有頂天家族(森見登美彦)のあらすじ(ネタバレなし)・解説・感想

森見作品の中で「五男」、「毛深い子」と呼ばれる作品。3部作となる予定の「たぬきシリーズ」の第1部である。

有頂天家族(森見登美彦)の作品情報

タイトル
有頂天家族
著者
森見登美彦
形式
小説
ジャンル
ファンタジー
コメディ
群像劇
執筆国
日本
版元
幻冬舎
初出
不明
刊行情報
幻冬舎、2007年9月25日
    
受賞歴
2008年度本屋大賞第3位

有頂天家族(森見登美彦)のあらすじ・概要

千年の都・京都。ここでは古来より、人に化けた狸と天狗が、人間社会に紛れて暮らしていた。糺ノ森に住む狸の名門・下鴨家の父であり、狸界の頭領「偽右衛門」でもあった総一郎は、ある年の瀬に人間達に狸鍋にされ、帰らぬ狸となってしまった。

遺された「下鴨四兄弟」の三男で「面白く生きる」がモットーの矢三郎は、天狗の赤玉先生の世話をしつつ弁天の美しさに魅かれ、夷川家の金閣・銀閣と張り合うなど退屈する暇もない。長男・矢一郎は次期「偽右衛門」を目指す。しかし下鴨家は、父を狸鍋にした金曜倶楽部に狙われる。

父の死に秘められた真実が明らかになり、下鴨家の逆転劇が始まる。

有頂天家族(森見登美彦)の目次

作者

森見 登美彦(もりみ とみひこ、1979年1月6日 – )

1979年、奈良県生まれ。京都大学農学部大学院修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、小説家デビュー。2007年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞、2010年『ペンギン・ハイウェイ』で日本SF大賞を受賞。主な著書に『四畳半王国見聞録』『聖なる怠け者の冒険』『夜行』等がある。
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有頂天家族(森見登美彦)の刊行情報

  • 『有頂天家族』幻冬舎、2007年9月25日
  • 『有頂天家族』幻冬舎文庫、2010年8月5日

アニメ版関連動画

テレビアニメ『有頂天家族』2013年7月‐9月

テレビアニメ『有頂天家族2』2017年4月‐6月

有頂天家族(森見登美彦)の登場人物

下鴨 矢三郎
狸。主人公。下鴨神社・糺の森に暮らす狸の名門である下鴨家の三男。父の残した「面白きことは良きことなり!」の言葉を身上に勝手気ままに暮らしている。父の近年まれに見る化け力を兄弟の中でもっとも受け継いでおり、女子高生から達磨まで様々なものに化けることができる。

下鴨 矢一郎
狸。下鴨家長男。生真面目な性格。矢三郎に負けないくらいの化け力を持っており、特に虎によく化け「鴨虎」の通り名を持つ。普段は和服姿の若旦那。

下鴨 矢二郎
狸。下鴨家次男。普段はやる気を見せない怠け者。現在では六道珍皇寺の境内の古井戸で蛙となって隠居生活をしており、多くの天狗や狸の悩みや愚痴の聞き相手となっている。

下鴨 矢四郎
狸。下鴨家四男。普段は少年だが、化けるのが苦手で気が弱く、恐怖を感じるとすぐ狸の姿に戻ってしまう。

金閣・銀閣
狸。早雲の双子の息子で、矢三郎たちの従兄弟。あまり頭が回らず、ときおり矢一郎や矢三郎にやり込められている。

赤玉先生
大天狗。かつては絶大な力を持つ大天狗だったが、「魔王杉の事件」がきっかけで落ちぶれてしまい、現在では出町桝形商店街裏のアパートで暮らしている。以前は狸たちの教師役を務めていた。

弁天
人間。「金曜倶楽部」のメンバーの一人。本名は鈴木聡美。赤玉先生に一目惚れされ、琵琶湖湖畔から攫われて天狗の術を教え込まれた。そのため人間でありながら空を飛んだり天候を操ったりすることができる。当初は純粋な少女だったが、次第に自由奔放に振る舞うようになってしまった。

有頂天家族(森見登美彦)の感想・解説・評価

森見ワールドを堪能できる傑作ファンタジー

本作に登場するのは、狸と天狗と人間だ。人間は少なく、主人公は狸。そんな狸たちの物語が展開されていく。

長兄は意外とあわてんぼうであり、次兄はひきこもり。日々、京都の町を闊歩する三男(主人公)、その弟である四男は、化けている最中にふとしたことからしっぽを出してしまうような未熟者。そんな狸の四兄弟を中心にストーリーは進行していく。

他にも、四字熟語を愛用する金閣・銀閣という兄弟や、三男の元許嫁でありながら、けっして姿を見せようとしないその妹、飛べない天狗と、飛べる美女など魅力的なキャラクターが数多く登場する。

そんなキャラクターたちが繰り広げるのは、選挙を戦ったり、狸鍋がでできたり、どんちゃん騒ぎの大騒動を繰り広げたりする「本当」にとんでもない話なのだ。

だが、個性的な登場人物(狸)と森見の独特な言いまわしのおかげで、その不可思議ながらも微笑ましい本作の世界が引き立てられている。

「夜は短し歩けよ乙女」を読んで、森見の作品を読んでいきたいと思われた方にも文句なしにおすすめできる一冊になっている。

京都の街を舞台にしたドタバタコメディ

本作を一言で表そうとするならば「京都の街を舞台に、狸やら天狗やらが繰り広げるドタバタ喜劇」ということになるだろうか。

どことなく懐かしい雰囲気の漂う小説だが、森見独特の文体や情景描写のひとつひとつが楽しめる作品になっている。会話文がおもしろいだけではなく、地の文でもドタバタっぷりが見事に表現されているのだ。

四兄弟、金閣・銀閣、赤玉先生に弁天。魅力的なキャラクターの中にはきっとお気に入りの一人(一匹)が見つかるだろう。しっかりしてるように見えるが、実は勝負所に弱い長男だとか、怠け者に見えて実は心優しい次男だとか、愛すべきキャラクターがたくさん出てくる。

コメディでありながら、狸同士の争いも描かれるなどハラハラさせられる要素もある。それでも、読み終わった後にはどこか温かい、幸せな気持ちになれる小説ではないだろうか。

合わせて読みたい本

太陽の塔

京都大学の男子学生が、ふられたかつての恋人を「観察と研究」という名目で追いかける物語です。

主人公は決して「未練からのストーキング」と認めておらず、あくまで「なぜ、自分は彼女に一時期とはいえ、あれほど心を奪われたのか」「なぜ、彼女は自分を袖にしたのか」という疑問から「研究」するという、青春小説になっています。
もっと読む太陽の塔(森見登美彦)をチェックする

夜は短し歩けよ乙女

鬼才モリミが放つ、キュートでポップな片想いストーリー。

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めます。そんな二人を、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々が待ち受けます。

森見カラーの強く出た作品で、独特の作風と文体を楽しむことができると思います。
もっと読む夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)のあらすじ(ネタバレなし)・考察・感想

有頂天家族(森見登美彦)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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