バスジャック(三崎亜記)のあらすじ(ネタバレなし)・感想

バスジャックがブームになった社会を描く表題作ほか、三崎亜記の天才を実感できる傑作短編集。

バスジャック(三崎亜記)の作品情報

タイトル
バスジャック
著者
三崎亜記
形式
小説
ジャンル
不条理
執筆国
日本
版元
集英社
初出
小説すばる
刊行情報
集英社文庫
受賞歴
第59回日本推理作家協会賞短編部門候補

バスジャック(三崎亜記)のあらすじ(ネタバレなし)

今、「バスジャック」がブームである―。バスジャックが娯楽として認知されて、様式美を備えるようになった不条理な社会を描く表題作。回覧板で知らされた謎の設備「二階扉」を設置しようと奮闘する男を描く「二階扉をつけてください」、大切な存在との別れを抒情豊かに描く「送りの夏」など、著者の才能を証明する七つの物語。

バスジャック(三崎亜記)の目次

  • 二階扉をつけてください
  • しあわせな光
  • 二人の記憶
  • バスジャック
  • 雨降る夜に
  • 動物園
  • 送りの夏

作者

三崎 亜記 みさき・あき(1970年8月 – )

小説家。熊本大学文学部史学科卒業。1998年、パソコンを買ったことをきっかけに、市役所職員のかたわら「となり町戦争」の執筆を始め、同作で第17回小説すばる新人賞受賞しデビュー。

バスジャック(三崎亜記)の刊行情報

『バスジャック』集英社、2005年11月
『バスジャック』集英社文庫、2008年11月

バスジャック(三崎亜記)のあらすじ(ネタバレあり)

バスジャックのストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

二階扉をつけてください

「町内でお宅だけですよ、付けていないの」
「何がですか」
「二階扉ですよ、ちゃんと回覧板読んで下さいよ」

近所のおばさんからの突然のクレーム。この土地に越してきて2年が経つが、『二階扉』なんて見たことも聞いたこともなかった。隣近所の家を見回してみると、確かにどの家の2階にも扉が付いている。だが、外付けの梯子があるわけでもなく、用途がよく分からない。

とりあえず二階扉の取付を専門とする業者に見積もりを依頼するが、見積書には見たことがない言葉が並び、混乱に拍車がかかる。よく分からないまま、焦って取付を依頼すると、扉は短時間でまるで最初からそこにあったかのように付けられたが、果たして『二階扉』の使い道とはなんなのだろうか。

しあわせな光

3ページほどの掌編作品。

夕食後の散歩で丘に登った男性が何気なく自宅を見ると、誰もいないはずの家の窓から灯りが見え、そこには幼い頃の自分や亡くなった家族たちがいたのだった。

二人の記憶

「また同じ店? 昨日行ったばかりなのに」
はて、この店は1ヵ月ぶりのはずだが……

「まさか2人とも死んじゃうなんて…」
そんな内容の映画ではなかったはずだが……

最近恋人との会話がちぐはぐだ。彼女は誰か別の男と私を勘違いしているのだろうか。しかし私は、記憶が間違っているのは私かもしれないということに思い至る。

バスジャック

今、バスジャックがブームだ。バスジャックが様式化され、数々のマニュアルが法整備され、娯楽として人々に認知されて久しい。

そして、私が乗るバスもジャックされるが、目に余る彼らの稚拙なバスジャックには辟易するばかりだ。さりとて、私は困っている。荷物検査で、今持っているアタッシェケースの中を見られては困るからだ。果たしてバスジャックの結末とは。

雨降る夜に

5ページほどの掌編作品。

雨の夜に本を貸し借りし、互いに安らぎを得る男女の物語。

動物園

入園客減少に悩んだ動物園が一計の策を案じる。依頼を受け早速園を訪れた日野原。彼女の仕事とは、動物がいる空間そのものをプロデュースすること、つまり、何もいない檻に動物がいるように見せかけることだった。

日野原の能力は、その計画を巡って園長と対立していた飼育係を黙らせる。当初の予定通り、稀少生物・ヒノヤマホウオウの展示が始まる。

送りの夏

突如失踪した母・晴美の行方を追って、父の手帳にあった住所を頼りにとある田舎町へとやって来た麻美。若草荘という共同住宅で母は「直樹」という、優しい笑みを浮かべたまま微動だにしない人形のような男性と暮らしていた。

母の他にも、「人形」と暮らす人々が何組かいた。彼らは人間なのか、それともどんな存在なのか。12歳の少女が人の死と向き合う。

バスジャック(三崎亜記)の感想・解説・評価

不条理な作品を集めた不思議な短篇集

読んだのは、近頃いろんなブログ及びサイトでよく名前を見かけるようになった、三崎亜記さんの小説です。前作の「となり町戦争」はネットでの評価が高かったので楽しみにして読んだんですが、正直そこまでおもしろいとは感じませんでした。

でもそんなこともありますよね。村上春樹にしたって「ダンス・ダンス・ダンス」は無茶苦茶おもしろかったんですが、「ねじまき鳥クロニクル」はそこまで好きじゃありません。

しかも今回は、個人的に好きな短編集ということで、楽しみに読んだんですが、何か相性の悪さを感じてしまいました。

バスジャックが娯楽として整備された世界、二階扉の設置が求められる世界、そんな不条理な世界観は、カフカ的、安部公房的とも言えるんですが、簡単に言ってしまうとオチが気に入らなかったのだと思います。

特に「二階扉をつけてください」は、発想自体はとても個性的だし、こういう話を書ける人はそうそういないと思うんですが、なんでしょうか…用途を多少なりとも書いてしまってオチが読めてしまったような残念感がありました。始終不思議な雰囲気のままというか、不条理なままで終わったほうがよかったのにと思ってしまいました。

カフカって、一旦こうだと小説の中で設定したことは最後までそうだとしていたと思うんですが、三崎さんの場合は途中でそれが異常なものだと覆しています(送りの夏)。この辺りが僕の苦手な理由なのかも知れません。

合わせて読みたい本

変身/掟の前で 他2編

家族の物語を虫の視点で描いた「変身」。
もっともカフカ的な「掟の前で」。
カフカがひと晩で書きあげ、カフカがカフカになった「判決」。そしてサルが「アカデミーで報告する」。

カフカの傑作4編が収められており、カフカ初心者におすすめの一冊です。
>>変身(フランツ・カフカ)のあらすじ結末(ネタバレあり)・解釈・考察・感想

バスジャック(三崎亜記)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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