂げる選ばれた人間だ」という考えを持っている。

この小説を読んだ世界中の若者たちがラスコーリニコフに共感するのも当然だ。

とくに、地元では優秀な成績を収めて大学に進学したが、大学での成績はそれほどでもない。家族からは期待されているが、自分としてはそれほど立派な人物というわけでもなく、だがなにかできるのではないかと漠然とした自信を持っている…なんてタイプの人だ。

金銭的に困窮すると精神的にもツラくなる。そんなときにお金持ちというのはそれだけで嫌いになってくるものだ。もちろんそれだけで実際に殺人や強盗に及ぶ人というのは限られているが、特にあくどい金儲けをしている人となるとそれだけで嫌いになったりする。

そんなタイプの人が、『罪と罰』を読んだときにラスコーリニコフの姿を自分だと重ね合わせる。そうやって読み進めていくと『罪と罰』は忘れられない読書体験になるだろう。

ソーニャによる文学的感動

大まかに言うと『罪と罰』はラスコーリニコフが老婆を殺す序盤、予審判事ポルフィーリィと推理小説さながらの論戦を展開する中盤、ソーニャの力を借りて罪に向かい合っていく終盤というような構成になっている。

ラスコーリニコフは「一つの微細な罪悪は百の善行に償われる」という身勝手な倫理観から犯罪を犯すが、現場に偶然居合わせたその妹まで殺害してしまう。この思いがけぬ殺人に、ラスコーリニコフの罪の意識が増長し、苦悩することになる。その苦悩を反省に導いていく存在がソーニャだ。とくにラストシーンの2人のやり取りは文学史に残る名シーンで、多くの読者に感動を与えた場面である。

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この記事を書いた人
右手

平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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