氷菓(米澤穂信)のあらすじ(ネタバレあり)・感想。「日常の謎」を扱った青春ミステリの傑作

古典部の結成から、古典部の前に現れる日常の謎を連作的に展開しながら古典部部長・千反田えるの伯父・関谷純に関わる過去に纏わる謎を解いていくまでの高校入学の4月から夏休みに入って間もない7月末の出来事を描く。『〈古典部〉シリーズ』第1作。

氷菓(米澤穂信)の作品情報

タイトル
氷菓
著者
米澤穂信
形式
小説
ジャンル
ミステリ
推理小説
執筆国
日本
版元
KADOKAWA
初出
新人賞応募作
刊行情報
角川文庫
受賞歴
第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞

氷菓(米澤穂信)のあらすじ(ネタバレなし)

大人気シリーズ第一弾! 瑞々しくもビターな青春ミステリ!

何事にも積極的に関わらないことをモットーとする奉太郎は、高校入学と同時に、姉の命令で古典部に入部させられる。
さらに、そこで出会った好奇心少女・えるの一言で、彼女の伯父が関わったという三十三年前の事件の真相を推理することになり。
米澤穂信、清冽なデビュー作!

いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。

氷菓(米澤穂信)の目次

  • ベナレスからの手紙〜伝統ある古典部の再生
  • 名誉ある古典部の活動
  • 事情ある古典部の末裔
  • 由緒ある古典部の封印
  • 栄光ある古典部の昔日
  • 歴史ある古典部の真実
  • 未来ある古典部の日々〜サラエヴォへの手紙

作者

米澤 穂信 よねざわ・ほのぶ(1978年 – )

小説家。岐阜県出身。金沢大学文学部卒業。物心ついた頃から漠然と作家業を志すようになる。金沢大学文学部の2年生から、サイト「汎夢殿」を運営し、作品を発表し始める。様々な種類のエンターテイメント作品を書いていたが、大学時代に北村薫の『空飛ぶ馬』、『六の宮の姫君』を読み衝撃を受け、ミステリー作品を手掛けるようになった。

大学卒業後は、「2年間だけ小説の夢にチャレンジしたい」と両親を説得し、岐阜県高山市で書店員をしながら執筆を続ける。2001年、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してデビュー。その後〈古典部〉シリーズとして続編に着手するも、三作目の完結編として執筆されていた『さよなら妖精』の出版がレーベルの傾向との違いにより困難となる。だが、笠井潔の推薦もあり、東京創元社から出版されるや出世作となった。2014年、『満願』にて第27回山本周五郎賞を受賞。

氷菓(米澤穂信)の刊行情報

『氷菓』角川スニーカー文庫、2001年11月
『氷菓』角川文庫、2006年

漫画『氷菓』

タスクオーナ『氷菓』角川コミックス・エース、既刊12巻

映画版、アニメ版関連動画

テレビアニメ『氷菓』2012年

映画『氷菓』2017年

監督:安里麻里、出演:山﨑賢人、広瀬アリス、小島藤子、岡山天音、本郷奏多

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映画『氷菓』

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氷菓(米澤穂信)の登場人物

折木 奉太郎
神山高校1年B組・古典部員。
省エネを生活のスタンスとし、「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に。」とモットーを述べている。

千反田 える
神山高校1年A組・古典部員。
豪農で知られる千反田家の令嬢でありながら、「私、気になります」の一言と共に清楚な外見とは裏腹な好奇心を発揮し、奉太郎を謎に引き込んでいく。古典部には失踪した伯父が絡む「一身上の都合」で入部した。

福部 里志
神山高校1年D組・古典部員(手芸部・総務委員会も兼任)。奉太郎の親友。
あらゆる知識・雑学に精通し「データベース」を自認する趣味人の一面を持つ。

伊原 摩耶花
神山高校1年・図書委員兼漫画研究会所属。
里志に好意を寄せており、里志を追って古典部に入部する。奉太郎の小学時代からの幼馴染。背丈や容姿は子供らしい印象を与えるが、奉太郎に「寸鉄」と形容される毒舌。

氷菓(米澤穂信)のあらすじ(ネタバレあり)

氷菓のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまで簡単に紹介しています。この先の内容は、ネタバレを含んでいるため注意してご覧ください。

何事にも積極的に関わろうとしない「省エネ主義」を信条とする神山高校1年生の折木奉太郎は、姉・供恵からの勧めで古典部に入部する。しかし、古典部には同じ1年生の千反田えるも「一身上の都合」で入部していた。奉太郎とは腐れ縁の福部里志も古典部の一員となり、活動目的が不明なまま古典部は復活する。そして、えるの強烈な好奇心を発端として、奉太郎は日常の中に潜む様々な謎を解き明かしていく。

ある日、奉太郎はえるから助けを求められる。それは、彼女が元古典部部長の伯父から幼少期に聞かされた、古典部に関わる話を思い出したいというものだった。奉太郎の幼馴染で里志に好意を持つ伊原摩耶花の入部後、古典部の文集『氷菓』がその手掛かりだと知った奉太郎は、仲間たちと共に、『氷菓』に秘められた33年前の真実に挑むことになる。

ベナレスからの手紙〜伝統ある古典部の再生

世界を旅する姉・供恵のベナレスからの手紙に勧められ、古典部に入部した神山高校1年生・折木奉太郎。しかし部員が自分一人なら私的空間を所持できると思って部室の地学講義室に入った奉太郎は、同じく古典部に入部した隣のクラスの女子生徒・千反田えると出会う。

私的空間の望みは潰え、そのまま帰路に就こうとした奉太郎だが、突然えるは奉太郎が鍵で部室のドアを開けるまで自分が閉じ込められていたことになっていたことに気付く。奉太郎の親友・福部里志は校舎のドアは内側から鍵を掛けることは不可能だと言い、自分の身に置かれた状況が気になるえるの好奇心に誘われ、奉太郎は部室で発生した密室の謎を解くことになった。

名誉ある古典部の活動

里志も古典部に入部してから一ヶ月、当人たちですら活動内容が不明瞭なまま部室でただ時間を過ごしていくままの状況を憂いたえるの提案で、古典部は有意義な部活動をするため「カンヤ祭」の俗称で呼ばれる文化祭で販売する文集作りに手をつけることになる。

文集作成の足掛かりを掴むため、文集のバックナンバーを入手しようと奉太郎とえるは、奉太郎の幼馴染・伊原摩耶花が図書委員の当番を務める図書館を訪れる。そこで奉太郎は、図書室にいた里志と摩耶花から「愛なき愛読書の話」を聞かされる。それは返却期限2週間以内にも関わらず、毎週金曜日に週毎に異なる生徒が『神山高校五十年の歩み』という大判の本を借りてその日に返却するという珍事が相次いでいたことだった。

事情ある古典部の末裔

ある日の日曜日、えるから会いたいと呼び出された奉太郎は、行きつけの喫茶店で待ち合わせる。そこで奉太郎はえるが古典部に入部した理由である「一身上の都合」、失踪した伯父・関谷純からかつて籍を置いた古典部に関する話を聞いて泣き出した理由を知りたいという事情を打ち明けられ、その泣き出した理由を思い出させて欲しいと頼まれる。

気の進まなかった奉太郎だったが、関谷純の生死不明が満7年となり法的に死亡扱いできること(失踪宣告)から葬儀が営まれることを聞き、あくまで手伝いとしてその頼みを引き受ける。

由緒ある古典部の封印

期末試験が終わり、自宅に帰った奉太郎は供恵からのイスタンブールからの手紙で、図書室になかった文集のバックナンバーが、部室の薬品金庫にあることを知る。現部室に金庫はないため、奉太郎とえる、古典部に入部した摩耶花は、供恵の在籍時に部室として使われ現在は壁新聞部の部室である生物講義室を訪れる。

しかし壁新聞部部長の遠垣内は部室に文集はないと言い張り、部室の詮索を嫌う素振りを見せる。その態度に不審なものを感じた奉太郎たちは無理を押し切り部室を見せてもらうが文集は見当たらない。益々態度を荒らげる遠垣内を前に、遠垣内の秘密を察した奉太郎はやんわりと脅迫し、文集を古典部部室に持ってこさせる約束を取り付ける。そんな顛末の末、文集『氷菓』のバックナンバーを入手した古典部だが、その『氷菓』こそえるの思い出せない過去に繋がる鍵となっていた。

栄光ある古典部の昔日

32年前の古典部員・郡山養子が『氷菓 第二号』に記した記述で、33年前の出来事で関谷純が「英雄」として神山高校を去ったことを知った奉太郎とえる。しかし、その詳細が書かれていると思われた創刊号のみバックナンバーから欠けていた。打開策として里志と摩耶花にも協力を仰ぎ、古典部一行は千反田邸でそれぞれ持参した資料から33年前に関谷純に何が起きたのかの推論を検証していくことになった。

えるは『氷菓 第二号』が示す10月の文化祭に文化祭荒らしと争って退学したという説を、摩耶花は『氷菓 第二号』と同時期に発行された『団結と祝砲』から関谷純が指導者として6月に生徒たちが権力主義者(おそらくは教師)に暴力行使を行ったとそれぞれ自説を展開、里志は壁新聞『神高月報』のバックナンバーから摩耶花説を間接的に否定するだけに留まった。『神山高校五十年の歩み』を資料として持参しながら思い違いから何の自説も用意してこなかった奉太郎はこれまでの資料と説を元に推理し、33年前の出来事の全容を導き出す。

歴史ある古典部の真実

幼いえるが泣いた理由を謎に残しつつ、33年前の事件の真相を解いた奉太郎。そんな中、ユーゴスラヴィアにいる供恵からの国際電話で、供恵が33年前の出来事を「悲劇」と形容したことから、奉太郎は自身の推理に欠けていた部分があることに気付く。千反田邸での検証会から翌日、奉太郎は招集した古典部一行と共に33年前の出来事の全てを知る人物・郡山養子の下で関谷純の真意そして『氷菓』の意味を確かめていく。

未来ある古典部の日々〜サラエヴォへの手紙

33年前の出来事に纏わる真相を知った後、古典部は文化祭を目前にして『氷菓』の作成に追われ、その一方でえるも関谷純を完全に弔っていた。奉太郎はいつものようにえるの好奇心に付き合わされる日常を送る中、サラエヴォにいる供恵にこれまでの近況と心情を綴った手紙を送る。

氷菓(米澤穂信)の感想・解説・評価

「日常の謎」を扱った青春ミステリの傑作

題材はミステリーですが、殺人事件が起こったりするのではなく、日常の小さな謎を解決していきます。あらすじにもあるとおりですが、いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実…など。

舞台はとある高校の古典部です。古典部とは何をする部活かといえば、何もしません。どんな部活でも、練習が終わった後には部室で話したり少し遊んだりすると思いますが、それが中心の活動になっている部活であるとも言えます。

主な登場人物は4人です。米澤さんによると、シャーロック・ホームズシリーズでの、ホームズを折木、依頼人を千反田、ワトスンを福部、レストレードを伊原と当てはめて設定や性格が作られたとのことです。

主人公は、折木奉太郎。いわゆる探偵役です。ホームズシリーズと違うのは、語り手が探偵役である彼自身ということがあります。「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」をモットーとする「省エネ」主義者です。

ワトスン役である、福部里志は豊富な知識を持っていますが、自分で推理をするということはあまりないようです。レストレードという推理モノにおいて少々残念な役に当てはめられてしまった伊原摩耶花は、まさしくレストレードの如く推理を展開しますがなかなか正解に辿り着けません。そんな彼らをまとめるのが部長の千反田えるです。彼女が多くの謎を部に提供していきます。

本作は連作短編集という形をとっていて、各話ごとに日常の謎を解き明かしていくほか、作品全体に大きな謎があってそれを解決するようにストーリーは展開していきます。物語はあくまで学校内での出来事が中心となっていますが、海外を放浪中の奉太郎の姉からの手紙や、「氷菓」事件での過去との邂逅など、時間的にも空間的にも広がりが感じられる構成になっています。

ミステリや推理小説は好きでも、殺人事件が起きて刑事が解決に乗り出す、というのがどうも好きになれないという方にもおすすめできる作品です。

合わせて読みたい本

愚者のエンドロール

「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した。

『氷菓』に続く『〈古典部〉シリーズ』第2作です。1年生夏休みの終盤頃の出来事を描いていきます。

氷菓(米澤穂信)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
右手

平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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