今回の記事では、おすすめのミステリー小説を紹介します。
選考基準としては、
- おもしろいもの
- 読みやすいもの
- 手に入りやすいもの
- 国内の作品
という感じです。
今回はミステリ小説をあんまり読んだことがないという方向けに、「まずはこれを読んでほしい」というものを選びました。
ネタバレは一切していないので、安心して進んで下さい。
おすすめの国内ミステリー小説10選
ジェノサイド(高野和明)
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。
上下巻に分かれており、ページ数はかなり多いですが、ダラダラとした展開はなく情報量の多い文章が展開されます。「人類は凶暴だから繁栄した」という理論が語られるヒューマンドラマでもあります。人間の素晴らしい面と汚い面の両方を描いています。
そういった「人類の進化」の観点が興味深いです。現人類の限界と新人類の可能性を考えさせられます。
ダック・コール(稲見一良)
石に鳥の絵を描く不思議な男に河原で出会った青年は、微睡むうち鳥と男たちについての六つの夢を見る―。絶滅する鳥たち、少年のパチンコ名人と中年男の密猟の冒険、脱獄囚を追っての山中のマンハント、人と鳥と亀との漂流譚、デコイと少年の友情などを。ブラッドベリの『刺青の男』にヒントをえた、ハードボイルドと幻想が交差する異色作品集。“まれに見る美しさを持った小説”と絶賛された第四回山本周五郎賞受賞作。
野鳥への愛と自然への敬意に溢れた作品です。街中ではなく、自然の中で展開されるストーリーは、自然の中で生きる人間の素晴らしさや、エネルギーも教えてくれます。
作家・稲見一良の確かな筆力を楽しめる作品で、「良い小説を読んだ」と読み終わった後に満足できると思います。小説の醍醐味と人間の人生の酸いも甘いも堪能できます。
空飛ぶ馬(北村薫)
「私たちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎のなかに、貴重な人生の輝きや生きてゆくことの哀しみが隠されていることを教えてくれる」と宮部みゆきが絶賛する通り、これは本格推理の面白さと小説の醍醐味とがきわめて幸福な結婚をして生まれ出た作品である。
読んでいて、とにかく爽やかな雰囲気が漂っていることに好感を覚えます。ダークな展開もありますが、爽やかな書き方で、暗さよりおもしろさが勝っています。
推理小説としての驚きもありつつ、ハートフルなお話を楽しめます。少し疲れているとき、余裕がなくなっているなと感じているときに読んでほしい小説です。
殺戮にいたる病(我孫子武丸)
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
その『空飛ぶ馬』とは反対にホラー的な小説が『殺戮にいたる病』です。トリックの素晴らしさももちろんですが、グロテスクなシーンも魅力の一つ。かなり後味は悪く、真相も気持ちのいいものではないだけに人を選ぶ作品でしょう。
とにかくネタバレを目にすることなく、読み始めたら一気に読み進めてほしい小説です。見事に騙されて「やられた!」と悔しがって欲しいです。
アヒルと鴨のコインロッカー(伊坂幸太郎)
「一緒に本屋を襲わないか」大学入学のため引越してきた途端、悪魔めいた長身の美青年から書店強盗を持ち掛けられた僕。標的は、たった一冊の広辞苑――四散した断片が描き出す物語の全体像とは? 清冽なミステリ。
どんでん返しが人気の伊坂幸太郎の小説の中で、僕が一番好きな小説がこれです。伊坂さんの小説を読んだことがない方にもおすすめできる作品です。
現在と2年前の話が交差するように巧みに描かれていきます。椎名の目線、琴美の目線で交互に語られていくので結末が気になって一気に読んでしまう作品です。
白夜行(東野圭吾)
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。
構成が見事で素晴らしい作品です。本当におもしろくて、ぐいぐいと引き込まれていきます。
内容のおもしろさに加えて素晴らしいのが、主役の視点からは一切描かずに読者の想像をかきたてながらストーリーが展開していくところです。
新宿鮫(大沢在昌)
ただ独りで音もなく犯罪者に食いつく―。「新宿鮫」と怖れられる新宿署刑事・鮫島。歌舞伎町を中心に、警官が連続して射殺された。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追う。待ち受ける巧妙な罠!絶体絶命の鮫島…。登場人物の圧倒的な個性と最後まで息をつかせぬ緊迫感!超人気シリーズの輝ける第1作。
警官殺しの犯人を突き止めるため行動する刑事を描いた作品です。「新宿鮫」と怖れられる主人公の新宿署刑事・鮫島をはじめ、人物描写が素晴らしいです。
ひたすら自らが信じる道をいく主人公の姿には清々しさを覚えます。メインストーリーのスピード感も魅力です。
ロートレック荘事件(筒井康隆)
夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが…。二発の銃声が惨劇の始まりを告げた。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行か、アリバイを持たぬ者は、動機は。推理小説史上初のトリックが読者を迷宮へと誘う。前人未到のメタ・ミステリー。
僕は本格ミステリーだと勝手に思い込んで読んだので、読み終わった後にめちゃくちゃ驚くことになりました。あらすじの「前人未到のメタ・ミステリー」というように、探偵が活躍してトリックを解明するという普通のミステリーではありません。
作中で明かされた真相を確認するために、読み直したくなる本です。答えを知った後に読み返すと、「こんなところにも仕掛けがあったのか」と驚かされます。「お見事でした」と言いたくなる小説です。
向日葵の咲かない夏(道尾秀介)
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
どこか不思議な雰囲気の漂っているミステリ小説です。世の中に数多くのミステリが書かれていますが、あんまり読んだことがないタイプの小説だと感じる人もいると思います。
読んでいると見事に騙されます。登場人物が嘘をついていて、いったい何が真実なのか、どれが嘘なのか、なかなか分からない作品です。
十角館の殺人(綾辻行人)
奇怪な四重殺人が起こった孤島を、ミステリ研のメンバー7人が訪れた時、十角館に連続殺人の罠は既に準備されていた。予告通り次々に殺される仲間。犯人はメンバーの1人か!?終幕近くのたった“一行”が未曽有の世界に読者を誘いこむ、島田荘司氏絶賛の本格推理。まだあった大トリック、比類なきこの香気!
ミステリファンなら知らない人はいない超有名作です。作者のデビュー作ですが、文章構成が練られており、あらすじ以外の事前知識がなければ確実に騙されると思います。
とにかく真実が書かれたページを読んだときの衝撃は忘れられません。それまで読んでいた小説の全体像がいきなりひっくり返るような驚きを体験できる一冊です。
おすすめ作品を紹介した今回の記事の中でもとくにおすすめする作品です。