無政府主義、無神論、ニヒリズム、信仰、社会主義革命、ナロードニキなどをテーマにもつ深遠な作品であり著者の代表作。『罪と罰』、『白痴』、『未成年』、『カラマーゾフの兄弟』と並ぶドストエフスキーの五大長編の1つで3番目に書かれた。
悪霊(フョードル・ドストエフスキー)の作品情報

- タイトル
- 悪霊
- 著者
- フョードル・ドストエフスキー
- 形式
- 小説
- ジャンル
- 無政府主義
無神論
ニヒリズム
信仰
社会主義革命
ナロードニキ - 執筆国
- ロシア
- 版元
- 不明
- 執筆年
- 不明
- 初出
- ロシア報知、1871年1月号-11月号、1872年11月号-12月号
- 刊行情報
- 下記
- 翻訳者
- 下記
悪霊(フョードル・ドストエフスキー)のあらすじ・概要
1861年の農奴解放令によっていっさいの旧価値が崩壊し、動揺と混乱を深める過渡期ロシア。青年たちは、無政府主義や無神論に走り秘密結社を組織してロシア社会の転覆を企てる。――聖書に、悪霊に憑かれた豚の群れが湖に飛び込んで溺死するという記述があるが、本書は、無神論的革命思想を悪霊に見たて、それに憑かれた人々とその破滅を、実在の事件をもとに描いたものである。
悪霊(フョードル・ドストエフスキー)の目次
作者
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821年11月11日 – 1881年2月9日)
ロシアの小説家。思想家。レフ・トルストイ、イワン・ツルゲーネフと並び、19世紀後半のロシア小説を代表する文豪である。代表作に『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』などがある。
悪霊(フョードル・ドストエフスキー)の刊行情報
- おすすめ江川卓訳 『悪霊 上下』新潮文庫、改版2004年
- 亀山郁夫訳 『悪霊 1-3』光文社古典新訳文庫、2010-11年
悪霊(フョードル・ドストエフスキー)の登場人物
ニコライ・フセヴォロドヴィチ・スタヴローギン
類い稀な美貌と並外れた知力・体力をもつ全編の主人公。徹底したニヒリストで、ピョートルの目論見を見抜いたり、キリーロフとシャートフを啓蒙したりと、主要登場人物へ影響を及ぼす。
ピョートル・ステパノヴィチ・ヴェルホーヴェンスキー
ステパン氏の息子。自らを「政治的詐欺師」と呼び、知事夫人に取り入って文学サークルを装った革命組織を作り、スタヴローギンをその中心に祭り上げようと画策する。
キリーロフ
子供好きの建築技師。スタヴローギンの影響によって「神の意志に従わず我意を完全に貫いたとき、神が存在しないこと、自分が神となることが証明される。完全な我意とは、自殺である」という独特の人神思想を持つ。
シャートフ
スタヴローギン家の農奴の息子。スタヴローギンの影響によってロシア・メシアニズム(汎スラヴ主義)の信奉者となる。
ステパン・トロフィーモヴィチ・ヴェルホーヴェンスキー
ピョートルの父。元大学教授で、かつてスタヴローギンの家庭教師でもあったことから、ワルワーラ夫人宅の食客となっている。
リザヴェータ・ニコラエヴナ・トゥシナ
ワルワーラ夫人の旧友ドロズドワ夫人の娘。婚約が内定しているもののスタヴローキンに恋し、誘惑され彼と一夜をともにするも、彼の退廃振りに幻滅し去る。
悪霊(フョードル・ドストエフスキー)のあらすじ(ネタバレあり)
悪霊 第1部のストーリーを紹介!
物語は、1869年の秋から冬にかけて、ロシアのとある地方都市と、その郊外にあるスクヴォレーシニキと呼ばれる領地を舞台に展開する。
ステパン氏は、1840年代のロシアを代表する自由主義者の一人で、かつては大学の講壇にも立ったことのある知識人だが、今はスタヴローギン家の女主人ワルワーラ夫人の世話を受けており、同じ屋敷内で夫人と熱烈に手紙を交し合い、平穏無事の毎日を送っていた。
ワルワーラ夫人は、ある日突然、自分の養女であるダーシャとステパン氏を結婚させようと思い立ち、有無をいわさず話を進めるが、意に染まないステパン氏はスイスにいるピョートルに自分を救い出してはもらえないかと手紙を出す。スタヴローギン家の一人息子であるニコライは、ステパン氏のもとで教育を受けたあと学習院に進学し、卒業後、軍務に服してから、にわかに放蕩に耽りだした。2度にわたって決闘事件を起こし、放蕩三昧の生活をおくるなど、不吉な噂が絶えなかったので、町から放逐された。
4年後の日曜日、ワルワーラ夫人は、スタヴローギンとマリヤ・レビャートキナの関係をほのめかす匿名の手紙を受けとり、真偽を正そうと、教会で出会ったマリヤを家へ連れ帰る。この日は、ステパン氏とダーシャの婚約発表が行われる日に当たっていた。ダーシャの兄シャートフやワルワーラ夫人の幼馴染の娘リーザとその婚約者マヴリーキーが集まるなか、ピョートルと一緒にスタヴローギンが帰館する。ワルワーラ夫人は、スタヴローギンに真相を問い質すが、彼は何も答えずに、マリヤを家まで送るといって出て行ってしまう。
その間にピョートルは、かつてペテルブルクにいたころ、皆から笑いものにされていたマリヤを唯一スタヴローギンだけが丁重に扱っていたため、マリヤは彼が自分の夫か何かであるという妄想にとらわれてしまったというだけの話だと説明する。次いで、ピョートルは、ステパン氏に、結婚させられそうになっているので助けてほしいとはどういう意味かと問うた。それを聞いたワルワーラ夫人は、激昂して、ステパン氏に絶交を言い渡す。そこへ戻ってきたスタヴローギンを、なぜか突如としてシャートフが殴りつけて、一同を驚かせる。スタヴローギンは、黙ったまま反撃しなかった。シャートフが去ると同時に、スタヴローギンを秘かに恋するリーザは気絶した。
悪霊 第2部のストーリーを紹介!
この一件で、スタヴローギンはスイスにいたころリーザと密かな関係をもっていたのではないか、また近いうちにシャートフを殺してしまうのではないかなどという噂が広まる。数日後、有力者の息子ガガーノフが、四年前に父が受けた汚名を雪ぐべく、スタヴローギンに決闘を申し込む。シャートフの部屋で、スタヴローギンは、ペテルブルクでマリヤと正式に結婚したことを彼に告げた。
それに感づいていたシャートフは、スイス時代に妻をスタヴローギンに寝取られた過去があったが、彼への崇拝の念を捨てきれず、それゆえその虚偽と堕落に対して、殴りつけずにはいられなかったのだということを話した。 その夜、スタヴローギンはマリヤを訪ね、結婚を公表しようと思うと告げるが、マリヤに「偽公爵」呼ばわりされて帰ることになり、その帰途で、ピョートルに匿われている懲役囚のフェージカに金をばら撒き、マリヤの殺害をそれとなく唆した。
翌日、決闘が行われた。ガガーノフが撃ち損じたのに対して、スタヴローギンはわざと狙いを外して撃った。同じことが3度繰り返されたために、その厳正な様から町におけるスタヴローギンの名望は、一挙に高まった。同じころ、ステパン氏とピョートルは完全に見解を異にして決裂した。町では、ピョートルが、新たに就任したレンプケ県知事の夫人ユリヤに取り入り、労働者たちを煽動して町に騒乱を起こそうと画策していた。
その檄文に躍らされて、シュピグリーン工場の70人あまりが、給料未払い問題を直訴に押し掛けるが、レンプケは冷たく拒否し、不穏な空気が漂う。ちょうどその時、ステパン氏が差し押さえの抗議に来るが、途中でユリア夫人が講演をお願いするという条件で引き取った。
悪霊 第3部のストーリーを紹介!
スタヴローギンは「告白」を携え、町外れにあるボゴローツキー修道院にチホン僧正を訪ねた。
祭りは始まるが、運営の不手際で、混乱が次々と起こった。カルマジーノフの朗読会もステパン氏の講演会も大失敗に終った。夜の舞踏会に至っては参加者が少なく、しかも胡乱げな連中ばかりではあった。一方、リーザは、舞踏会の混乱に紛れ、マヴリーキーを振切って、スクヴォレーシニキに走り、スタヴローギンと一夜を共にするが、放蕩三昧の末に退廃していた彼の姿に失望する。
舞踏会が終ろうとする夜更け、対岸の郊外の家々に火が放たれ、大混乱となる。その混乱の中、レンプケは発狂する。翌朝、炎上した川の向こうの一軒屋から、マリヤとその兄レビャートキン、そして女中の惨殺体が発見される。スクヴォレーシニキの屋敷から火事の現場に駆けつけたリーザは、狂乱する群集たちに撲殺された。その後、ピョートルは、シュピグリーンの労働者を使って、レビャートキン兄妹殺害の下手人フェージカを始末する。
悪霊の結末・ラスト(ネタバレ)
翌日、シャートフの元に別れた妻マリイが戻ってきたが、マリイがスタヴローギンの子を産気付いていることを知り、キリーロフや「五人組」のヴィルギンスキー、リャムシン達に連絡する。結局、ヴィルギンスキーの妻アリーナが助け、男の子が産まれた。シャートフは、男の子に「イワン」と名付け、養子にすると言う。 ピョートルは、密告に怯える「五人組」を使嗽し、シャートフを当局の密告者と決め付け、スタヴローギン公園の隅に誘き寄せて、殺害する。
その数時間後、ピョートルは、シャートフ殺害の罪をキリーロフに請負わせ自殺させる。その後、リャムシンの告発によって「五人組」とエルケリは逮捕されるが、ピョートルは国外逃亡し、二度と戻らなかった。
一方、失意のうちに放浪の旅に出たステパン氏は、旅の途中に熱病に罹り、駆けつけたワルワーラ夫人が看取る中、帰らぬ人となる。また、スタヴローギンは、スイスのウリイ州に出発する旨をダーシャに書き送るが、それを果たすことなくスクヴォレーシニキの屋敷の屋根裏で首を吊った。
悪霊(フョードル・ドストエフスキー) の感想・解説・評価
合わせて読みたい本
悪霊(フョードル・ドストエフスキー)の評判・口コミ・レビュー
『悪霊』 ドストエフスキー #読了
— 青い蝶🦋 (@alterEGOtabibit) November 1, 2019
農奴解放令直後の混乱したロシア。無神論的社会主義思想に傾倒する人々が狂い、破滅する姿が描かれる。神、自殺に関しての思想が特徴的。
聖書の理解や、章の順番(未完、挿入予定の章が最後に)など、不備のある状態での初読なので、0回目と思ってまた読みます。 pic.twitter.com/iJCFe5Dll4
光文社古典新訳文庫 ドストエフスキー 『悪霊』1~3 亀山郁夫訳 読了。、、、怖い。「カラマーゾフ」とか「白痴」「罪罰」には救いがあったけど、この本には無い。ドストエフスキーのキャラって、1、ムダに熱い。2、ムダに喋りが長い(仏語!)。3、ムダに学がある。のトリプルアクセル。
— 碓井秀爾 a.k.a 社畜見習い (@qqxf8nw9k) April 26, 2020
ドストエフスキーの『悪霊』(上下巻)読了。色々不明点が多かったので、亀山郁夫さんの『謎とき悪霊』も読了。それを読んだ上でもよく分からない所の多い小説だった。次はレールモントフの『現代の英雄』に挑戦です。 pic.twitter.com/U0Ohl66Gmk
— 河谷萌奈美 (@monamin1119) January 28, 2020
ドストエフスキー「悪霊」(亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫)読了。6〜7年ぶりの再読。読み進めるのがしんどかった。希望も何もあったもんぢゃない。また、この年(1971年生)になるとステパン・ヴェルホヴェンスキー氏の愚かしく滑稽な姿に、自分自身もそうなんだろうかと思い悩んでしまう。#読了 pic.twitter.com/ByRuo9g8Ce
— Yamaguchi_b1971 (@Yamaguchi_b1971) December 10, 2019