吉増剛造詩集(吉増剛造)の概要・解説・感想

現代日本を代表する先鋭的な詩人の一人として高い評価を受けている吉増剛造。その代表的な青春詩篇を収める。

吉増剛造詩集(吉増剛造)の作品情報

タイトル
吉増剛造詩集
著者
吉増剛造
形式
ジャンル
青春詩篇
執筆国
日本
版元
角川春樹事務所
執筆年
不明
初出
不明
刊行情報
ハルキ文庫、1999年

吉増剛造詩集(吉増剛造)のあらすじ(ネタバレなし)

時代が最も大きく折れ曲がった60年代に登場し、「ぼくの眼は千の黒点に裂けてしまえ」と、鮮血のように熱く孤独な詩的シーンを疾走する詩人・吉増剛造。存在そのもの、行為そのもの、想いそのものが鮮烈な言語の体験となり、日本語のあらゆる要素を駆使することで、無限なる詩的宇宙を組み立てる。さまざまな都市や原野を移動し、ジャンルや境界を越える詩人の代表的な青春詩篇を集め、さらに写真作品やオブジェも紹介する。

吉増剛造詩集(吉増剛造)の目次

Ⅰ 頭脳の塔
朝狂って
帰ろうよ
野良犬
草原へゆこう
渋谷で夜明けまで
リズムの魔に吹かれて
渚にて
狂人走れば不狂人も走る
魔の一千行
疾走詩篇
頭脳の塔
王國

Ⅱ 航海日誌
航海日誌 1970-1973

Ⅲ 草書で書かれた、川
アドレナリン
左様なら宇會利湖津軽よ
死馬が惑星を走る日は
サンタフェ鉄道Lemy駅
好摩、好摩
織姫
奮起せよ、アムンゼン
ロサンヘルス

解説・稲川方人
回帰線の向こうに、吉増剛造の「青春」がある
エッセイ・石川九楊
「!」もしくは割註

作者

吉増剛造(1939 – )

詩人。東京府下(現杉並区)阿佐ヶ谷に生まれ。現代日本を代表する先鋭的な詩人の一人として高い評価を受けている。主な作品に『黄金詩篇』『王國』『The Other Voice』。詩の朗読パフォーマンスの先駆者としても知られる。
もっと読む【おすすめ】吉増剛造の全作品を一覧で紹介します

吉増剛造詩集(吉増剛造)の刊行情報

  • 『吉増剛造詩集』ハルキ文庫、1999年

吉増剛造詩集(吉増剛造)の感想・解説・評価

プロフェッショナルな詩人による意味を持たない詩

詩人・思想家の吉本隆明は吉増を「日本でプロフェッショナルだと言える詩人が三人いる。それは田村隆一、谷川俊太郎、吉増剛造だ」とインタビューで評している。つまり高い評価を与えているわけだが、同時に著書『詩の力』では以下のように評している。

「言葉の意味はゼロである」という方法様式だ

詩の力

吉増の詩は言葉の美しさや表現の多様さ、あるいは読みやすさや楽しみやすさというものを追い求めてはいないようだ。吉本によると、言葉の意味ではなく詩の価値を無限大にしたいという欲求があるらしい。

難解

言葉の意味を追い求めていないため、吉増の詩にはストーリーや物語性といったものは存在しない。または大きく剥ぎ取られている。この詩集に収められている詩は、それほど長大な作品というわけでもないし、複雑かつ特殊な形態を持っているものでもない。だが、物語を持っていないために“難解”という感想を抱く人もいそうだ。

ぼくの眼は千の黒点に裂けてしまえ
古代の彫刻家よ
魂の完全浮游の熱望する、この声の根源を保証せよ
ぼくの宇宙は命令形で武装した
この内面から湧きあがる声よ
枕言葉の無限に岩バシル連祷のように
梓弓、オシテ狂気を蒸発せしめる
無類の推力を神ナシに保証せよ
容器は花の群衆の
そのもっとも濡れた中点を愛しもしよう
ああ
眼はもともと数百億の眼に分裂して構成されていたのに
そしてそれぞれの見方があって
半数には闇が繁茂し、半数には女陰が繁茂し、半数には
 海が繁茂し、半数には死が繁茂し、すべての門に廃墟の光景が暗示され、すべての眼が一挙に叫びはじめる一瞬を我々は忘却した……

疾走詩篇

本書にはこの「疾走詩篇」をはじめ、青春詩篇が収めされている。その詩の”意味”や”完成度”というものから離れて詩を鑑賞するとき、読者は疾走感や投げやりとも言えるような寂しさを感じることができるだろう。

吉本が吉増と並んで言及した田村隆一には『言葉のない世界』という詩集がある。タイトルに並んだ「言葉」と「世界」という二つの単語は、稲川方人による、内面に秘めたままの「言葉(声、考へ)」と「世界(宇宙、全世界)」に立ち会うことは宿命的だとする本書の解説に重なる。本書を読むことによって、詩人における「言葉」と「世界」の関係性を探ることもできるかもしれない。

合わせて読みたい本

黄金詩篇

吉増の数々の詩篇の中でも最高傑作と名高い詩集です。

疾走感のある詩のエネルギーを感じられる作品だと思います。意味は分からない。どこが良いと思ったのかも説明できない。でも良いと思うんです。

根源乃手/根源乃(亡露ノ)手、……

吉本隆明の『日時計篇』について考えてきたという吉増剛造がその思考を言語化したものです。

吉増の思考は深く、並大抵の読者ではついていけません。それでも装丁と構成にこだわったこの本を読むことは、単なる読書を超えた一つの体験になると思います。
もっと読む根源乃手/根源乃(亡露ノ)手、……(吉増剛造)のあらすじ・解説・感想

吉増剛造詩集(吉増剛造)の評判・口コミ・レビュー

この記事を書いた人
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平成生まれ。ライター、ブロガー、文筆家志望、Twitterで書評を書いている人。読んだ本が1万冊を超えたことを機に2017年からブログ再開、2020年は戦後思想史を勉強しつつ小説を書いています。好きな作家はカフカ、ガルシア=マルケス、村上春樹、大江健三郎、庄司薫、佐藤泰志など。そのほか、ラテンアメリカ文学、英ロック、欅坂46、囲碁、宮下草薙も好きです。
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